【ショートショート】しゃべるピアノ【#完成された物語】
その男は毎日のように路上でピアノ演奏のパフォーマンスをしていた。
彼の演奏はそれは素晴らしく、観客たちから毎回のように多くの投げ銭による収入を得ていた。
しかし、ある日のこと急に演奏が止まってしまった。
「あ」
という声とともに男は椅子から崩れ落ちた。
観客たちが驚く中、声がした。
「み、皆さん、驚かずに聞いてください」
その声はいつも演奏後に聞く男の声と同じ。
「大丈夫。今倒れたその男は人形です」
よく見ると倒れた男に顔はない。
男の声はピアノの方から聞こえてきた。
「私の本体はこのピアノ。実は私は人間ではありません」
その声に合わせてピアノの鍵盤が上下する。
「お願いです。怖がらないで。私は演奏を聴いてほしいだけなのです」
観客たちは静まり返る。
そんな中、一人の女の子がピアノの元へ歩いていく。
「ピアノさん、演奏の続き聴かせて」
その言葉に観客たちも声をあげてピアノの演奏を促した。
「ありがとう」
再び奏でられた音色は優しい音がしたという。
(410文字)
✒あとがき
読んで下さってありがとうございました!
☟こちらの企画に参加させていただきました!
いただいたお題の「タイトル」「前半の文章」に対して410文字以内で物語を書くというもの。
面白い企画ですね!
僕も何か企画を立ち上げてみようかなと思いました!