現代詩「レプタイルズと夜と毒虫」
「僕は一匹のレプタイル」
親身になって婦女子の相談に乗っていたら
某SNSで「マウントを取るのが うざい」と書かれていた
死にたい
若しくは
殺したい
僕の蛇から毒液が出るんだぜ
君達をxxxxするための
致死毒が
水槽の中に家屋を建てて暮らしている
サーモスタットヒーター完備の庭付き6LDKで
循環式ポンプの滝まであるんだ
家屋の中で僕は一匹のレプタイル
黒光りする鱗の艶を保つために
高温多湿の飼育下に置かれている
迂闊に水槽に手を入れたら
君を噛むよ
そうしたら君は黒くなって死ぬよ
熱帯雨林の夜陰に転がる
黒死の屍体
と僕の黒蛇
***
「喪服」
今年はとかく湿度が高く
十年来着古した喪服に黴が生えて仕舞った
喪服に黴を生やすなど
人として終わっている
嗚呼、自堕落、自堕落
黒光りする僕の
喪服と夜と毒液と
溽暑に流れる音楽は
Franz P. Schubert
長雨は今日も止まない
世俗の呪詛も亦た止まない
***
「刺蛾(iraga)」
諸君聞いて呉れ給え
水槽の我が家の庭に自生した
柿の木に刺蛾の幼虫が大量発生して
葉を貪っているのだ
葉裏に
蛍光緑色の黄色い筋のトゲトゲした
毒虫共めらの猟場が出来ている
幾つも いくつも
僕は刺蛾の幼虫に刺されぬよう
寝所に隠れているのだ
夜行性の眼球をぎょろぎょろ
光らせて
怯えている
奴等の毒が恐ろしい
のだ
毒有る者同士の闘争に
蟲毒に克てない
僕は本当は毒など、無イ
黒衣を羽織り暗闇に
息を密めている
僕は
君に呼ばれても返事をしない
静謐を求めている
のだ
夜の
熱帯雨林の
ような
(現代詩「レプタイルズと夜と毒虫」村崎カイロ)