綾紫は麺類を啜りません III
【概要】
何故多くの人々が麺類を啜る食べ方にそこまで固執するのか、(当人達のいうには)それは香りを感じる為、というのが本稿の結論である。勿論、プラセボ効果の可能性はあるが。
【詳細】
最近、丸亀製麺が饂飩を啜るCMを放送し炎上、啜る食べ方を擁護する動画を契機として、そうした作法を礼儀だとか何だとか称して強要する社会が来るのではないか、危惧を述べた。
これに引き続き、実際には啜れない者も散見される事にも触れた。
だがどうして啜る食べ方に固執し、「啜るな」といわれると激しく反応するのは何故か、その理由を探るのが本稿の目的である。
遠回りになるが、綾紫は猫舌で、熱い食事全般を嫌う。それだけでなく、ぬるいと回転率が上がる証言はネット上にも多い為、ぬるい=高い回転率=食が進む=美味しい、となる筈なのにそういう意見がないのはおかしい、とも述べた。
綾紫の仮説の逆、熱い=美味しい、のヒントになったのは、ぬるいラーメンに対する不満を表明したブログだった。内容は、
●え・・・? Σ(~∀~||;) ぬるい・・・
●どれくらいぬるいかと言うとコーヒーを熱々で入れたのに冷蔵庫から出した牛乳を半々で割ったくらいの感じ
●分かりにくいかもしれないけどまぁ、ふぅ~ふぅ~ なんて吹かなくても、スープすくったレンゲを丸っぽ口の中に入れられるくらい、ぬるい・・・。
●「ぬるいけど、ダーリンのも?」熱々のスープは、楽しみの一つ じゃない?σ(^_^;)
といった具合でぬるいラーメンには不満の様子である。しかしながら
●美味しいんやけどね(^^:)ぬるいのは致命的やね・・・食べやすいよに、冷ましてから出してくれたって思うようにするわ
とある様に、不満はあっても食べ易い事は認めている。であれば、ぬるい=食べ易い=美味しい、とならない所が綾紫には不思議でならない。
そこで思い切って
★私は猫舌なのでラーメン含め、ぬるい食事、歓迎です。世の中、熱い食事が多く拷問でしかありません。さてぬるいのが不味いのは、どう具体的に不味いのでしょうか。例えば、脂分が固まるとか。
と質問した。話は前後するが、当該のブログの記事や作成者の回答は"●"、綾紫の質問は"★"で示す事とする。そうすると、
●個人個人のお好みで、いろんな好みがあろうかとは思いますがもともと熱く提供されていたものがぬるいとなると
・香りが立ってこない
・麺が持ち上がりにくい
・吸い込みにくい
など具体的に言うとこの様な感じでしょうか。
[中略]
魚出汁の臭みを感じ、呑むこみにくく、麺もバラけにくいので食べるのに苦労しました。脂多めのところではないので、固まってギトギトではなかったものの唇に残るギト感が、一口ごとに拭き取らなければ居られないという感じでした。
という回答を得た。この中、「麺が持ち上がりにくい」「吸い込みにくい」「呑むこみにくく、麺もバラけにくい」「唇に残るギト感」、全て脂が固まりつつあり、粘性が上昇した、と考えるとあり得る話であり、ある程度予想していた返答でもあった。その一方「香りが立ってこない」「魚出汁の臭み」は普段、嗅覚を重視しない綾紫には想定外であった。質問を続ける。
★香りに言及なさった所
>鼻から香って香りを楽しみ、
>低い温度で最初からいただくと魚出汁の臭みを感じ、
は盲点でした。香りに注目、風雅な方とお見受けしました。
[後略]
ラーメンのような庶民の食事に香り云々を持ち込むのは場違いな堅苦しい発想、という違和感を抱いたが、そこを"風雅"という言葉で纏めた。
●美味しさは五感で味わうと言いますが、舌と鼻が一番大事と思っています。現にコロナにかかった時には、一時的でしたが香りも味も感じなくなったので、絶望感さえ感じました。
だったら初めから香りを宛てにしない綾紫は初めから少なくとも半分、絶望しているのだろうか。ともかく、香りも味と同じく大事、とても新鮮な意見でもあった。
そうした意識で改めて当該の動画
のコメントを見ると、
●啜ると出汁の香りがして美味しいんだよ。 あれが美味しい音だと感じないのが感性が日本人ではない。
●日本の麵料理はすする事で香りを立てることができ、食事をより楽しめる、とか。 すする事ができないなんて、もったいないw
●蕎麦とうどんは啜ることにより、香りを楽しみながら食べるんですよ。
●日本はすする事でで空気と混ざり香りが立つ(特にソバ)
●すする事で、小麦やそば粉の香りも楽しめるんだよな。
●蕎麦はすすることで蕎麦の香りを含んだ空気を吸い込み、鼻から出すことで蕎麦の香りを楽しむものなんだけど。
●啜る事で香りを楽しむ風味が味わえる。こんな基本も理解出来て無いのでしょうね。
●啜ることで鼻から抜ける出汁の香りが増して美味いのだ
等と「香りが大事」枚挙に暇がない。嗅覚の鈍い綾紫の生きて来た人生とは大違いだ。
繰り返しになるが、香りとは香道に代表される風雅な嗜み。それを日常の食事に持ち込むのは堅苦し過ぎて違和感を払拭できない。実に面倒臭い、辛気臭い。あっ、綾紫でも実は臭いを感じていたのだ。
今日はここまで。