MBTI:感覚と直観が分からない III & 判断と知覚が分からない IV ~影の薄い知覚機能~
【概要】
知覚機能が判断機能に比べ分かり難いのは影が薄いから・・・以前からそう感じていたが、社会を動かす、という観点から参考になりそうな記事があったので取り上げる。その結果、判断機能だけでも世の動きは説明できそう、との感触を掴んだ。少数の事例の報告なので仮説検証には程遠い。しかしこのような点が、知覚機能は分かり難い、だからT/F特性に比べS/N・J/P特性は分かり難い・・・という印象を産んでいるのかもしれない。
【結論】
長文なので結論から先に述べる。人々や社会を規定する機能は何か、を考えた場合、ほぼ判断機能だけで説明できる可能性がある。換言すれば知覚機能の影は薄い。これがS/N・J/P特性が分かり難い1つの原因である。
【問題提起】
綾紫は自身のS/N・J/P特性が分からない事から、何度かその理由を探るような話題を投稿して来た。その第1号はデビュー初期の
である。その結論だが、J/P特性について、内向型は原理的に迷い易い為、そして何より、J型もP型もJ/Pが示唆するのとは逆の機能を有しており、そこではJ/P型の人物像の違いについて
J:P=外向的判断:内向的判断
J:P=外向的判断:外向的知覚
J:P=内向的知覚:内向的判断
J:P=内向的知覚:外向的知覚
の4パターンがあって、恣意的な説明がなされていて混乱する為、という仮説を呈示した。昨日の記事
も同じ立場で作成した。
一方S/N特性については分からず仕舞だった。これに関連して実は以前から、機能を言語で表現しようとすると、その分かり易さはどうしても
外向的判断>内向的判断≧外向的知覚>内向的知覚
となる、と以前から薄々感じていた。実際にそれと関係あるのかないのか、仮説として知覚機能は存在感が希薄で、それ抜きでも人や、ひいては社会を説明できてしまうのではないか、と考えるに至った。であればS/N・J/P特性で迷い続けるのも必然である。最近、noteでも先ず判断機能、次に知覚機能という立場で人・社会を考察している記事を見つけたので紹介したい。
【noteブログの紹介】
それはこちら↑。表題の通り、人や社会を動かす機能は何か、考察した記事である。内容を確認しよう。
《判断機能》
判断機能に関する結論は、斯様な目的にはTeが有効、Fi・Feは反対し兼ねないが味方に付ければなお強力、しかしTiは向かない、である。
冒頭からTe・Fi・Fe・Tiが登場する。Teが最も有効、とあるがそれだけでは綾紫の悪い頭では分からぬので進む。
こうして見るとFi=抽象的な理想主義、Fe=個別的な人道主義、Ti=善悪抜きの究極の物理的現実主義、に思えて来るのだが、Te=人や組織を動かす権力だろうか。そうするとTiが物理的世界、Teが内面を有する「人」を(そのやり方はF的ではないとしても)動かすのであれば、Tiを外向的、Teを内向的、と定義する人が現れてもおかしくない。もしJungが存命であればそうするだろう。更にFeもJungによればその場その場の常識を自分の意見にしてしまう機能であり、人道性はその本質ではない。あるとしたら事後的に学習した結果だ。こんなことばかりに引っ掛かっているから、MBTIを理解できないのが初心者・綾紫である。それはともかく、まふゆの考え方を認めるならば、第2次世界大戦中のHitlerに対し、「ドイツの物理・化学が100年遅れるからユダヤ人追放はやめろ」と忠告して出禁を喰らった化学会社I.G. Farben社長Carl Boschなる人物がいたらしいが、そうするとTi優位、少なくともその時にはTiの作用に基づき発言したのかもしれない。反ユダヤ主義に反対といえども、言葉尻を見る限り、人道主義は感じられないからだ。なおI.G. Farbenは空気からのアンモニア合成で急成長した企業であり、その基を創ったのはFritz Haberだ。共にノーベル賞に輝きながらも、晩年は恵まれなかった。この2人の科学者の生き様、実に見応えがあり、お奨めである(前編・後編)
但しTe自体に戦争を好む性質はないようだ。それは
という記述からも窺える。因みにベトナム戦争を終わらせたRichard NixonはISTJかINTJつまりTeを補助機能とする者、とされる場合が多いようだ。続ける。
ここに来てFiとFeの評価は一転する。FiとFeに優劣はないとの事で、FiとFeを区別しない記述が続く。
「学生時代やプライベートな空間」から始まってはいるが、そこに留まらず、戦争、つまり最も壮大で困難な事業に至っている。そして
でTe・Fi・Feの話からHitlerの話、
つまりTe+Fi+Feの暴走が社会を翻弄する様子が描かれている。ソ連も負けてはいない。
それにしても独裁者の命令=Te、科学的な事実=Ti、とあるが本当だろうか。MBTIの統計ではTeを補助機能とするINTJがTiを支配機能とするINTP以上に理学部・工学部へ進学している様子が窺われる。MBTIの原典Gifts Differingの表を引用しているので参照してほしい。
そもそも理・工学部に進学したINTJは独裁者の命令を受けて科学を内側から捻じ曲げる役割を負っていたのだろうか。どんなタイプであれ、そういう御用学者はいそうである。その上、Jungを字句通り解釈する限り、(理系の)科学はTeの領域である。それはJungがCharles R. DarwinやBaron Georges Léopold Chrétien Frédéric Dagobert Cuvierを外向思考型、Immanuel KantやFriedrich W. Nietzscheを内向思考型と見做していたことからも窺われる。
でも、ほっとするのはここだったりする。
「地獄への道は善意で舗装されている」という諺を良く分かっているからこそ、書ける文章だ。
《知覚機能》
そして次、知覚機能。その結論はSe本命、Si対抗、Ne・Niはどっちも無力、である。
おっと、いきなり結論だ。冒頭のTe最強説も結論から始まるスタイルだったが、ズバッとあっさり登場する感じではこちらが上だ。その理由は
だが、Siも
といった具合で負けてはいない。一方Ne・Niは
とされていて、これではどう足掻いても不利である。
《判断機能 vs 知覚機能》
しかしながら知覚機能の人や組織を動かす力は判断機能には及ばない、というのがこの記事を読んだ綾紫の感想である。知覚機能は
と短くまとめられている。しかしSeを体現した美人販売員が売るのはせいぜい、怪しげな壺や絵画止まりのBtoC商材であり、個人は騙せても人「々」や組織を動かすには至らない。もし仮にそうなったとしても、別のメカニズムが作用していたのではないか、と綾紫は勝手に想像してしまう。そのヒントはここだ。
背後にTeが蠢いているかもしれないが、それは措くとして、Fi・Feは、芸能人やホストやキャバクラ嬢に例えられてはいるが、最終的には国をも動かし得る所、Seとは格違いだ。結局、Te・Se共に人を動かす機能ではあるが、前者は人「々」や組織を動員し、Fi・Feの補助があれば戦争まで起こせるのに対し、後者は精々、前述のように個人をだます程度に過ぎない、という点で大きな落差が存在する。こうした点から歴史に残るのはTeであり、これが判断機能の知覚機能に対する分かり易さ、換言すれば後者の存在感のなさ=分かり難さに通じているのかもしれない。
さてダメ押し。ここまでで気付いた人もいるかもしれないが、ナチスドイツやソ連の暴走に際して、Te+Fi(+Fe)の影響が指摘されていた反面、知覚機能は登場しない。HilterやStalin (Ста́лин)もSeかSiに支配機能か補助機能の地位を与えていたか、或いはそうでないのか。Personality Database
によればHilterはINFJ、StalinはENTJだ。共にNiを支配或いは補助機能として有する者であり、その点だけを見れば人や社会を動かすには不利だが、独裁者であった。即ち、FeやTeの有利さはNiの不利さを軽く覆してしまうのである。こんな所も、知覚機能のどっちでもいい点である。
全く違う見方をもう1つ。まとめを除き、判断機能Te・Ti・Fe・Fiの解説には34行、知覚機能Se・Si・Ne・Niには15行が費やされていた。つまり後者はなくても大体の人や社会を動かすメカニズムの解説はできていたかもしれないのだ。
仮説検証には統計的に充分なもっと多くの説を集めて比較する必要がある。この点では全く及ばぬ1例報告であったが、多少は参考になっただろうか。
【その他の例1】
↑その他、といってしまうには勿体ない力作であるが、世相の考察としてイブリースの記事も参考になる。結論は表題の通り、Z世代はINFP化した、である。具体的には
と述べているが、昭和以降の日本人の国民性にも触れており、現代に至るまでを要約すると
Fe:今よりも遥かに強かったが下記Tiと同時に衰退
Ti:真っ先に衰退
Te:元から少数派/日本人の大多数はついていけない/創作物では悪役
Fi:日本社会の動向を踏まえると必然性が高い/今後も強まっていく可能性
という変化があったとの事である。この後、インターネット普及に伴い、令和の若者文化は以前では考えられないくらいにN型化した、と続く。それは以前の日本は
という状況下にあったのに対し、現在では
のように変化したからだ、と理由付けされている。なおイブリースのTiは何処か「星の流れに」で「・・・こんな女に誰がした・・・」と歌われた戦後日本の混乱期を象徴するようだが、綾紫はこの説明には納得できない。MBTIからは離れるが、機能の序列は全く自由、と主張するJ. SingerとM.E. Loomisによれば、
との事、即ち感覚機能が人間の最も基本的な機能である。とすれば喰うに困った社会では皆、S優位型の様相を帯びると考えるのは自然である。それがSeであった場合、背後にあるTiが透けてしまい、そちらが主役に見えるのではあるまいか。だが本稿の主題ではないので措く。そしてFeが主流だった頃のS/N特性には全く触れていない。その理由は、嘗ての日本人の国民性がESFJ・ENFJ・ISFJ・INFJに等しく該当する為か、或いは特に言及しない限り、日本人の国民性=感覚型、という前提がある為か、の何れかである。勿論、答えは
にあるように後者だ。ところがこちらでは、
となっていてISFP説が登場する。深く分析しているのは前者の記事であるし、1年の期間がある事から新しい程正しい、と見做すのは自然である。しかしそこから、世相の解釈は大体、判断機能で決まってしまい、知覚機能は付加的な要素、と綾紫は恣意的ながらも読み取っている。
【その他の例2】
海外の事例も挙げよう。綾紫はエニアグラム(Enneagram)ではタイプ5だ、と勝手に自己診断しているので、タイプ5を扱った記事にはどうしても目を向けてしまう。注目したのはウィング、即ち補足的なタイプに関する説明。エニアグラムでも1人の人間に対し複数のタイプの影響を考慮する場合がある。矢印で示される分裂・統合の方向や、隣のどちらかから選ぶウィング、ガッツ・ハート・ヘッドから1つずつを選ぶトライタイプはその例である。ここでは深入りする暇はないが、タイプ5と相関するとされるINTPとINTJのウィングに関し、
とある。そしてINTJについては、
即ち外向的思考Teを有するから5w6と同一化する、とされている。INTJはNiを支配機能、Teを補助機能とするタイプであり、本来ならばその特徴はNiによって解説されるべきものである。その上INTPについては
とあるが、TiやNe故に5w4だ、等といった記述はない。これはまさしく本稿冒頭の分かり易さの序列
外向的判断>内向的判断≧外向的知覚>内向的知覚
と符合する現象である。またもや知覚機能は影が薄い。
【補遺】
まふゆの記事の紹介に於いて、何度もJungの考え方に寄り道をした。通常Jung=MBTIのように見なされているが、実際にはその違いは特に外向/内向の解釈に於いて大きく、もはやMBTIと16Personalitiesの差が霞んで見える程である。これについては
を参照されたい。
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