farmtoryは人類がこの先生きのこるために必要不可欠なハッカソンだ おしゃべり対談#06
今回のおしゃべり対談はmiminashiさん。COVID-19と人類が戦っている現在、改めてfarmtoryの意味について考える内容になりました。
so:あらためましてこんにちわー、よろしくおねがいします
miminashi:よろしくおねがいします
so:まず、みみなしさんがfarmtory-labにかかわったきっかけを教えてください。どんな点に興味をひかれましたか?
miminashi:どんな・・・なんか活動内容というか、掲げてる思想があまりにも自分にとって自然なことすぎて、このテーマで活動してる人身近にいたんだなって思ってジョインした記憶があります。DIYが好きな人とか、電子工作が好きな人とか、家庭菜園が好きな人とか、それだけなら結構たくさんいるわけじゃないですか。でもfarmtoryはそうじゃなくて、サプライチェーンを代替する方法を、それも、都市部の普通のご家庭でできる方法を研究するというプロジェクトで
so:そうですね、みみなしさんも、そういうことを自然とこれまでやってたなーという感じですか?
miminashi:いえ、全然一切できてなかったですよ。だって平時に100円で売ってるものを10万円くらいかけて代替手段を見つけるのって、だいぶ狂ってないとできないじゃないですか
so:狂ってないとできない(笑)いい表現ですね!
miminashi:でも、今回のCOVID-19ショックでもまた明らかになったように、完璧に見える現代のサプライチェーンって、実はすごく脆弱なものなので、市民がそれぞれ10万円くらい自腹で代替案を探すのって、価値があることだと思います
so:みみなしさんは、だいぶ狂っていこうっておもったんですか?
miminashi:ひとりだとあんまり狂えないので、farmtory-labがあってよかったです
so:一緒に狂うと楽しい気がする!狂うと言っても、人に迷惑をかけるわけでもないですしね
miminashi:そこはまあ営利企業のスタートアップと一緒ですね、ちゃんと法律や科学的事実は尊重する狂人の集団
so:それでいうと、そもそも、法律や科学的事実をを尊重するってところにも狂気が隠れている気がしますね!(世の中への皮肉です!)
so:今はどんなことをしているんですか?
miminashi:CO2センサのデータをサーバに送ったりしています。COVID-19対策として使えないかなと
so:おー、おもしろい
miminashi:室内の二酸化炭素濃度って、換気状況と相関があるので、CO2を測定すれば換気できてるかどうかがわかるんです。クラスター対策で換気が重要とされてるんですが、どのくらい換気すればいいか、CO2を測定すれば定量的に示せるかなと思って
so:なるほど!3つの密の1つですね
miminashi:それです!「密閉」対策ですね
so:密閉と密集の2つの要素がCO2に影響しそうっておもいました
so:CO2が濃かったらぴぴってなったら、そこを出たり換気したらいい、みたいなものを作る感じですかね?
miminashi:そうです。バスとかタクシーにもつけたいですね。
so:多くの場所にそのセンサーがついていったら、GPS情報とあわせて感染経路の特定にやくだったりしそう(個人情報の取り扱いの壁は別途考慮する必要があるけど)
miminashi:行動履歴はAppleとかGoogleが把握してるはずなので人の行動履歴と突き合わせれば感染経路の特定にも役立ちそうですね
miminashi:farmtoryのようなロングスパンの活動も、東京都がいまやってるstopcovid19も、僕がやってるCO2の測定も、全部「人類がこの先生きのこるための、生死をかけたハッカソン」っていう側面があると思うんですよ。
miminashi:soさんってApollo13 って映画みたことありますか?
so:どうかな?Amazonプライムにありますね。これかな?
アポロ11号、12号が無事月に着陸した。ベテラン宇宙飛行士のジム(トム・ハンクス)は14号に乗る予定だったが、計画自体が政治家や国民から飽きられて来ていた。13号のクルーが病気になり、急遽ジムのチームが13号を任される。だが着陸船操縦士ケン(ゲイリー・シニーズ)は風疹の疑いで降板させられ、ジムとフレッド(ビル・パクストン)は断腸の思いで代替要員のジャック(ケヴィン・ベーコン)を受入れる。そして70年
Amzon Prime Video 『アポロ13(字幕版)』より
miminashi:アポロ13号はフライト中に大事故起こして故障しちゃうんですが、残ったコンポーネントとか、その場にある部材を本来と違う用途に転用して、なんとか生きて地球に帰ってくる話なんですよね
so:ハックですね!
miminashi:そう、ハッカソンなんです。司令船の燃料電池の中身が漏れてしまって、電力を温存するために司令船のメインコンピュータをシャットダウンしないといけなくなってしまって、プログラムの内容を月着陸船のコンピュータに移し替えてフライトを続けたりとか、空気清浄機が2台あるんですけど、それぞれちょっとずつ壊れたからニコイチしないといけなくなって、でもベンダーが違うせいでニコイチできなくて、その場にあった靴下とかガムテープでアダプタをつくったりとか。まさに生死をかけたハッカソン。
so:COVID-19もそういうハッカソンしてる人がたくさんいるんでしょうね。まあなにか、新しい問題を解決するときっていうのは、みんなハッカソンなのかもしれないですね
miminashi:そうですね、COVID-19に関しては例えばCode4Japan率いるstopcovid19チームがハッカソンをしていたりします。スタートアップも似ていて、新しい問題を解決するために作られる組織ですが、時間的には数年間あるので、COVID-19に対するハッカソンよりはゆったりしてるなと思ったり。
so:直近の課題を解決するのと、長期的な課題を解決するのとの違いがあるのかな。
miminashi:そうですね。Apollo13 やCOVID-19はすぐやらないと死ぬからやる、スタートアップはそれよりはタイムスパンが長い。そういう観点でいうと、ぼくはfarmtoryも「人類がこの先生きのこるために必要不可欠なハッカソン」なんじゃないかと思っているんです。Apollo13 とかCOVID-19みたいな「短期決戦、やらないと確実な死」系とは少し違う、「長期戦、やらないと緩やかな死」系のハッカソンだと思うんですよね
so:さっきの例でいうと、スタートアップよりさらに長いみたいなことかな
miminashi:Apollo13 →スタートアップ→farmtoryの順で、短期決戦→長期戦みたいな感じですね。でも、どれもやらないと死が待っているのは同じ
so:どうして緩やかな死になっていくんでしょう?
miminashi:いまマスクが全然手に入らないわけですけど、大企業や国家によって一見精緻に組み立てられてるように見える生活のためのサプライチェーンって、実はすごく脆弱なんですよね。日本のサプライチェーンはすごく優秀だと思いますけど。
so:倍みたいな変化には耐えられない、みたいなことですかね。サプライチェーンは堅固に見えて、崩れることは「ありえない」って思ってしまうけど。
miminashi:どうして「ありえない」と思ってしまうのかというと、普段は生産や運送のプロたちが日々努力をしててくれるからなわけで・・・
so:検査とか、医療とかもそうですね。検査もっとしてほしい!とかおもったとしても、検査のプロは急にはふえないし、設備も急に増えないから、検査の量には限界があったり
miminashi:そう、生産や運送は営利企業がやってるわけですから、実は余剰なんてほとんどないわけで・・・。原子力発電所も発電機の予備がなくて大変なことになってたし。医療は営利企業のやってることじゃないですが、コストカット圧は議会を通じて営利企業と同じように働くわけだし、「プロに任せてるから大丈夫」という意識に関しては全く同一だと思います
so:そうですね。それを解決するには、素人でも学んでできる範囲のことをみにつけておいて他の選択肢を増やせるようにしておくみたいなことですかね?
miminashi:その選択肢が全く無い状態のことを「緩慢な死」と呼んでみようかな、今思いついた(笑)
so:コントロールの効かない範囲のものに生死を預けてしまうことを「緩慢な死」と呼ぶのはどうでしょう。このあいだ、farmtoryのはなしを@むらさきとしているときに、コントロールを取り戻すっていう言葉がでてきました。
miminashi:そっちのほうが的確かも。sustinabilityもそうかもしれないですね。コントロールできる範疇にものごとがある、ということがサステナビリティ。
so:そうですねー、たしかに。それでいうと、とりもどすの背景には歴史的には他に任せずに人がやっていたことだからというニュアンスがあるのだとおもうけど、CO2をモニタリングして換気を測定して対策するというのは、むかしはやっていたというものではなくて、新たにできることを増やすみたいな感じがしました
miminashi:僕としては全部「コントロールを取り戻す」だと思います。CO2のモニタリングなんか、気密性の低い昔の住宅ならそもそもそんなに必要なかったはずで・・・
so:換気のいい状態にするというコントロールを取り戻す、ってことか
miminashi:表面的にはそうなんですが、もう少し掘り下げると、人類は都市を築くことで便利な社会をつくってきたわけですが、都市化したことによって様々な新たな問題が生まれてきて、それを都市計画レベルではなく、市民それぞれのハックで問題を解決できるのが、コントロールが取り戻せている状態といえる気がします。引っ越しする前の家ではソーラーパネルを置いて、iPhoneの充電くらいはできるようにしてました。「ソーラーパネルでiPhoneを充電する」のって、さっきちょっと話に出てた、「100円で買えるものに10万円払う狂った行為」なんですよね
so:たしかにそうですね
miminashi:けど、自分で完全にコントロール可能な発電所が手に入るのって、かなり楽しいです
so:コントロールを手に入れると、楽しいんですよね
miminashi:はい、危機的な状況に備えるのって、義務感でやるわけじゃなくて、本質的に楽しい行為のはずなんですよね。だから、楽しいことしてたら災害を克服できちゃった、みたいな状態が目指すべきところ
so:「本質的に楽しい行為で危機的な状況に備える」って、いいフレーズ
miminashi:farmtory-labがその中心になっていけたらなって思います。
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