初心者オーロラ観測者から見たオーロラ観測の現実と反省(2/2 考察編)

3章 反省と考察

 ここからは2章を踏まえ、初めてのオーロラ観測の感想と現実、反省を書いていく。ここからが一応メインである。 
「反省」とは書いているが私の今回の状況から見るとかなり妥当な結果であるととらえている。むしろ相当健闘したと思っている。 

3.1 オーロラを「見る」ということ

 冒頭で私はオーロラを4夜みたと書いた。これは事実である。オーロラを見た事が無い人がこれを聞くと「グリーンで美しい、一生に一度は見たいというものを4回も見られたのか!なんて羨ましい」とお思いになるだろう。私も現実を知る前ならそう思う。しかし実は違う。はっきりとしたオーロラは飛行機で見た2回。写真で見るようなものはそのうちオーロ ラフライトでの1回。地上からはぼんやりと「オーロラのようなもの」が見えたのと、薄い白い線が見えたのみである。これは曇天のなかでみたのでなおさら微妙であった。地上から見たものは雲とほとんど見分けがつかない。これでなぜオーロラを"見た"と言えるかは後述する。私は目が悪いから他の人よりも区別がつきにくいこともある。他の人はオーロラが見えたともう少しはっきり言っていたから、私の目では余計見えにくかっただろう。とはいえ、地上から見た分では物足りなかったというのが皆の本音であったと思われる。飛行機が飛んで本当によかった。 
 以上をふまえ、オーロラを「見た」ということについて考えると、一般的に想像する「見る」とはどうも違う現実があると思われる。「明け方や夕方でもオ ーロラは見える」とか、「空港から降りた瞬間オーロラが見えた!」という体験談は多く存在する。これらの多くは実際は写真のようなはっきりとしたオーロラではなく、ぼんやりとした薄い雲のようなものを見ていたのではないだろうか。ところが、オーロラを実際に見たことがない人にとっては写真や映像がオーロラの全てだと思っているから、ここでギャップが生まれる。巷にあふれる「オーロラが見えた!」というのは少し割り引く必要があるだろう。実際には色付きのオーロラ自体、条件が整ったときにしか見られないレアな現象だと思われる。今回の旅行では5夜中実に4夜が曇天であった。この悪天候の中で白い雲のようなものが見られただけでも相当健闘したと思われる。
 つまり、オーロラを地上から見ようとすると薄い雲のような形状が見られればよく、多くの日本人にとって「普通」である「色付きのオーロラ」というものは実はレア。見られた人は相当運がいいと思われる。テレビや写真でみるようなオーロラは総力をかけて見られるかどうかだと思う。

3.2 写真による増幅

 地上からぼんやりした雲のようなものをオーロラだと断言した理由は写真である。私の持っていたカメラでは無理なので一緒にいた他の人に見せてもらいました。見せて頂いた方本当にありがとうございました。あれがなければ「見たと思う」くらいだったと思います。
 さて、写真の増幅率はどのくらいだと思われるだろうか。私は写真でオーロラの色が増幅されることは知っていたが、せいぜい「黄緑が深緑になるくらい」だと思っていた。しかし、実際はもっと凄まじいものだった。なんと、「肉眼では何も見えない夜空を緑に映し出す」レベルだった。写真では緑でも肉眼では何も見えないのである。これは無を有にすると言ってよい。フォトショが霞むレベルの盛りっぷりである。体感の増幅率は90%以上である。私が見たぼんやりとしたオーロラも写真では緑の鮮やかな姿が映し出されていた。飛行機から見た見事なオーロラに至っては写真では空一面がグリーンになっていた。詐欺じゃないのか?と言いたくなる程カメラは凄いのである。もちろん、どんなカメラでもいいわけではなく相応のスペックと設定が必要である。スマホのカメラでは真っ暗な写真が撮れるだけで、オーロラは撮れないとよく言われる。これはある意味真実を映し出している。肉眼では本当にそのくらいしか見えないのである。私はオーロラの写真集を素直に見られなくなってしまった。余談であるが、オーロラ 写真は後ろに映り込んでいる星を見ると実際のオーロラの強度が分かるとのこと。星があまりにも多く映り込んでいる場合は「偽物」、そうでない場合は「本物」である可能性が高い。
 とはいえ、ぼんやりしたオーロラであっても、実際に目にしたときにはやっぱり感動するものである。あの独特の姿には色とかそういうものを超越したものを持っているように思う。 
 改めて、はるばるフィンランドの地まで高いカメラを持って撮影していた皆様、快く写真を見せていただいた方々には本当に感謝しています。この文章がせめてものお礼となれば幸いです。 
 初心者オーロラ観測ではカメラは推奨ではなく必携といっていいと思われる。カメラが無いと自分が見たものがオーロラかどうか確証を持てない。オーロラが見られなかったという勘違いも防ぐことができる。ツアーであれば参加者の何人かはカメラを持っている可能性があるのでその際に頼むという方法あるが、個人で行く場合カメラは必需品だと思う。そして、オーロラ写真は罪作りであり、そこに釣られた人々の感動と共に多くの犠牲者も産んでいるといえよう。 

3.3 天気

 2章でも書いたが、天気はやはり最重要である。私が訪れた時は5夜中4夜が曇りであった。うち2日は雲の切れ目もないほどの曇りでこれではどうしようもない。しかもそういう日に限ってオーロラが出そうなのだから胃に悪い。"北欧の天候はすぐに変わるものだ"という情報を得ていたため、諦めもつき辛かった。暗いと雲の切れ目もよく分からない上に先述したように多くのオーロラは雲と見分けがつきにくい。一目見てオーロラだ!!といえるものはレアである。前もって「こういうものが肉眼で見えるオーロラですよ」というものを見ていれば何となく分かるが初見は厳しい。動きが雲と違うとか言われるが、実際に目にしないと感覚的に理解できない。私も雲だと思いこんで見逃したものもあると思う。やはり雲一つない状況が理想的である。ぼんやりしたもの=オーロラだと確信が持てるのは特に初心者にとっては大きい。飛行機に乗っていてもそれは感じた。 
 北欧は北米に比べ暖かくてオーロラ観測によいという。暖かい理由としてメキシコ湾流によるものと説明されるがこれは理由の半分だと思う。もう半分は雲が多いことであろう。雲が多いと放射冷却が起きないので寒くないのである。実際、現地到着4日目にして初めて晴れた日はとても寒かった。10℃くらい気温が低かったように思う。寒い日にオーロラがよく見えるというが、これはこの放射冷却のためである。つまり、寒いから見えるのではなく、晴れた結果寒いからオ ーロラがよく見えるのである。 
 以上から、オーロラ観測には天気が最重要であると感じられた。また、冬に比較的暖かい所でオーロラを見るというのはリスクを抱えているように思われた。もちろん、アメリカでもカナダでも雨は降るし、北欧でも1週間晴れることもあるから最終的には運である。しかし、オーロラ観測という点で北欧がベストかというとちょっと疑問である。念のため書いておくと、観光は最高なので北欧がダメなわけでも後悔している訳でも全くない。むしろオススメである。 

3.4 アプリの活用

 「Aurora」というアプリがあるのをご存知だろうか。オーロラ観測を行う上 でこれは大変助けになった。持ってない人はすぐにDL推奨。これも初心者には必携だと思う。 
 このアプリは今いる場所や指定した場所のオーロラの発生確率を示してくれる他、今後のオーロラ予想や天気まで示してくれる神器である。これが見えると言っている時に必ず見える訳ではないが、見えないというと確実に見えない。 例えば、「夜が更けないとオーロラは見えない」という状況も前もってわかるので、外で待たずゆっくり準備することができる。逆に「今見えなくとももう少しすれば見えるかもしれない」と思って粘ることもできる。 
 アプリの中には Kp index というものがある。Kp の数字の大きさでアプリのマップが色分けされている。これは地磁気の乱れを観測した結果からオーロラの発生確率を計算したものらしい。私も詳しいことはよく知らないが、 Kp が大きければ大きいほど強いオーロラが見えるし、見える範囲も広がるとのこと。Kp>6 であればヘルシンキまでマップが色づくらしい。肉眼で色付きのオーロラが見たければ、恐らく Kp≧4 は必須だと思う。3≦Kp<4 では淡いグリーン、それ以下ではぼんやりとみえるというのが大半ではないだろうか。もちろん、これで全てが説明できる訳ではなく、いつでもオーロラが見える可能性はある。しかし、大きな目安にはなると思う。なにしろ、極寒の中では休みながらでも待てるのはせいぜい2,3時間が限界である。アプリを利用し、良い2,3時間を見つけないと辛いばかりになってしまう。とはいえ私 は機械に頼りすぎて何回か見逃しているらしいので、やはり常に夜空を見上げるのが最終的には正解だと思う。 
 発生確率というのもなかなかくせ者である。私は1%でも確率があれば色付きのオーロラが見えるかもと思っていたが、そうではないようである。確率とオーロラの強度は比例すると思われる。発生したオーロラの中からさらに低い確率で色付きのオーロラが出現するのだから、当然ある程度のポテンシャルは必要であろう。色付きのオーロラが地上から見たければ確率30%以上は必要ではないだろうか。自分が今後行きたい位置にアプリをセットして、 現地時間の夜に確率を確認すると色付きのオーロラがどのくらい見えそうか何となく分かると思われる。 
 ここから、赤色のオーロラ、さらにコロナ型オーロラを見る確率がどのくらい低いかというのも察せられる。今回の添乗員の方も赤は一度あるがコロナは見た事が無いとおっしゃっていた。それも納得できるくらい旅行者には絶望的な確率であろう。 
 また、プロになるとアプリに頼らず太陽風のデータ等から独自にオーロラの発生確率を算出できるそうである。ただ、これは計算結果を検証できる状況に無いと不可能なことでもあると思う。我こそはと思う人は是非挑戦してみて下さい。そして私に教えて下さいお願いします。 

3.5 観測地

オーロラは先述したようにオーロラベルトの範囲で概ね発生するといわれている。だから、私はオーロラベルトに少しでもかかっていれば色付きのオーロラが見られると思っていた。実際にはこれは違うと思われた。オーロラベルトの端ではなくオーロラベルトの中心にいなければ色付きのオーロラは見えないと思う。アプリを見ているとオーロラベルトの南端の街、ロバニエミくらいだとなかなか色の濃い部分が北から降りて来てくれない。見えるには違いないが… という感じ。さらに北の街、サーリセルカはその点では理想的だった。しかし曇りまくっていたためこれはツキがなかった。晴れていれば綺麗なオーロラを見られたかもしれない。フィンランドではかなり北に行かないと色付きのオーロラを見ることは厳しいと思われる。 
 オーロラベルトの中心に位置する国、街(トロムソ、アイスランド、イエローナイフなど)に行かなければ見事なオーロラを見る確率はぐっと減ってしまうだろう。オーロラフライトではスウェーデン上空を飛びようやく美しいオーロラがあらわれた。 

3.6 現地ツアーの活用

 色々とオーロラを見るのに必要な条件を書いたが、その条件を満たす場所が現地のどこか?というのは旅行者にはなかなか分からないと感じた。添乗員さんにここが良いですよと言われて初めて分かった。さらに確率を上げたければやはりプロに頼むのが筋であろう。特に現地ツアーを利用することが一番良いと思われる。彼らは現地のどこが晴れそうで、どこにオーロラがあらわれやすいかを理解している。その上、車も使える。ここはお金をケチらずに頼める所はどんどん頼まないと損であろう。…と書いているが、私は自分で粘って見る時間を増やした方が良いのではないかと思ってツアーではなく一晩小屋で粘った。だが、その日ツアーに参加した人によればツアーで訪れた先で遠くのオーロラが見えたかもしれないとのことで、これは非常に悔しい思いをした。やはりオーロラに金をケチったら負けである。 

3.7 ツアーの利用

 前章からツアーツアーときているが、この章では日本からのツアーについてである。オーロラのみを追いかけるのであれば、個人旅行よりもツアー旅行の方が良いと思う。極寒の地で虚空を見つめ続けるという作業は1人では辛い。ツアーだと皆の目的が同じなので協力できる。全天をカバーすることも分担すれば可能だし、休むこともできる。カメラを持っている人も何人もいる。当然、オーロラを見つけられる人は複数人いた方が良い。日本語も通じる。写真も共有できたりして1人よりはるかに良いと思う。 
 私は今回、ツアーでなければ地上からオーロラは一つも見えていないし、飛行機からもほとんど見られていない。 ツアーメンバーの皆様本当にありがとうございました。私の夢が叶ったのも皆様のお陰です。この文章がせめてものお礼です。 

3.8 昼間やることがないくらいで丁度いい

 オーロラ観測は夜通し空を見ることが要求される。これは昼寝ていないと不可能である。サーリセルカはアクティビティがとても充実しており、大変楽しかった。しかし、夜になると疲れきってしまっていた。これではオーロラどころではない。寝る暇がないのである。ただでさえ時差ぼけで辛いのに寝る暇がないのではもたない。「観光もできてオーロラも見えて、なんて素敵!!」といってスケベ心を出してしまうと綺麗なオーロラにはなかなか出会えないと思う。 
 ここから、オーロラに関してだけ言えば昼間やることがないくらいで丁度いいのではないだろうかと思う。そうすれば昼は寝て、全てをオーロラに向けてベストを尽くせる。とはいえ、その日の夜、大雨でも振ったら泣くに泣けない。このあたりのバランスは個人のモチベーション次第であろう。昼間ガッツリ観光するならば、オーロラは見えたらラッキーくらいに割り切って、1時間夜空を見るくらいで良いのではないだろうか。そのつもりでいけばあきらめもつくし、なにより観光がより楽しめると思われる。 

3.9 極寒の中でオーロラを待つということ

 今回のオーロラ観測では平均気温-15℃前後という状況で1日2,3時間休み休み粘った。これは数字だけ見ると少ない時間のような気がするが体感ではもっと長い。限界である。休み休みでも寒さは体力を奪う。1回外に出るごとに暖まるまで時間がかかる。特にオーロラ観測では止まっていることが多いので余計寒い。本気で防寒していつまでも粘ろうとすると防寒着だけでいくらかかるか分からない。 「夏は日照時間が長いからオーロラ観測には不向き」といわれるが、私は極寒の中で何時間も待つ方がよっぽど大変だと思う。 
 宿泊する小屋があって、そこから一歩外を出たらもうオーロラ観測ができるというのが理想であろう。その場合は10分に1回外に出るという手を取れる。 それでも大変だと思う。そうでないと町灯りを外すためにホテルから歩かないとオーロラが見えないということになる。何回も行き来するのは大変である。ガラスイグルーという手もあるが、あれも上空にあらわれるオーロラしか見られないのでやっぱり外に出ないと厳しいと思う。 
 寒い中で待つというのは想像以上に大変であった。私の防寒が甘いというのもあると思う。冬は宿泊地には相当気を使い、ホテルの一歩外がオーロラ観測地ということが理想的と思われる。雪深い所ではたとえ5分でも往復したくない。 下手したら遭難してしまう。

3.10 飛行機によるハイパードーピング

 飛行機によるドーピング効果について思いつく3点を書きたいと思う。
1. オーロラに時速700km / h で向かう 
 オーロラ観測は基本的に待ちである。オーロラ様がこちらに来ていただくことを願うのみである。しかし飛行機は違う。何しろ30分でフィンランドからスウェーデン上空まで行けるのである。どんなストーカーもビックリである。これならオーロラがどこに出ても観測できる。車ではここまではできない。
2. オーロラ観測に理想的な条件を作り出す 
 オーロラ観測には晴天と暗さが必要である。これは飛行機に乗って高度1万メートルまで行けば自動的に達成できる。地上がどれくらい曇っていようが吹雪いていようが飛行機が飛ぶ条件を満たせばよいのだからこれは強い。 
3. 高度を稼ぐ 
 高度を稼ぐと地球の丸みをある程度無視できる。地上にいると地球の丸みで遠くのオーロラは隠れてしまう。しかし、飛行機に乗って高度を稼ぐことでより遠くのオーロラを観測できる。飛行機に乗っていて目線より低い位置に見えたオーロラは地上では見られなかったのではないかと思う。 
以上、大きく3点あげた。思いつかないだけでまだまだ利点はあると思う。飛行機の欠点は見る窓が狭いことと、左右同時には見られないことだがメリットの前には霞むくらいであろう。フライト付きのツアーがあればそれだけでそのツアーを選ぶ価値があると思う。そのくらい飛行機によるドーピング効果は大きい。 

3.11 最後は知識とお金と根性

 最後に必要だと思ったことをあげたい。初めに、知識である。知識がなければどのくらい粘れば良いのか分からない。オーロラは奈良の大仏とは違ってその場に行けば見られるものではない。22 時頃に 15 分だけ空を見ても見られる確率は低い。とはいえ知識がない中、極寒の地で25時まで 待ち続けるのは心が折れる。知識があっても折れかける。22 時の時点でこれからが本番だと思うには最低限の知識が必要不可欠である。次にお金である。 お金をかければ見えるものではないがかけないと見られない。防寒着は高い。 現地ツアーも安くない。そもそもオーロラが見える場所まで行くこと自体が高 い。滞在する期間を延ばしただけお金がかかる。安いホテルでは体力の回復に限界がある。オーロラにどこまでお金をかけられるかも勝負であろう。そして最後は根性に尽きるだろう。適切な地域と時期を選び、そこへ向かったら後は根性で空を見つめ続けるのみである。空を見る時間が長ければ長いほどオーロラに出会う可能性は上がる。 
 オーロラが多くの人を引きつけ、人生で最高の経験だと言わしめるのはこれらの苦難を乗り越えた先にようやく見える景色だからではないだろうか。 

4 まとめ

 私が初めて行ったオーロラ観測に対して感じた感想と現実、反省を書いた。 オーロラは写真でかなり詐欺れること、晴れることが重要であること、見る環境、地域、人の数が重要であることが分かった。また、アプリやカメラなど文明の利器をフル活用してもなおオーロラ観測は難しいことが分かった。飛行機は旅行者が使える最強の道具であること、最終的には根性が大事だということが分かった。 
最後に、これらの苦労を超えて実際に見るオーロラは人生の中でも言葉にならない、特筆すべき比類なき体験であることが分かった。 
これを読んだ皆様にとってオーロラ観測がより豊かなものになれば幸いである。 


あとがきと謝辞という名の蛇足

 ここまで読んでいただいてありがとうございました。ここからは私とオーロラについてつらつらと書くというあとがきと謝辞という名の蛇足です。読まなくても良いと思いますが読まれる方には感謝です。 
 私は学校という場所が嫌いで嫌いでなんであんな所にいなきゃいけないのかとずっと思って学生時代18年間を過ごしておりました。まあそのおかげで就職も出来て資格を取ったりして社畜として生きている訳ですが、それも慰謝料のようなもので、あって当然くらいに思っていた訳です。だから学校に行った時間は無駄だっただろうと。少なくとも18年も行かなくても良かったじゃないかという思いが拭いきれなかったわけです。それではどうもしんどい。どうせなら人生やりたいことをやろうと、夢だったオーロラ観測と海外旅行をしてみようとフィンランド旅行を思い立ちました。そこからオーロラについて勉強する中でオーロラの原理は学校で習ったことがふんだんに盛り込まれていることが分かりました。太陽風とプラズマに始まってフレミングやら右ネジやら、そして発光の原理はまさに大学でやっていたことでした。この時の感動は忘れられないものです。そして思ったのです。「私はオーロラを見るために学校に行っていたに違いない」と。 後は見るだけです。結果、飛行機の中からではありますが、とてもとても素晴 らしいいかなる言葉を持ってしても形容できないオーロラを見ることができました。オーロラに対する執念があったのはそういう思いもあったのです。オーロラのおかげでやっとこさ前向きに人生に向き合えそうです。オーロラは罪作りでもありますが、それを遥かに凌駕する人智を超えたものだと思います。オーロラを表現する言葉を見つけるために生きていかなければいけません。 
 これは私1人の力で見られた訳ではありません。旅行に際して添乗員の方には一人参加の私に気を使っていただきとても良くしていただきました。にこやかにパワフルにツアーメンバーを引っ張っていく姿はとても頼もしかったです。ありがとうございました。ツアーのメンバーにも恵まれ、とてもお世話になりました。これもオーロラがつないでくれた縁だと思います。実は今回一番得たものかもしれません。本当に感謝しています。ツアーの最中は感謝の意を込めて皆様に精一杯拙いオーロラの知識を伝えました。聞いてくれた皆様ありがとうございました。そのおかげで私はツアーの皆様から博士というあだ名を頂戴いたしました。しかし、私は名実ともに博士ではありません。私は偉大なる先人達の知識をなぞっているにすぎません。そういった先人によってオーロラへの扉が開かれていることに感謝しています。そして、学生時代にお世話になった友人、 先輩には感謝しています。皆様のお陰でしんどい学生時代を乗り切れました。最後に、いつも暖かく私を見守り、支えてくれている家族に感謝しています。そして私に関わってくれた全ての人に感謝の意を表明しこの文章を終わりたいと思います。ありがとうございました。それでは皆様今度はイエローナイフかトロムソのフィヨルドで会いましょう!! 




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