七つの前屈ep.安楽詩衣「機能、役職、委員長~据われ、軸。~」
2.
「で? わたしたち二組は結局、なにすんのよ。文化祭」
渡海窓渋谷。とかいまどしぶや。公立域還高校二年二組出席番号十七番。反発を繰り返して生きるギャル。
金髪ツインテ校則違反。
この世のありとあらゆる『規則』を拒否する姿勢が、その様相から伺える。
彼女はずっと、そうやって生きてきた。自分の意志で、反発し続けることを選んできた。
「さあ。どうせ、またくだらない催しじゃない。興味ない」
版利井銀座。はんかがいぎんざ。公立域還高校二年二組出席番号二十番。反抗に芽生えたお嬢様。
知的大人クール。
知性と冷徹さを兼ね備えた風貌は近寄りがたいが、彼女はずっとそうやって生きてきたわけではない。
両親からの期待に応えられなくなったとき、壊れたのだ。そこで芽生えた、反抗期。
「ギンザ、あんたはなにがしたいの?」
「べつに。渋谷がやるなら、なんでもいい」
「だねー。あたしも、ギンザと一緒ならなんでもいいや」
反発的なS極と、反抗期のN極。くっついては離れる、両依存の磁石。
「メイドカフェとかどうよ! このクラス、かわいい子ばっかなんだからさー。もったいないって」
池袋南波。いけぶくろなんぱ。公立域還高校出席番号五番。軽薄に口説いて回るチャラ男。
薄くて軽い軟派男。
「はあ? やーだ、そんな悪趣味な」
「いいじゃんいいじゃん、絶対売れるって!」
「……ナンパ、目、潰していい?」
「え、なになにギンザ!? こわいんだけど! そんなにいや?」
「いやっていうか……そこまで、がんばる必要ないでしょ、別に」
「でも、金髪メイドとかいたら映えるじゃん? 渋谷なら絶対似合うって! 銀座もそう思わねえ?」
「だからやだっつってんでしょ! 何回も言わせんな!」
「……わたしもメイド喫茶、ありだと思う」
「ちょっとギンザ!?」
放課後の教室。
文化祭の出し物決めの為に全員──ただひとりを除いて──が居残った二年二組の、終わらない学級会。
「はあ。このままでは、決まりそうもありませんねー。……では」
安楽詩衣。公立域還高校二年二組の学級委員。調和に甘んじる優等生。
彼女は、中心に座ったまま、手を叩く──。
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