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七つの幸運ep.撮記取喜六「新たな伝聞、紙の上」

8.

「今回の記事の反響は、なかなか良いモノだったな」

 域還市に蔓延っていた、危険薬物横行事件。それと深い繋がりのある人物が自分の通う学校にいるかもしれないという情報は、否が応にも生徒の注目を大きく集める。

 所属が被れば世界が繋がる。どこか遠くで起きているなにかが、途端に日常と地続きになる。

「証拠写真が用意できなかったのは心残りだが……やはり視覚情報の有無は記事の信憑性に関わるからな。今度、レンズくんにでも頼ってみようかな」

 記者にとって大事な資質は、危険地帯に突っ込む勇猛ではなく、踏み込みすぎない臆病だ。

 どんな情報を入手できても、それを伝えなければ意義はない。

 警戒して、し過ぎることはない。

「とにかく、感謝しないとな。新聞部の部室にこの情報を投げ込んでくれた、だれかさんに」

 情報を扱うということは、危険を扱うということと同義なのだから。

「さて、どこかで今日も、スクープが僕を呼んでいる!」

知らぬが仏、触らぬ神に祟りなし。

知識は仏、知恵は神。情報は生き物。

「待っていてくれ、域還高校のみんな!」

 冒さねば得られぬ好奇心に、幸せは宿るだろ

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