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七つの前屈ep.安楽詩衣「機能、役職、委員長~据われ、軸。~」

4.

「安楽詩家の次女として。衣には、恥ずかしくない立派な女になってもらいます」

 安楽詩家。

 その脈歴や家系図は門外不出とされ、だれも詳細な内情は知ることのできない、不攻不落の名家。

 域還市のバランサー。

「はい、わかりました。お父様、お母様」

 安楽詩衣は、その家の次女として生まれた。

 そして生まれ落ちると同時に、安楽詩家の人間としての仕事──『役職』を、全うすることになる。

「まだちっちゃかったら全然覚えてないけどさあ。そうとう、険悪だったみたいだよ、パパとママ。衣が生まれるまではね」

 安楽詩浴。あんらくしゆかた。安楽詩家長女、第一子。自由気ままな放蕩娘。

 本来跡取りとして数えられるはずだった長姉は、その奔放な性分で、庭園をふわふわと漂っていた。

「……ふん。おやじもおふくろも、どうせねーちゃんのことが……ころもねーちゃんのことだけが、大切なんだろ」

 安楽詩剥。あんらくしはがれ。安楽詩家長男、第三子。思春期真っ盛りの反抗期。

 他家なら跡取りの候補としてまず第一に挙げられるであろう長男は、その一族にしては珍しく、猛々しく尖っていた。

「……わたしのおかげ、なんかじゃないよ──ちがうよ、あなたのこともおねえちゃんのことも、お母様とお父様は大切に思ってるはずだよ」

 安楽詩衣。あんらくしころも。安楽詩家次女、第二子。跡取り候補筆頭。

 公立域還高校で学級委員長を務める彼女は。

「……ちがうよ……ちがうよ……わたしは、そんなんじゃないよ」

 生まれたときからずっと、”役割”を押し付けられて生きてきた。

 退屈が交錯する──その舞台まで──。

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