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七つの幸運ep.穴生革命音詠詞「届けない想い、永久に」②
2.
「でーもちゃん! 一緒かえろ!」
未知標奇跡。みちしるべきせき。公立域還高校二年一組出席番号28番。
幸運に愛された少女。女神さまの横恋慕。アンラッキーガール。
「うん、帰ろう。未知標ちゃん」
穴生革命音詠詞。あのでもねえっと。公立域還高校二年三組。未知標奇跡の幼馴染。
ふたりは毎日、一緒に帰っている。
小学校の頃から、ずっと。それは高校生になったいまでも変わらない。
たとえクラスが離れても、教室を移動して誘いあう。別々の教室で受けた授業とか、会えなかった休み時間に起こった出来事などを話しながら、たまには過去の思い出や将来のことなんかも口にしながら、互いの家へと歩く帰り道。もう、むかしみたいにお手手を繋いで仲良しこよし、みたいなことはなくなったけれど、それでも、ふたりの気持ちは繋がっている。
「……ねえ、未知標ちゃん」
「? なに、でもちゃん」
季節ごとに移ろいでゆく風景のように、心情だって流れていく。心は川だ。穏やかにせせらいでいるかと思えば、濁流のような激しさに飲まれることもある。
それでも。
「わたしたちは、ずっと友達だよね。未知標ちゃん」
それでも、彼女は変わらない。いつもそのままの笑顔で、傍にいてくれる。隣に並んで歩いてくれる。むかしの思い出にも、濁って見えにくい『将来』ってやつにも、その幸せそうな笑顔のままで、そこにいてくれる。
「どうしたの、でもちゃん。いきなり」
穴の中で塞ぎ込んで動けなくなっていた女の子に手を差し伸べてくれた、あのときの笑顔のまま。
「あたりまえじゃん。奇跡ちゃんとでもちゃんは、ずっと友達だよ!」
穴生革命音詠詞は、未知標奇跡に救われている。救われ続けている。
「……そっか。なら、よかった。うれしいよ」
隠し事が得意な少女は、そうやって、幸せに浸り続ける。