後悔で溢れる世界〈a:後回し編〉ep.榊枝七科「大っ嫌いだよ」⑥
6.
走馬燈、みたいなものだろうか。
「ねえ、七科。僕と一緒にいて楽しい?」
「た……楽しくなんかないよ」
「でも、さっきからずっと笑ってるよ?」
「湖陽の髪型がおかしいから、笑ってるだけだし」
「寝癖ついてるの、七科の方じゃん」
「え、うそ!」
「ははは。ごめん、うそ」
「もー! きらいだよ、湖陽なんて」
廃棄されそうになった七科は、思い出していた。
「どんな髪型でも、七科はかわいいよ」
「しらない!」
彼と過ごしたひと夏の想い出を。
「ねえ、七科。僕のこと、好き?」
「……だから、言ったじゃん。湖陽のことなんて、だいきらいだーって」
「そっか」
自分が機械であることを忘れてしまいそうな、あの不思議な空間を。
「でも、僕は好きだよ。七科のこと」
「またそうやって……わたしはだいっきらいなんだからね!」
「うん。わかってるよ」
「──でも」
「でも?」
永遠に続いてほしかった、大好きな人との大好きな時間を。
「嫌いだけど、ずっと一緒にいてあげるよ」
ずっとこの関係が続くだなんて勘違いしていた、恋人の顔を。