『七つの前屈』ep伝導寺真実「瓢箪の中で回る駒~捲れ、舌。~」
7.
「『シックスセンス』──第六感、というやつですねー。考えるでも選ぶまでもなく、直感で正解を感じ取れてしまう感覚のことをそう呼ぶらしいのですけれど。本人の意思意識には関
係なく──あくまでも機械的に、機能的に──そこにある自然を、読み取れてしまう能力なのだとか。見る、嗅ぐ、聞く、触る、舐める。人間に当たり前に備わったそれらとはまた違う
、器官を超越したひとつ飛ばしの理解。才覚……才能……とも、言ってしまえるかもしれませんねー。でもそれって──そうやって”知った”事実って、ほんとうに真実といえるんでし
ょうか。錯視や幻聴のように、知覚したそれが歪んだ偽物だった、なんてことも、ないと決まったわけではありませんよねー……まあわたしには関係のない、どうでもいいことですけれ
ど。ひとついえることがあるとすれば、そんな感覚をお持ちの天才がほんとうに実在するのだとしたら、この終わらない議題にどう収拾をつけるべきか、教えていただきたいものですね
ー。どうせ、結論は……結末は、変わらないんでしょうけれど」