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七つの幸運ep.穴生革命音詠詞「届けない想い、永久に」⑧ fin.

8.

「未知標ちゃん。わたしたちは、ずっと友達だよね?」

 ふたりは毎日、一緒に帰っている。

 小学校の頃から。それは高校生になったいまも変わらない。

 道が変わっても。景色が変わっても。季節が変わっても。

 出会ったときから、ふたりの関係は変わらない。

「うん。あたりまえだよ!」

 

 未知標奇跡の笑顔を見ると、安心する。と、同時に、不安にもなる。

「奇跡ちゃんとでもちゃんは、ずっと友達だよ!」

 蒸気した頬。わずかな期待と膨らんだ不安に揺れる瞳。真剣そのものな表情。

 網膜にやきついた後輩の表情が、蓋をしている詠詞の心をざわつかせる。

 わたしなんか。なんでわたしなの。わたしじゃないの。

──あのね。

「……そっか」

──でもね。

「あーあ。やっぱり疲れるなあ、青春って。川遊びみたい」

──えっとね。

「川遊びかあ。最近してないねえ」

「まあ、濡れたらお化粧崩れちゃうしね。水辺は女子高生の天敵だよ」

「おぉ、でもちゃん、なんだかすっかり大人の女性だね!」

「そんなことないよ。わたしはずっと、わたしのままだよ」

──大好きだよ。

「わたしは、未知標ちゃんの友達のままだよ」

──友達として。人として。幼友達として。

 女の子として。

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