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七つの幸運ep.剣筋剣士「剣は腰に、誓いは胸に」①

1.

 繰り返しなどない。同じようないまが、ずっと続くだけ。

『侍』とは、日本の誇りであり、魂である。

 民が一様に剣を捨ててスマホを手に取り、桑を放り投げパソコンと睨めっこする現代においても、そんな時代錯誤の思想を掲げ続ける者は少なくない。

 ただ古かった歴史の一部を「古き良き時代」と形容して囃し立て、進化の流れが速くなった現代の競争から目を背けようと喘ぐその姿勢こそ、彼らの吠え立てる『大和魂』からもっとも遠くかけ離れた態度ではないのか──そう言ってしまいたくもなるが、幸か不幸かこの時代において、見ず知らずの人間に対してそこまでの労を割く人間ほど、珍しいものもない。

 溜め込んだフラストレーションも、のっぴきならない劣等感も、破裂するくらい膨張した承認欲求も、いまや指先一つで満たされ、解消されてしまう。

 これではたしかに、わざわざ剣を腰に差す必要など全くない。重くなるだけだ。

 革命はだれにでも、いともたやすく起こせてしまう。

「約束、などという軽々しいものではござらん。拙者の胸に滾るのは、血よりも熱く、熱よりも赤い『契り』にござる! あの方が死ねというのなら、拙者は笑って死ぬだろう。傍に仕え、共に生きることができる。これ以上の喜びがあっていいものか!」

 そんな、薄くも狭くもなった現代において、ただひとつの契りを胸に世を渡る青年が、ここにひとり。

 輪廻転びし義の心。

 野良侍の転生者。

 時代錯誤の堅物。

【忠義】に尽くす生まれ変わり──剣筋剣士。

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