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七つの幸運ep.穴生革命音詠詞「届けない想い、永久に」⑤

5.

 だれにでも、得手不得手はある。

 しかたのないことに。

 しかしその種類と度合如何によっては、人生が大きく左右されてしまうのもまた事実。 

「……あの、えっと」

 穴生革命音詠詞は、『自己主張』の苦手な女の子だった。

 残酷なことに、家庭環境などは関係なく、それはただの性格だった。

 引っ込み思案。思って、考えて、振舞って。勇気の一歩を踏み出せない。幼いながら、「嫌われるのが怖い」が、常に先んじて出てしまう。だからいつも、集団の輪にうまく溶け込め

ず、端っこの方で余りながら、なんとなく全体の意思に引っ張られる形で生きていた。

 あのとき、それも「なんとなく」通っていた域還小学校三年一組の教室で、『彼女』に出会うまでは。

「ずっと教室で座ってるより、おそとで遊ぶほうがきっと楽しいよ、でもちゃん!」

 初めてだった。

 笑いかけられるのも。あだ名で呼ばれるのも。かけっこしたのも。友達と一緒に帰ったのも。

「だーいじょうぶ。きせきちゃんについてくれば、いいことしか起きないよ!」

 だれかに、手を差し伸べられたのも。

「……なんで? なんで未知標ちゃんは、わたしにやさしくしてくれるの……?」

「え? なんでって……あははっ、でもちゃんは変な子だなー」

「変な子って」

「そんなの、決まってるじゃん」

 あの日から、穴生革命音詠詞は。

「ともだちに優しくするのは、あたりまえのことなんだって。『かみさま』がいってたもん!」

 未知標奇跡の、友達になったんだ。

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