七つの幸運ep.利手川来人「悪魔の利き腕」①
1.
右腕が折れたなら、左腕を使えばいい。
左利きの人間は、左隣に立たれることをひどく嫌がる。多くの人間の利き手は右であるため、そちら側に立たれると腕同士が当たって邪魔なのだ。
だれもかれもが不条理や理不尽を力尽くでぶっ壊せるほどの腕力の持ち主なら問題はないが、そこまでの破壊的な強さの持主など、限られる。
人生は選択の連続で、流動で、取り返しがつかない。
相棒も、親友も、好きになる人も、己の意思だけで選ぶことはできない。常に、運命に流されて生きるしかないのが人間だ。
「俺は『スカイレッド』の副族長である前に、硝子張響の右腕だ。左右に分かれた道があったら迷わず真ん中を突っ切っちまうような──そんなデタラメな強さに惚れたのさ」
そんななか、だれかの為に生きているかのような青春を送る男が、ここにひとり。
痛みにも痒みにも届く右腕。
鬼に金棒悪魔の利き腕。
右往左往のロケットパンチ。
【色欲】に溺れる青年──利手川来人。