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七つの幸運ep.撮記取喜六「新たな伝聞、紙の上」①

1.

 人が生涯得る情報のほとんどは、伝聞に過ぎない。

『百聞は一見にしかず』。

 耳で聞いて得ただけの百の情報は、実際に目で見て確かめた一の情報には劣る──という意味の、含蓄のある諺だ。

 なるほど、たしかにそれはそのとおり。

 怖いと噂のヤンキーが片想いの女の子にヤキモキする純情派だったり、いつも達観した言を吐き捨てる女子校生がその内にただならぬ劣情を抱いていたり、この世は思いもよらぬことで──人で、溢れている。

 だれかに聞いた情報だけでそこにある真実を抜き取ろうなど、おこがましい話だ。

 真実は常にそこにあり、またそこにしかなく、やがて人知れず移ろいゆく。

「僕の家庭では、父が朝の食卓で新聞を読む光景が当たり前だった。毎日、欠かさず。だから僕が新聞というものに興味を持ち、自分でもそれを書きたいと思うようになるのは、至極自然なことなのだ!」

 そんななか、見聞きした情報をなんでもメモ帳に書き記す男が、ここにひとり。

 公立域還高校の情報版。

 百聞き百見るネオサーチ。

 とりあえずは撮る即手記人。

【記録】を記す新聞部部長──撮記取喜六。

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