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テレビから消えた

僕を密着したドキュメンタリー映画のタイトルに「テレビから消えた」という書き方がされていてその映画の取材に答えるときに「消えたんではなく抜けた」と言っている。多分、おれをずっと応援してくれてる人たちや、ラジオを聴いてくれてる人たち、近しい人たちなら番組からきたオファーを当時、断ってることを話してもいたから知ってると思うんだけど、知らない人たちは、仕事が来なくなった芸人の言い訳のように聞こえる人も少なからずいる。この感覚が理解できる人たちは限りなく少ないと思う、ある漫画家の人がテレビで失礼なことをされ、二度とあのテレビのオファーは受けない、と言った。あるラーメン屋も、タレントがロケで来たときに残して帰った、二度と番組には出ない、と言った。テレビは宣伝だ、テレビに取り上げられると行列ができる。でもテレビに取り上げられなくても行列ができてる店もある。僕はテレビを抜ける前から365日、日本ではほぼ毎日ライブをしている。いいライブができた時は、その中のお客さんが次は自分が主催したい、街に来て欲しいと言ってくれてその街に呼ばれて、それが何年も続いてる。テレビに出なくてもいいというのは自分の芸への自信だ。そしてテレビに出るということは、いつしかあの場所に求められていくと、やりたくないことをやっていくことになる、金のため、知名度のため、に。せっかくテレビでれてたのに、やめるとか、お金とかの不安はないですか?と聞かれることがある、金の不安より、いつのまにか、金のためになんでもやる自分自身になることの方がよっぽど怖い。かっこよくりたい。僕にとって、かっこいいとは、それだ。金のために芸人なったんじゃない、芸人をやったら金がもらえただけだ。何をやって稼ぐかが重要だ。全く売れなかった20代後半、今思えばまだまだ若かったんだけど、あの時は同期はすぐに売れていき、10年芸人をやって売れなかったら、辞めた方がいいと言われていた時、次男が俺に言った「こんな面白くない人たちがテレビに出てる、お兄ちゃんは出れていない、諦めた方がいいと思う、地元に帰ってきて仕事したら?なんでも仕事はやってたら、好きになるで、みんなそうしてるで」と。本当にその通りだと思う、しかし、そんな昭和のお見合いみたいな、とりあえず、結婚したら好きになるだろう、みたいな。僕は街中であの時たまたますれ違った女に恋をして、その子と付き合えた、だから一生大事にしたい。それが俺にとって舞台の上でマイクひとつで、笑いをとることだ。だからテレビから消えたんではなく、一途に、マイクを握ってるんです。そして俺がテレビから消えたんではなく芸人たちが舞台の上から消えていったんです。

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