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DLsite航海記/202103

 ここ半年くらいにプレイした同人エロゲについて適当に書いていく。ネタバレ配慮なし。

Pray game

 女の子主人公の一人旅で敗北したり街中で竿役に引っかかったりするとエロシーンが発生するオーソドックスなジーコがベースであり、一日ごとに行動力リソースを管理しながら特定日数ごとに出る課題をクリアしたり、イベントで仲間との絆を深めることでスキルを獲得したりする。早い話がエロいペルソナ。

 このゲーム、戦闘がとても面白い。敵ごとにスキルの使い分けやバフデバフの駆使が求められ、アルテリオス計算式をうまく使った戦略的な戦いをさせてくれる(自分の知るゲームだとメギド72が近い)。設定は一人旅だが主人公が持つ魔導ユニットも戦闘に参加してくれるので、ジーコにありがちな退屈なタイマンバトルとは無縁である。終盤は雑魚敵が硬く少々かったるいが、それを差し引いてもおつりがくる完成度。
 
 ストーリーに関してはDLsiteで行われた人気投票で一位を取るくらい評判がいい。のだが、自分はそこまでハマれなかった。
 このゲームとにかくモチーフに対してシナリオが直接的すぎる。ストーリーにおいて「囚人のジレンマ」が重要ワードとして出てくるのだが、これをWikipediaで適当に調べ、なおかつゲーム部分のベースであるペルソナシリーズに多少造詣があれば、シナリオ中に出てくる重要そうなワードやキャラの中身についてゲーム中盤あたりでほぼ全て見当がついてしまう。そして実際にシナリオを進めて明かされた内容は予想を超えるものではなかった。
 ラストバトルの演出はかなり力が入っていて良かったが、あんなアルティメットまどかみたいな演出の割にはラスボスの格が低すぎるのではないだろうか。ちゃんとニュクスアバターとかヤルダバオートとかそのくらいの奴をしばかせてほしい。

 あとこれは個人の信仰の話なのだが、エロシーンを見るゲーム的デメリットが異常に大きいのがきつかった。このゲームでは処女を失うことで使えなくなるスキル(これがまたマジで便利なんだ……)があったり、一度のエロシーンで数日行動不能になるリスクがある。こうなると敵のエロ攻撃も街中で起こるエロイベントもただの爆ディスアド発生装置でしかなく、常に回避のため気を張っていなければならない。自分は生粋のプリンセスサクリファイス原理主義者であり、「ジーコのエロシーンは見ることでアド損になるべきではなく、場合によってはアドになるべき」という考えを持っているのだが、その点頑張ってエロシーンを避けなければいけないという状況は自分にとって面白いものではなかった。

 総じて「間違いなくジーコとしての完成度は高いんだろうけど色んなところでNotforme」という感想を抱かざるを得なかった。俺がペルソナを知らなければもうちょっと楽しめたかもしれない……

楽園魔城リピュアリア(1&2)

 メトロイドヴァニア+ドット絵+モン娘+逆レ+女装美少年主人公+純愛+00年代燃えエロゲ。違法建築とすら呼べるてんこ盛りの属性をきっちりまとめ上げた狂気のゲーム。

 ゲーム部分に関しては基本的に古式ゆかしいメトロイドヴァニアである。かなり真面目に探索をする必要があること、ボスが強いなどの理由で難易度はそれなり。総じて「本格的」という感じで、自分はメトロイドもヴァニアもエアプなので慣れるまではかなり大変だった。特に1は「とにかく画面が狭い」という明確な欠点があり、ちょっと動きの速い敵やデカいボスを相手にするだけでも非常に苦労する。ちなみに2では画面のズームイン/ズームアウトが実装され解決した。
 そして特有のシステムである「使い魔」がとても面白い。(主人公が身体を差し出して【規制済み】した)敵モン娘を味方にすることができ、攻撃やバフなど様々な支援をしてくれる。2では複雑なスキルシステムが実装され、思い通りのシナジーを組んで強力な味方キャラを作る楽しみが生まれた。手間こそかかるものの、一押しの可愛いキャラがバリバリ活躍する様を見られるのは良い。

 アクションゲームながらストーリーの進み方は完全にエロADVのそれで、主人公とヒロインとの交流やエロシーンを挟みながら伏線を回収したり核心に迫っていくタイプ。00年代を感じる。
 シナリオ中にキャラが全部を説明してくれるわけではなく、また時間移動などの複雑なシナリオギミックも多用され読解は割と難しい(実のところ自分も完全には分かってない)。が、分かった時の感動や驚きはひとしおなので、無印から2の真エンドまで通してプレイすることを強く推奨する。特にスピカの伏線はビビった。
 ちなみにこのゲーム「2の前に1をやっておくと面白い」とかではなく「1をやっていなければ2のストーリーは絶対に分からない」タイプなので、プレイする時はセットで。というかガンヴォルトストライカーパックみたいに両方セットで売るべきだと思う。

 このゲームの良い所はたくさんあるが、特筆すべきはやはり独特の世界観だと思う。このゲームなんとボイスを除きドット絵、テキスト、BGMに至るまで全て個人製作されている。ゲームの舞台である「楽園魔城」のポップで奇妙、そして淫蕩な雰囲気をあらゆる方面から一貫性をもって丁寧に演出しており、凄まじい作り込みによってプレイしていればおのずとこの世界に思い入れを抱いてしまうこと請け合いである。
 ゲーム内BGMは1と2合わせ50曲以上あるのだが、ゲーム外で聞く方法は今のところ存在しない。つらい。サントラ売ってくれ。出来ればアルティマニアも。

ロレーナと遺跡の国

 複数の銃種を駆使して敵を倒しながら進んでいく王道TPS。このゲーム特有の変わったシステムなどは無いが、普通に遊んでいるだけでとても面白い優等生なゲームである。
 
 世界観はぱっと見普通の洋風ファンタジーだが、実は人類が一度滅んだあとの世界で……というアレであり、中盤以降では旧人類の遺構での戦いが繰り広げられる(「遺跡」とはそういう意味)。割とベタな設定ではあるが、旧人類がいかにして滅んでいったかを匂わせるテキストの完成度は高く、非凡な面白さを持っている。
 旧人類の顛末はそれなりに詳しく語られるが、主人公のロレーナはそれの半分ほどしか理解できないし、他の登場人物はそれを全く知ることはないし、そもそも読まなくてもこのゲームは問題なくクリアできるしストーリーも追える。完全なフレーバーテキストでしかないことによって、旧人類にもいろいろなドラマがあったがそれとは関係なく今を生きるキャラクターたちの物語が進んでいくことが示されており、全てを知るプレイヤーに得も言われぬ切なさを感じさせる。ゲームという媒体を活かした演出と言えるだろう。
 ちなみに裏ボスにめちゃくちゃヨコオタロウ節で喋る旧人類製のロボットがいることから、ネタ元はニーアシリーズだと思われる。

 多少の殺伐こそあるものの、全体的な雰囲気は「スプラトゥーン」「けものフレンズ1」あたりの優しめポストヒューマンものを連想させ、主人公はじめ登場人物もまともな奴ばかりなのでプレイしているとあったけえ気持ちになれる。シビアな世界に疲れた人におすすめ。まぁ敗北エロは結構容赦ないけど。

Anthophobia

 女性主人公のエロいゾンビもの。負けると植物人間に【規制済み】される。
 DLsite慣れした人間であれば商品ページから地雷臭を感じ取ってしまうかもしれないが、度重なるアップデートによって相当量のボリュームといい感じのイラストを得ているので安心していい。たまにバタ臭いが。

 2Dアクションにバイオハザード(1~3)とL4Dのエッセンスを合わせたような感じの王道ゾンビもの……なのだが、このゲームやたらと難易度が高い。というのも、操作する主人公がクッソ貧弱なのである。数秒全力疾走すると動けなくなるスタミナにもっさりしたジャンプ、武装はハンドガン(最大3マガジン、リロードすると前のマガジン内の弾が消滅する)といくつか持てる火炎瓶しかないという有様である。こんな逃げホラゲー主人公みたいな性能でタイラントやネメシスやtankやwitchを何とかしなければいけないのでたまったもんじゃない。合衆国エージェントのようにとは言わないから、せめてアウトブレイクの主人公くらいは動けてくれ。
 一応ノーマルエンドを見るとチートコードが使えるようになるので、最後までクリアするということだけならなんとかなる。使っても簡単ではないが。

 そしてこのゲーム、普通に怖い。いや俺がホラー苦手だからなのかもしれないけど、ともかく怖かった。
 青々と茂る植物には多くの場合ポジティブな意味合いがあるが、このゲームをプレイした後は「花恐怖症」のタイトルに違わず植物全般に嫌悪感を抱いてしまうだろう。特にタンポポがもうダメ。種ごと滅ぼそう。

MECHANICA──うさぎと水星のバラッド──

 MECHANICA、それはVA-11Hall-aとムジュラの仮面を組み合わせた全く新しい……かどうかは分からないが、ループものSF系ADV。

 細かい部分は置いておくとして、何が良いってメインヒロインが一人なこと。メカニカと最初のぎこちない関係から徐々に距離を詰めていく過程をゲーム一本分の時間をかけて丁寧に描写してくれる、たったそれだけが本当にうれしい。ギャルゲーかくあるべし、と言わざるを得ない。ヒロインレースなんて必要ねぇんだよ!
 サイバーパンクらしい奇妙な登場人物たちとのやり取り、ループもの特有の緻密に組まれた設定、ヒロインとの交流パート、どれをとっても隙の無い面白さがあり、テキストの質は最上級と言っても過言ではないだろう。ちなみに脚本は元商業エロゲライターらしい……なんで同人コーナーにいんの?

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 ちなみに上のシーンは自分がこのゲームで三番目くらいに好きなテキスト。

 そしてこのゲーム、物語の重要な要素である音楽の使い方がとにかくうまい。「リピュアリア」は全て自作することで雰囲気を出していたが、こっちは既存の音楽素材を極限まで有効活用している。特にタイトルのボーカル入りBGMの世界観とのマッチ具合はすさまじく、このゲームのために作られたんじゃないかと錯覚するほどである。個人的にも気に入ってyoutubeでよく聴いている。曲が良いゲームはクリア後にも曲を聴くことで色々思い出に浸れるのがいいところである。

うさみみボウケンタン

 ガチの問題作(当社比)。俺はこのゲームが好きだが、これをゲームとは呼びたくない。

 メカニカの前作ということで買ったのだが、ゲームシステムの根幹である「クイズバトル」が面白くない。本当に面白くない。
 このゲームはundertaleパロなのだが、RPGの戦闘の代わりにクイズをする、ということになっている。このクイズが本当に虚無で、高度なリアル知識を要求されやたら難しい上にリトライしても問題は一切変わらない。つまりこちらがやることは何回もリトライして答えを覚えるか、攻略サイトを見ながら脳死で答えを選ぶかだけである。ゲーム性というものがおよそ存在しない。しかもボス一人ごとに二十問くらいある。ダルすぎる。
 クイズの出題傾向は相手キャラクターの特徴に由来するということになっているのだが、半分くらいのキャラはなぜその問題を出してくるのかいまいち分からない。特にイロハ、グラブラは謎。なんで計算問題とかタイピングゲームが彼女らのキャラ表現になるのだろうか。クイズバトルはゲームとしてつまらないだけでなく、ゲームを通しての演出という面でもスベっている。
 こういう失敗したアンテパロを見かけるたび、Tobyfoxはクソほど性格が悪いがゲームクリエイターとしては一流なんだなという気持ちが湧いてくる。

 ……とこのようにクイズバトルに関してはボロクソ言ったが、一方シナリオ、というかヒロインであるうなさかに関してはもう死ぬほど好きである。超ぶっ刺さった、本当に助けて欲しい。この点では完全にメカニカを超えている。
 メカニカ同様、ゲーム一作を通じて一人のヒロインと関係を深める工程はたまらないし、トゥルーエンドの演出ではもうどうしようもないくらいしんどかった。逆張りの塊みたいなゲームのくせに、うなさかという異世界ヒロインに関してだけは恐ろしいほど真摯なのは卑怯ではないだろうか。特に「大人うなさか」、あれは許されない。
 「メカニカ」「うさケン」のせいで性癖が完全に破壊され、うさぎ耳という属性が前より明確に好きになってしまった。このせいでアークナイツのプレイにも支障が出ている。俺はどうすればいい?助けてくれうなさか……

 全体的には「クイズバトルさえなければ神ゲーだった」という感想である。普通のRPGらしい戦闘ありでも『誰も死ぬ必要のないRPG』をやれている作品はこの世に割とある(ex.ミマモロール)し、最初から戦闘ありにするかそうでなければそもそもノベルゲーとかになるべきだったのでは。可能ならノクターンノベルズあたりで出会いたかった。

Glareシリーズ(1more、2、3)

 ポンコツメイド家電にして最高のツンデレヒロイン、グレアさん(このさん付けは敬称ではなく愛称)との交流を描く自由入力式ADV。

 特徴はやはり自由入力というシステムを活かしたヒロインとの会話であろう。コミュニケーションの本質はコールアンドレスポンスということなのか、自分が入力した言葉に反応してくれるというプロセスを経るとグレアさんへの愛着がどんどん深まっていく。
 しかしちょっとでも形容詞が抜けたり変換ミスしたりすると一切反応してくれない、そもそもゲームを進めるための単語を発見するのが難しいなどこの手のゲームの悪い部分も搭載しており、そこはちょっと辛い。1と3はまだ何とかなるが、2はフラグ管理含め作者の脳内当て感があり、攻略サイトなしでのプレイは苦行。
 だが、自由入力式だからこそ出来る演出にもしっかり力が入っており、多少のめんどくささを押しても向き合う価値がある。特に1ラストをノーヒントで突破した時の感動は筆舌に尽くしがたい。

 そして何よりグレアさんが可愛い。めちゃくちゃドラマティックな設定で殴ってくるという感じではないのだが、「こいつと一緒にいたら楽しいだろうな……」と思わせる言動でじわじわと好感度を上げてくる。ねっとりとしたガチ恋が発生するタイプ。
 あとメカニカの項でも言ったが、ヒロイン一人をひたすら攻略するというゲームにはそれだけで大きな価値があると思っている。しかも今回は三作分なので深まる関係も三倍。たまらねえぜ。
 特に3でのユーザー(主人公)との関係は非常に切なく、自分好みだった。中学校あたりで習ったと思うが、人間との関係に悩む人ならざるものから摂取出来ない栄養素というものがこの世にはある。グレアさんはかなり人間寄りの存在であるものの、SF系ヒロインらしい役割をしっかり果たしていると思う。
 
 Glareシリーズに次回作があるのかどうかは分からないが、関連作品はいくつかあるらしいのでそのうち触ってみる予定。できれば本編の続きが欲しいところだが。

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