見出し画像

ワークショップは世界をやわらかくする

青山学院大学のワークショップデザイナー(WSD)育成プログラムで学んだことの記録。前回の記事では、なぜ私がWSDを目指すのかその理由を書いた。今回は、「ワークショップとは何か」をワークショップを知らない人に説明することに挑戦してみる。

私がワークショップとは何かを伝えたい相手は息子たちだ。14歳になった頃の息⼦(今はまだ6歳と1歳)を想像しながら、彼らにどう説明するかを考えてみた。

■ワークショップとは「世界をやわらかくする対話の場所」

14歳になったキミへ。
⽂化祭の準備は楽しいかな?クラスのみなでアイデアを出し合って、⼀つのものを作り上げていく。時には意⾒が違って困ることもあるけど、その違いがあるからこそ、最後はもっと⾯⽩いものができりするよね。そんな体験の中に、「ワークショップ」という学びの形が隠れているんだ。お⽗さんが⼤切にしているワークショップという場所について話してみたい。

まず、ワークショップは普通の授業や会議とは違うんだ。教科書の答えを覚えたり、先⽣の話を聞いたりするだけじゃない。みんなで体験して、考えて、新しい発⾒をする場所なんだ[1]。従来の学校では、「できる」ようになることや「わかる」ことが⼤切にされてきた。でも、ワークショップでは、それに加えて「分かち合う」ということも⼤切なんだ[2]。⼀⼈⼀⼈の考えが混ざり合って、誰も思いつかなかったアイデアが⽣まれていく。例えば、「理想の学校」を紙に描くワークショップがあったとするね。そこでは、「こうあるべき」という正解はないんだ。描くことを通じて、学校について分かち合うことで深く考えることができる。ここがポイントで、何かを「作る」という活動を通じて、⼤切なことを「学んでいる」んだ[3]。

ワークショップでは、みんなが安⼼して参加できる場所、先輩も後輩も、先⽣も⽣徒も関係ない場所を作ることが⼤切なんだ[4]。みんなが対等な⼀⼈の⼈として出会い直すんだ。君が部活で感じる「先輩への緊張」とか、「後輩だから遠慮」みたいな壁がない。だから、⾃分の考えを⾃由に⾔える。そんな場所を作るためには、安易に相⼿の⾔葉を受け⼊れるのではなく、相⼿に深い興味をもって⾔葉を受け⽌めることが必要なんだ。また、時にはちょっとした遊び⼼のある⼯夫で、関係性をやわらかくすることもできるよ。そんな場所で⽣まれる「楽しさ」や「喜び」が、学びをより深いものにしてくれるんだ[5]。

そうは⾔っても、⽂化祭の準備の時には、意⾒がぶつかってうまくいかないこともあったかな?確かに、みんなで決めごとをして進むのは簡単じゃないんだ。でも、その「わかりあえなさ」こそが⼤切な出発点になるんだよ。みんなが最初から分かり合えるわけじゃない。でも、だからこそ対話が必要になる。そんな時に、何が正しいかを⾔い争ってもうまくいかないことは想像できるかな。⼈と⼈との関係性の中で、できることとできないことは変わってくるんだ。⼀⼈⼀⼈の違いを認め合い、⼩さな⼯夫を重ねることで、新しい可能性が広がっていく。君の当たり前が誰かの発⾒に、誰かの当たり前が君の発⾒になる。その過程で、その⼈を再発⾒して、物事をなんとか前に進めていくことができるんだ[6]。その関係性は、ワークショップが終わっても続いていく。そうやって、少しずつ世界はやわらかく変わっていくんだ。

実は、ワークショップは特別な場所だけじゃないんだよ。今君としているような対話だって、次の三つの要素があればワークショップになるんだ。まず、みんなが対等な関係であること。次に、何か共通の体験をすること。そして、その体験から新しい気づきが⽣まれること[7]。これらが揃えば、2 ⼈でも3 ⼈でもワークショップになるんだ。だから、⽇常の中にも、たくさんのワークショップが隠れているんだよ。

これからも君とは、いつでも新しく出会い直しながら対話ができる。そして、君⾃⾝も友達や仲間と、ちょっとした「ワークショップ」を作っていってほしい。それが、世界をやわらかくする、⼤切な⼀歩になるはずだから。

2024年12月

脚注
[1] ワークショップの方法としての定義(参加者が自ら体験し、共同で学び合い、創造するスタイル)
[2] 社会構成主義学習観
[3] ワークショップの構造としての定義(「〇〇を作ることで△△を学ぶ」という活動目標と学習目標の二層構造)
[4] 参加の保証
[5] 参加の増幅
[6] ワークショップの目的としての定義(コミュニティ形成(仲間作り)のための他者理解と合意形成のエクササイズ)
[7] ワークショップデザインの3要素(フラット化、共通体験の創出、気づきのデザイン)


世界はワークショップでできている。

いいなと思ったら応援しよう!