あなた『16歳だった』
16歳だった
味のないガムみたいな味だ
16歳だった
机に伏せてイライラしてた
僕は違うんだ
「頬杖ついて暮らすためには 当てるしかないな。」
語る夢さえ夢がなかった
あー、今日も世界がそっと夜の外灯消した
眠ってる街で朝の夢を見よう
アフタースクール タイムイズオーバー
そこから走り出すんだ僕等
可能性なんていつもゼロに近かった
君は覚えてるかい?
昼が夜でも関係ないのさ
17歳だった
君といつも映画を見ていた
アメリカンパイと
ケヴィン・スミスに
レイチェル・リー・クック
14インチのテレビデオがフレンズ&マイラブ
あー、今日も世界がそっと夜の外灯消した
眠ってる街で踊り続けてよう
アフタースクール タイムイズオーバー
そこから走り出すんだ僕等
可能性なんていつもゼロに近かった
アフタースクール タイムイズオーバー
夜の闇を走るんだ僕等
「帰る場所なんてきっとここじゃないもんな。」 君は覚えてるかい?
アフタースクール タイムイズオーバー
そこから走り出すんだ僕等
可能性なんていつもゼロに近かった
アフタースクール タイムイズオーバー
夜の闇に消えないで君は
帰る場所なんてきっと誰もないからさ
それは覚えててよ
【解説】
高校の同級生が違法物の転売で逮捕された時の曲。
ニュースでも大々的に報道されていて、
他の同級生を通してそのニュースを知った。
「もうあいつは終わったな」
と周りは言っていたけど、
「終わるもなにも俺たちはなんか始まってたのか?」
と思った気持ちを書いた。
詳しい彼との思い出はここに書いている。
https://2youmagazine.com/column/murakamicolumn-5/
今では学生時代を振り返り、
輝かしい思い出に溢れているが、
当時のあの生活を一言でいうと
「味のないガムみたいな味なのかな」
と思った。
お金はないけど時間だけあって、
もうガムの味はないけど
暇だから噛むしかないみたいな。
何かあると
「子供じゃないんだから」
と言われて、
またある時は
「まだ子供なんだから」
とも言われる。
理不尽極まりない。
そして日々変わり映えのしない
毎日を鬱陶しくも思うが
特に何もしないで、
とにかく血気盛んなんで
何かにずっとイライラしている。
語る夢も本当に夢がなくて、
「楽して稼ぐには発明で当てるしかないな」
とか、
そんなことを話しては過ごす日々だった。
17歳でアルバイトで貯めたお金で
1人部屋に
オリオンの14インチのテレビデオを買った僕は
この逮捕された彼とは毎週水曜日になると
近所のレンタルビデオショップで、
旧作が10本1,000円で借りられた為、
「お互い5本ずつ」という決まりで
学校が終わってから、
毎週のようにレンタルビデオショップに通っていた。
夜の闇を走っていたのは
その帰り道の思い出。
僕の好みはアメリカの青春映画か、
コメディの映画、
あとはなんかオシャレそうな
ジム・ジャームッシュとか、
ヴィンセント・ギャロとか、
永瀬正敏とか浅野忠信とかが出てた
ミニシアター系の映画をよく観ていた。
彼はギャング映画とか、
SFとかファンタジーが好きだった。
映画『アメリカンパイ』、
ケヴィン・スミス監督と
レイチェルリークックはその時の思い出からきている。
周りにも映画は共有していたので、
クラスでも
『アメリカンパイ』の登場人物のセリフや
ケヴィンスミスのサイレント・ボブの真似をしたりしていて、
振り返ると
不思議な田舎の高校生だったとは思う。
レイチェル・リー・クックは本当に大好きだった。
『シーズオールザット』
『ジェシーアンドザプッシーキャッツ』
は何度も見たし、
NEW FOUND GLORYのMV『Dressed To Kill』は今でも観てる。
ちなみに
明日、照らすで使っているSGの初期は
ただ
レイチェルリークックとだけ書かれた
手作りのステッカーを作って、
ギターのフロントに貼っていた。
しかし段々バンドが真面目な方向性になるにつれて、
剥がしてしまったが、
よく見るとそこだけ塗装が剥げていて、
その名残は今も残っている。
愛知県では学校が終わった時間を
放課後とは呼ばなくて、
授業と授業の間の休憩時間のことを
『10分放課』とかそういう意味で使っていて、
僕らも普通に学校が終わったらとか
授業後とかで呼んでいた。
そういう育ちなので、
やっぱり学校が終わった事を言い表すのに
放課後っていうのが違和感があって、
アフタースクールという英語に変えた。
あとは何となく響きが合いそうで、
意味に合いそうな
タイムイズオーバーという単語を並びで入れた。
こういういきなり出てくる英語は
とにかくベタな方がいいと思ってる。
本人がこの曲を聞いたかどうかは
確認のしようがないけど、
あんな学生だった
俺たちの可能性なんて多分全員がゼロで
だから頑張ってきたんじゃないか、
今回のことで不貞腐れて
闇にさえ落ちなければ、
周りがどう言おうが、
お前はまだ全然大丈夫だよ
という彼へのメッセージの曲ではあった。
タイトルの元ネタは
日本の屈折した青春小説の代表
『十九、二十』の作者・原田宗典さんのエッセイ集『17歳だった』より。
『十九、二十』みたいに
とんでもなく暗い話かと思って読んだけど、
作者が違うくらい
とびきり明るいエッセイで本当にびっくりした。
ちなみに本人には聞いてないけど、
クリープハイプの『二十九、三十』も
世代的にも
タイトルの漢数字表記を見ても
元ネタは原田さんだと思う。