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新入生より俺が読め。学術系文庫100

新入生は可能性の爆発である。君たちは金と学問をおさめさえすれば何してもいい四年間を過ごせることになっている。無限にも等しい選択肢の何を選び何を無下にするかは君たちの自由であり、自身で下した決断に何も臆することはない。

対して社会人たる俺たちの可能性は爆縮の一途を辿っている。
俺たちは可能性の原石を見つけると勝手に期待し、それが子供であれ新入生であれ藤井聡太であれ大谷翔平であれ口を出さずにはいられない病気に罹患している。
それは俺たちが日々目減りする選択肢にほとほと嫌気が差しているからであって、可能性の原石に何かアドバイスすることで自身の選択を慰めているのだ。

他方で、俺たちが老いさらばえた年長者に望むのは、若者の可能性を狭めるような真似はするなということである。金は出し、口は出すな。間違っても若者から搾り取った税金で老人を肥させるような社会にしてはならない。悲しいかなあまり期待しない老人に唯一期待することは、黙って金を出せという恫喝になってしまった。

しかし薄々勘づいていることだが、俺たちもいずれ老いさらばえる。すると当然のように口は出すが金は出さない年長者が出来上がることだろう。あとは死ぬ可能性しか残されていない老人は将来の希望を勝手に若者に託す。期待された当の若者はアドバイスを聞くわけもなく、黙って金を出せとしか思わないという最期だ。

そんなオチを迎えないために本を読んで賢くなろう──なんていうことはない。
みんなは好きに老いさらばえればいいし、俺は読みたい本を勝手に読む。新入生が本を一冊も読まずドラッグとセックスに明け暮れても社会は困るが俺は構わない。以下に挙げた100冊は俺が10年以内に読みたい学術系文庫をまとめたものである。


岩波文庫 15冊

『意識と本質』井筒俊彦
『西洋哲学史』A・シュヴェーグラー
『大衆の反逆』オルテガ・イ・ガセット
『中国史』宮崎市定
『超国家主義の論理と心理 他八篇』丸山眞男
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』マックス・ヴェーバー
『世論』W・リップマン
『共同体の基礎理論 他六篇』大塚久雄
『忘れられた日本人』宮本常一
『精神の生態学へ』グレゴリー・ベイトソン
『統辞構造論』ノーム・チョムスキー
『詩学 / 詩論』アリストテレス, ホラティウス
『文学とは何か』テリー・イーグルトン
『市民の反抗 他五篇』H.D.ソロー
『精神の危機 他十五篇』ポール・ヴァレリー

岩波現代文庫 10冊

『文化と両義性』山口昌男
『なぜ私だけが苦しむのか』H・S・クシュナー
『物語の哲学』野家啓一
『鎖国と開国』山口啓二
『ロールズ政治哲学史講義』ジョン・ロールズ
『ゆたかな社会』J・K・ ガルブレイス
『時間の比較社会学』真木悠介
『脱常識の社会学』ランドル・コリンズ
『定本 日本近代文学の起源』柄谷行人
『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ

講談社学術文庫 15冊

『遊びと人間』ロジェ・カイヨワ
『語りえぬものを語る』野矢茂樹
『荘子の哲学』中島隆博
『西洋哲学史』今道友信
『道徳感情論』アダム・スミス
『知的生活』P・G・ハマトン
『唯識の思想』横山紘一
『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』カール・マルクス
『世界大恐慌』秋元英一
『群衆心理』ギュスターヴ・ル・ボン
『レイシズム』ルース・ベネディクト
『美学』アレクサンダー・ゴットリープ・バウムガルテン
『記号論1』ウンベルト・エーコ
『ソシュールを読む』丸山圭三郎
『日本文学史』小西甚一

ちくま学芸文庫 15冊

『相対主義の極北』入不二基義
『人間の条件』ハンナ・アーレント
『意味とエロス』竹田青嗣
『現代思想としてのギリシア哲学』古東哲明
『心の仕組み』スティーブン・ピンカー
『知的トレーニングの技術』花村太郎
『責任という虚構』小坂井敏晶
『宗教生活の基本形態』エミール・デュルケーム
『入門経済思想史 世俗の思想家たち』ロバート・L・ハイルブローナー
『クルーグマン教授の経済入門』ポール・クルーグマン
『社会学的想像力』ライト・ミルズ
『グラモフォン・フィルム・タイプライター』フリードリヒ・キットラー
『限界芸術論』鶴見俊輔
『着眼と考え方 現代文解釈の基礎』遠藤嘉基, 渡辺実
『日本文学史序説』加藤周一

河出文庫 10冊

『史上最強の哲学入門』飲茶
『哲学史講義』G・W・F・ヘーゲル
『知の考古学』ミシェル・フーコー
『シモーヌ・ヴェイユ アンソロジー』シモーヌ・ヴェイユ
『ホモ・デウス』ユヴァル・ノア・ハラリ
『戦後史入門』成田龍一
『服従の心理』スタンレー・ミルグラム
『郵便的不安たちβ』東浩紀
『ベンヤミン・アンソロジー』ヴァルター・ベンヤミン
『ナボコフの文学講義』ウラジーミル・ナボコフ

ハヤカワ・ノンフィクション文庫 10冊

『啓蒙思想2.0』ジョセフ・ヒース
『ファスト&スロー』ダニエル・カーネマン
『習慣の力』チャールズ・デュヒッグ
『千の顔をもつ英雄』ジョーゼフ・キャンベル
『これからの「正義」の話をしよう』マイケル・サンデル
『予想どおりに不合理』ダン・アリエリー
『冤罪と人類』管賀江留郎
『国家はなぜ衰退するのか』ダロン・アセモグル, ジェイムズ・A・ロビンソン
『スイッチ! 』チップ・ハース, ダン・ハース
『禅とオートバイ修理技術』ロバート・M・パーシグ

平凡社ライブラリー 10冊

『思想のドラマトゥルギー』林達夫, 久野収
『西洋古代・中世哲学史』クラウス・リーゼンフーバー
『学識ある無知について』ニコラウス・クザーヌス
『生きる勇気』パウル・ティリッヒ
『無縁・公界・楽』網野善彦
『逝きし世の面影』渡辺京二
『オリエンタリズム』エドワード・W・サイード
『青きドナウの乱痴気』良知力
『文字逍遥 』白川静
『小説の言葉』ミハイル・バフチン

その他文庫 15冊

『ためらいの倫理学』 内田樹 (角川文庫)
『知的複眼思考法』苅谷剛彦 (講談社α文庫)
『そうだったのか現代思想』小阪修平 (講談社α文庫)
『意味の変容・マンダラ紀行』森敦 (講談社文芸文庫)
『マチウ書試論・転向論』吉本隆明 (講談社文芸文庫)
『ソビエト帝国の崩壊』小室直樹 (光文社未来ライブラリー)
『暇と退屈の倫理学』國分功一郎 (新潮文庫)
『本居宣長』小林秀雄 (新潮文庫)
『堕落論』坂口安吾 (新潮文庫)
『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイアモンド (草思社文庫)
『終わりなき日常を生きろ』宮台真司 (ちくま文庫)
『文明の生態史観』梅棹忠夫 (中公文庫)
『アウトサイダー』コリン・ウィルソン (中公文庫)
『失敗の本質』戸部良一 ほか (中公文庫)
『空気の研究』山本七平 (文春文庫)


一部絶版本を含む。

以後、新書、学術単行本、哲学、自然科学、文学、映画など予定。
そのため別カテゴリで扱いそうな本は排除した。

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