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病院で提供されるリハは本当に質が高いのか?
ー理学療法士などリハビリテーション専門職による開業(例えば訪問リハビリステーションなど)を認めた場合、地域偏在が進行し、病院での質の高いリハビリ提供に支障が出る恐れがあることから、病院団体して反対であるー。
これは、2019年4月17日に開催された四病院団体協議会の総合部会(2019年4月17日開催)で確認された方針である(メディ・ウォッチ)。議論すべき点は複数存在する。しかし、そもそも病院で提供されるリハは本当に質が高いと考えて良いのだろうか?その答えは「ノー」というのが私個人の回答である。
病院で提供されるリハの質がすべて高くないとは言えない。しかし、少なくとも質を高めるための仕組み(仕掛け)が脆弱である。その理由は、2つある。
1つは、市場原理が働いていない点である。資本主義経済では、需要と供給のバランスで価値の指標である価格が決定される。ところが、我が国は国民皆保険制度により医療費は一部負担である。また、診療報酬という公定価格により、医療従事者が提供する知識や技術の価格に差が生じない。さらに、情報の非対称性により、リハを受ける対象者がリハの質を判断できない。こうしたことから、リハの価値を高めるための競争が起きにくいのだ。
2つ目は、医療保険制度の課題である。医療保険制度は主にストラクチャーとプロセスに対して報酬が定められている。つまり、アウトカムが報酬を左右する構造ではない。最近はアウトカムを評価する仕組みも一部出現してきたが、その範囲は限られた範囲である。さらに、診療報酬は「◯◯を行なったら算定」という基準で、「◯◯を行わなかったら」減算という基準ではない。こうしたことから、医療保険制度はあくまで最低限の医療を保証しているに過ぎないとも考えられる。
以上のことから、病院で提供されるリハは「最低限の質は保証されている」一方、「ストラクチャーやプロセス」で質を評価している可能性がある。
リハ専門職による開業により、たしかに地域偏在は進行し、病院で従事するリハ専門職が流出する可能性はある。しかし、リハ専門職の知識や技術が市場原理の競争にさらされる機会は間違いなく増加するだろう。その結果、病院で提供されるリハの質が本当の意味で向上する可能性もあると私は考えている。
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