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マシュマロ・パンプキン・ジャム
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かつては言われても屁でもなかった言葉が、
いつからか酷く心に突き刺さるようになった。
かつては言われたら泣き崩れる様な言葉も、
今では何も感じなくなった。
肌を擦るような風が吹き止んでしまった。
代わりに、腹の奥深くに空いた薄暗い穴から黒く重たい、
冷え切った赤子が産み落とされた。
赤子はただ座っている。
何も飲まず、何も食わず、ただ息をしている。
時たま思い出したように嗚咽と共に水銀を吐き出し、
その度に僕は身震いするハメになる。
小雨と雷雨の違いなんて大したもんじゃない。
そう言って、山びこは雨音に掻き消された。
三人と百人の違いなんて大したもんじゃない。
そう言って、少年は処刑台に立った。
田中と鈴木の違いなんて大したもんじゃない。
そう言って、彼女は山田に恋をした。
今と昔の違いなんて大したもんじゃない。
そう言って、僕は目が見えなくなった。
夕陽が地平線に沈む音が聞こえなくなってしまった。
代わりに目の裏側に青い部屋が建てられ、
世界中の抜け落ちた歯が敷き詰められた。
部屋が揺れると無数の歯はジャラジャラと音を立て、
その度に僕は耐え難い耳鳴りに悩まされるハメになる。
モスクワの地を這う有刺鉄線も、
ある日を境に錆びて使い物にならなくなった。
だからという訳じゃないが、僕は無性にピラフを食べたくなる。
そして14時37分を少し過ぎた辺り。
「後11分で到着致します」というアナウンスと共に、
シャンデリアをコンクリートに叩きつけたような電子音が空を掻きむしり、それによっていくつかの雲が消え、
いくらかの少年が死んだ。
僕は教わって通りに右手を上げ、世界の平和を願った。
それでも、肌を擦るような風は止んでしまったのだ。
目配せをしたかのように、世界中の信号が赤になる。
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こんな詩を、高校生の時に書いていた。