選択的夫婦別姓に関するNHK世論調査(2024年5月)は賛成は増えてない
2024年5月のNHK世論調査で、選択的夫婦別姓賛成が62%となり、多数派が賛成になっているということで、いろんな記事でこの数字が引用されている。
選択的夫婦別姓の世論調査、意識調査、アンケートの類は多くあり、信頼度が高いものも低いものもあるが、NHK世論調査の結果ということで信頼性が高いという雰囲気で引用されていることが多い。
本当にこの調査で「選択的夫婦別姓に賛成している人が半数を大きく超えた」と言っていいのか、見ていってみる。
結論
2024年5月のNHK世論調査の「選択的夫婦別姓に賛成62%」は、質問内容的に旧姓使用を望む人も含むものと考えるのが妥当で、2021年内閣府世論調査の結果と変化がない。これをもって「半数以上が選択的夫婦別姓に賛成の証拠」とするのは極めて欺瞞的である。
2024年5月のNHK世論調査の質問内容をチェックする
冒頭のリンクの記事はNHKが最初にニュース記事として出した記事で、本文中にははっきり
と記載されている。
では、この世論調査の元データを見てみよう。
こちらのページの中にリンクがある、■単純集計結果はこちら(135KB)というところからPDFが開ける。
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20240508_1.pdf
選択的夫婦別姓に関すると思われる質問部分は
この「第7問」の文章
「第7問 今の法律では、結婚した夫婦は同じ名字を名乗ることになっています。これに関しては、この制度を維持 すべきだという人がいる一方で、夫婦でも別の名字を選べるようにすべきだという人もいます。あなたは、別 の名字を選べることに賛成ですか。それとも反対ですか。」
「選択的夫婦別姓」という単語を使っていない。
しかも、旧姓使用と区別しきれない、ふわっとした聞き方になっている。
賛否を問う質問はこれのみで、あとはその賛否を選んだ理由を質問している。
2021年内閣府世論調査の結果と上記NHK世論調査を比較
ここで、2021年(令和3年)に行われた、内閣府の世論調査の選択的夫婦別姓に関する結果を見てみよう。
この質問の場合の「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した方がよい」というのは、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい、という選択肢があるのにこちらを選んでいるという点を考えれば、冒頭に記載した2024年のNHK世論調査の回答と比較するなら「選択的夫婦別姓制度に反対 27%」と同じ意図だろう。
パーセンテージもほとんど同じである。
つまり、選択的夫婦別姓に関する世論は、おそらく2021年から2024年ではほとんど変化しておらず、旧姓使用を含めた上で別姓が使用できるとよいと考えている人(選択的夫婦別姓制度の導入を求めているわけではない人も含む)が6割強いる、と考えるのが妥当と思われる。
まとめ
2024年5月のNHK世論調査の質問と結果からは、旧姓使用ができればよい人と選択的夫婦別姓制度を求める人の割合は不明であるが、この6割強という数字を「選択的夫婦別姓制度に賛成」として使うのは不誠実と考えている。
選択的夫婦別姓制度を推進しようとする人たちは、母集団をごまかしたり、質問を工夫して結果をいじったりが多く、信用できないという印象がある。
その不信感こそが、制度成立を進ませない一因ではないだろうか。