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隠者の食卓 ドクダミのグリーンカレー、その他ドクダミの隠者風レシピいくつか【週末隠者】

 食に関する話題で議論になることが多いのが「臭いの強い食べ物」についてです。私自身はもともと「食」に対する好奇心が強かったこともあり、過去にくさやの干物、鮒寿司、ホヤの塩辛、皮蛋ピータン、熟成チーズといろいろ試して、さほど抵抗も感じないまま、どれもおいしいと思いました(注1)。まだ食べたことのないドリアンや韓国のホンオフェ、イタリアのカース・マルツゥ、北欧のシュールストレミンクスなども、機会があればいつか試してみたいと考えています。

注1:数少ない例外が、オランダ人の大好きなお菓子「ドロッペン(ドロップ)」です。ドロップといっても日本でいう飴玉のドロップとは全く別物で、おそらく北欧の「サルミアッキ」などと同系統の食べ物なのでしょう。これについては機会があれば改めて触れます。

 そうした食べ物でよく話題に上がるものの一つに「パクチー」(コエンドロ、コリアンダー、香菜シャンツァイとも)があります。エスニック料理定番の薬味ではあるものの、一方で強い臭気があることから苦手とする人も多いようです。もっとも個人的には別に嫌いではなく、エスニック料理店で「パクチーは抜きますか?」と訊かれた時も「抜かずにむしろ多めに入れて下さい」と答えるのですが、やはり流通が少なくお高い素材なのか、あまり多めに入れてもらえないのが残念です。
 さて、今回はパクチーの話ではなく、いおりの庭の一角に生えているドクダミの話です。こちらも臭気の強い植物として有名で、パクチーの臭気がドクダミに例えられているのをよく目にします。実際に私自身も、初めてパクチーを食べた時にまず思い出したのがドクダミの臭いでした。両者の臭いが同じ成分によるものなのか調べてみたものの、結局よく分からずじまいでしたので、詳しい方がおられましたら教えて下さい。

【写真1】ドクダミの花と葉

 ドクダミ【写真1】はむしろ薬草としての利用が有名で、実際に「十薬じゅうやく」という生薬しょうやくなのですが、いちおう山菜として食用に利用されることもあります。一方で繁殖力が強く地下茎を四方に伸ばして広範囲にはびこるためしばしば雑草扱いもされます。ともあれ利用できるものは有効に利用したいので、ドクダミについても、特にパクチーの代用として使うようなレシピがないか考えてみました。
 ここで注意を一つ。薬効があるということは当然何らかの副作用もあるということです。特に、薬草茶や薬味としての少量摂取ではなく、山菜としてまとまった量を食べる場合は気をつける必要があります。ドクダミの場合、高カリウムのため腎不全などで高カリウム血症を起こす危険のある方はご注意下さい。また、体質によっては光過敏症を起こすこともあるようです。


1.ドクダミのグリーンカレー

 まず、パクチーの代わりにドクダミを使ってタイ風のグリーンカレー(に似た何か)を作ってみることにしました。といっても北海道の田舎ではエスニック料理の材料が手に入りにくいため、ココナツミルクとナンプラー以外は身近にある食材(なるべく庵の畑や周囲の山野から手に入る材料)で代用することにします。結果として本来のグリーンカレーとは似て非なるものになってしまった可能性もありますがご容赦下さい。
 まず、みじん切りのタマネギとニンニクを鍋で炒めます。十分に炒めたら日本酒(白ワインでも可)を注ぎ、沸騰させながらローレル、クローブ、コショウ、セロリの葉、刻んだショウガなどのハーブ類を入れます。グリーンカレーに付き物のコブミカンの葉がなかったため、同じミカン科のサンショウの葉を入れてみましたが、こちらは代用になったか怪しいところです。

【写真2】

 しばらく沸騰させたあと、ココナツミルクを注ぎ、さらに具を投入します【写真2】。肉は鶏肉の骨付きの手羽元、辛みは青唐辛子を刻み込んだものを入れました。この時は季節が夏だったためナス、インゲンマメ、ピーマンといった夏野菜も具に使います。そのほかキノコ類(写真ではブナシメジ)やタケノコ(ここではメンマで間に合わせています)なども入れて具だくさんに仕上げます。

【写真3】

 ドクダミの臭い成分は揮発性のため、早く入れすぎると臭いが飛んでしまうのではないかと考え、少し遅めに入れることにしました。他の材料に一通り火が通ってから刻んだドクダミを加え【写真3】、さらに塩とナンプラーで味を調えます。あとは材料が溶けるまでとろ火でじっくり煮込んで完成です。

【写真4】

 ほぼ思いつきと当てずっぽうで作ったものの、食べてみると一応それらしい味には仕上がりました【写真4】。読者の皆さんがご自宅で作る場合、ネットのレシピなども参考にしながらお好みでアレンジしてみて下さい。私自身はココナツミルクも豆乳あたりで代用できないかと考えていますが、そこまで行くともうグリーンカレーとは呼べないような気もします。

2.スペアリブのドクダミ風味

 こちらは一種の薬味・香り付けとして、パクチーの替わりにドクダミを使った食べ方です。
 普通のスペアリブを普通に塩コショウなどで味付けし、フライパンや中華鍋で普通に焼きます。火を止める直前に刻んだドクダミを投入し、火を止めたあと蓋をしてしばらく蒸らします。蒸らすことでドクダミの臭いがスペアリブに移り、普通とはちょっと違うエスニックな味わいになります。
 このほか豚の角煮などに薬味として添えるのも良いでしょう。ただドクダミやパクチーの臭いが苦手な人にとってはわざわざ肉に臭気をつけて食べるようなものなので、無理してこの食べ方をする必要はありません。普通に料理して普通に食べるのが無難です。

3.ドクダミの天ぷら

 薬味としてではなく、純粋にドクダミだけを食べる料理もあります。この「ドクダミの天ぷら」はその中でも比較的知られた食べ方らしく、京都の有名な寺院の薬膳料理などでも提供されているとのことです。

【写真5】

 材料がドクダミというだけで作り方は特に普通の天ぷらと変わりありません。高めの温度でからっと揚げるのがコツのようです【写真5】。やや筋っぽさとわずかな酸味を感じますが、前出の通りドクダミの臭い成分は揮発性なので、油で揚げるとだいぶ臭いは薄らぎます。
 実は私にとってはこれが初めて口にしたドクダミ料理で、確か小学生か中学生の頃、薬草関係の図鑑を読んでいてこの食べ方を知り、近所に生えていたドクダミを採ってきて母親に作ってもらったのが最初でした。もっとも、私と母親は「意外においしい」、父親と弟は「まずい」と家族の中でも意見が分かれましたので、やはり好みが出る食べ物ではあるようです。

 ともあれドクダミもけっこう色々な食べ方ができることは分かりました。「野草を摘んで食べる隠者の生活」も、ただ辛気臭いだけのものではなく、やり方によっては以外にバラエティに富んだ味が楽しめるものなのかもしれません。今後も色々試してみて、折に触れて報告していくつもりです。

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