隠者の竈(かまど) 地下室のロケットペチカ(使用編)【週末隠者】
過去3回にわたって構想と試験を繰り返した末、地下室のロケットペチカは一応完成しました。これまでの経緯はこちら。
※試作0号機構想編
※試作0号機製作編
※1号機製作編
以下、実際の使用風景を交えながらロケットペチカの使い方を説明します。ただ、これは私が聞きかじりの知識と思いつきの設計で作ったもので、一般的なペチカの使用法とは異なっているかもしれないことをお断りしておきます。
前回製作風景をお見せした1号機は、その後しばらく使ううちに薪ストーブに寿命が来て穴が空きました。現在は、燃焼部分を同じく鉄板製で炎が見える窓付きの薪ストーブに替えてペチカ本体も少し大型化した2号機【写真1】を使用しています。このため以下の写真と体験談は1号機、2号機のものが混在していますが、構造と使用法は基本的に同じです。
まず、薪ストーブに燃料をセットします【写真2】。以前も書いた通り、空気が通る隙間を空けながら、燃えやすいものが下に来るように積み重ねていきます。
煙突に通じるダンパーを開き、煙突に通気します【写真3】。ダンパーは使用後には閉めておかないとペチカに溜めた熱が煙突を通じて外に逃げて行ってしまうようです。
煙突直下に設けた焚口で火を焚き、ペチカの中に煙突へと向かう空気の流れを作ります【写真4】。実はこの部分はロケットストーブと同じ構造になっており、火を焚くことでかなりの吸引力が生まれるようです。煙突が触れない程度に熱くなったら煙突へと向かう上昇気流が発生しているということですので、蓋(私のペチカでは半分サイズの耐火レンガ)をして焚口を塞ぎます。
調べたところ通常のペチカでは必須の手順とされているようですが、ロケットストーブの吸引力があればわざわざ事前に空気の流れを作る必要などないのでは、と考え、この手順をすっ飛ばしていきなりストーブの中で火を焚き始めたところ、不完全燃焼状態の排気がペチカ側に抜けずにストーブの焚口から吹き出してきて地下室全体に充満し、煙くて目も開けていられない状態になりました。やはり事前に空気の流れを作っておくのは大切なようです。
私自身は焚き付けとして新聞紙を長くねじったものを利用していて、だいたい新聞紙1枚か2枚を燃やしきる程度が煙突を温める目安になります。とはいえ毎回ストーブとは別にここで火を焚くのも面倒なので、ガストーチかバーベキュー用の着火剤あたりで手っ取り早く煙道内を暖めるか、いっそペチカを作る際に電熱線か何かをこの部分に仕込んでスイッチ一つでプレヒートができるようにしてしまうのも一つの方法かもしれません。
煙突が温まり焚口を塞いだら、空気の流れが続いている間に薪ストーブに点火します【写真5】。しばらくは火吹き竹や火掻き棒を使って炎を大きくし、炎がストーブの内部全体に広がったら頃合いを見つつ太い薪を投入していきます。
煙突から上がる煙【写真6】。左が2次燃焼がうまく行っていない不完全燃焼時の不透明な煙、右(ほぼ透明)が2次燃焼が進んでいるときの完全燃焼に近い煙です。
燃焼中【写真7】。薪の投入口から奥をのぞくと、薪から上がった炎がヒートライザーに向かって渦巻きながら吸い込まれていくのが見えます。この状態になるとペチカからゴーッという低い音が持続的に聞こえるようになり、内部で2次燃焼が起きていることが分かります。
通常の薪ストーブでは、ある程度薪を投入した後はストーブの内部を熾火の状態にしてじんわりと周囲を暖めるもののようです。しかし私のロケットペチカでは火が熾火になるとヒートライザー内の2次燃焼が止まってしまい、ペチカ本体への蓄熱も進まなくなるため、薪を次々に投入してフルパワーで燃やし続けます。それでもペチカへの蓄熱は想像以上にゆっくりで、2時間ほど燃焼を続けても薪ストーブに接続しているヒートライザーの部分が熱くなる程度で他の部分はほんのりとしか暖かくなりません。
いったいどれだけ燃やし続ければペチカ全体が熱くなるのかと思い、ある日、他の用事をこなしながら小まめに薪をくべて2次燃焼が持続するよう焚き続けたところ、煙突直下のレンガが触っていられないほどの熱さになるまでに7時間かかりました。実に気の長い暖房器具ですが(それを試すのも我ながら気の長い話ですが)、もともとペチカ本来の使い方としては、冷え切った状態で1から焚き始めるのではなく、前回の余熱がまだ残っているうちに追加で火を焚いて熱を補充することで暖かさを持続させるもののようです。このあたり週末を中心に短期間滞在するだけの2拠点生活とは相性が悪そうで、本格的にペチカを使いこなすのは退職してフルタイムの隠者になってからかもしれません。
これだけ長時間焚き続けると暖まるのはペチカだけではなく、地下室の薪ストーブから3mほど離れた場所で最初は6℃だった室温が最終的に15℃まで上昇し、その晩はけっこう冷え込んだにもかかわらず翌朝も室温10℃を維持していました。さらに、地下室の上にある台所や私の寝室も、床下が暖まったためか灯油ストーブをほとんど焚かなくてもさほど寒さを感じませんでした。地下室を暖めれば上にある部屋への冷え込みも緩和されるのではという最初の考えは正しかったようです。
ただ、以前、寝ているときの床下からの冷え込みに耐えかねて地下室で灯油ストーブ(昔ながらのポータブルタイプ)を焚いてみたものの地下室の室温さえ全く上がらず冷え込みも解消されなかったことがあったので、今回地下室全体を暖めることができたのはストーブの強い火力があってのことでしょう。薪ストーブの実力もなかなか侮れません。
薪をくべ終えてしばらくすると2次燃焼も止まり、ストーブの中は熾火になってきます。充分に空気に触れるよう火掻き棒で平らにならし、あとは自然に消えるのを待ちます【写真8】。ペチカについてのネット記事で「熾火になったらすぐにダンパーを閉じて蓄えた熱が煙突に逃げるのを防ぐ」という記述を見かけましたが、私の場合は設置場所が密閉状態の地下室(注1)で一酸化炭素中毒が怖いため、ダンパーは熾火が消える寸前まで待ってから閉じるようにしています。
注1:正確には半地下室で窓も外への戸口もあるとはいえ、暖房のため閉め切れば通気は小さな換気口からのみになります。
以上、私が我流でやっているロケットペチカ操作法です。参考にしていただければ幸いですが、あくまでも我流のため、他に正しい操作法があるならそちらに従ってください。次回は最終的なまとめとして、薪ストーブでの料理や熱の利用、ロケットペチカの製作や使用の中で分かった問題点や注意点について報告します。
※総括編