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「模倣」してたら転職決まった

まずは、転職活動を終えて

 先月まで私は転職活動をしていたが、外資系ITベンダーのプリセールスというポジションのオファーをいただいた。コロナが影響で見送られる可能性もあったが、結果的に年収も大きく上げることができた。

私の前職はSIerのエンジニアだったが、どのようにプリセールスという転職を成功させることができたか?私が勝手に尊敬している凄い先人たちの手法を転職活動に用いたからだ。先に、お世話になった方々の書籍や動画を紹介させていただく。

書籍:
イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」 
 著:安宅和人 氏


世界No1プレゼン術 
 著:澤円 氏


転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方 
 著者:moto 氏


動画:
・エバンジェリストが直伝 デモンストレーション テクニック 
 話者:西脇資哲 氏

この方々がいなければ、私の転職活動は間違いなく失敗していた。皆様への感謝と、自身の経験の棚卸のため、プリセールスになるまでの道のりをnoteに掲載する。

この記事が、プリセールスを目指す誰かの助けになれば、幸いだ。

面談について

1.職務経歴書の書き方
 職務経歴書で最も重要な事項は再現性だと思う。まず、motoさんの職務経歴書の書き方を参考にさせていただいた。特に参考としたのは、いかに自分の再現性をアピールするかだ。

自分の軸をずらし、業務環境が変わっても前以上のパフォーマンスを発揮できるか、これを面談者は確認したいのだ。

そのため、自分がどんな環境で、何を目標に、何を課題ととらえ、どんな行動をしたか、達成したことは何か、正確に記載する事から始めた。この詳細さがリアルさを伝えるのだと思う。

私は前職でシェアNo1のWebトラッキングツールを扱うエンジニアだった。また、このデータを活用し機械学習モデルを顧客に導入するコンサルタントも兼ねていた。

しかし、機械学習モデル自体の概念が難しく説明の難易度が高い。よって、いかにお客様に説明するかに骨を折った。が、辛くはなかった。この経験がプリセールスというポジションにマッチしていたのだと思う。

自分のミッション、そしてどんな課題と戦ったかを記載することで書類通過率は90%を超えていたと思う。

2.面談中に何を話すか?
 面談では基本的に職務経歴書の内容を話せばコミュニケーションに困ることはなかった。もちろんスキルの棚卸や整理は必要だが。一点、私が意識して用いた言葉は、For Example(例えば、)だ。

聞かれたことについては、自分の経験ではこうやった、自分だとこうする、など具体的なアクションを話したくらいだと思う。自分の意見を述べることは知識の保有と、自らが受け身でないことをアピールできるので、すべての回答に「例えば」を加えることはよいのではないかと思う。

資料作成について

3. 情報収集:
 面談通過後、次に課せられたのは企業製品を用いたデモプレゼンだ。提案する企業、抱えている課題、解決策を自由にストーリーとしてまとめ、製品デモをおこなうものだ。

意思決定者に導入を決意させるつもりで製品を説明するし、もちろんデモ環境は自分で用意する必要がある。これを何の情報もなしに行うのは難しい。よって以下の順に情報を集めていった。

3-1.事例の収集
 まずは、ホームページから製品の事例を集めた。事例はある課題に対してソリューションを提供し、どう解決したか、そしてどの程度効果が現れたかが記載されている。これを、Excelに課題・ソリューション・効果の項目に分けてまとめた。

3-2.課題の分類
 次に課題をカテゴリごとに分けた。例えばこの事例は業務効率化の課題、こちらはセキュリティの課題、などである。これにより課題ごとに事例をまとめることができる。

3-3.共通課題の選定
 ここまで行うと、ある課題カテゴリに事例が集中していく。出現頻度が多い課題は多くの会社にとって共通の課題であり、ニーズが高く、重要と考えられる。

安宅氏は書籍の中でイシュー、つまり「解くべき問題を見極める事」の大切性を説いている。どの問題を解くのか、また解けるのかを判断することが重要だ。この共通課題をピックアップしてプレゼンのロジックを考えればよい。

4.ロジックツリーの構築
 いきなりプレゼン資料を作ると、誰にも腹落ちされない資料が出来る。そこでロジックツリーを使用する。ロジックツリーには以下の型と使用法がある。

4-1.「Whyの並べ替え」で課題を深掘り
 これは最終的に言いたいことを、並列に並べてサポートする形式をとる。そうすると、以下のようにツリー上でロジックが並ぶ。

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課題が構造化されるにつれ、課題の根本原因を理解することができる。
 
4-2.「空・雨・傘」で全体像をデザイン
 こちら最終的に言いたいことを、空・雨・傘というストーリーで支える形式をとる。例えば、以下のような形で構築できる。

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雨の部分は1で作成した課題の深掘りをそのまま適用可能だ。そして、「Whyの並べ替え」と「空・雨・傘」を用いると、以下のように全体が構造化されたツリーが出来上がる。

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これがプレゼンの骨格となり、スムーズなストーリー展開を可能にする。ここで最も重要なのは空で、ターゲットへのハッピーな未来が書かれていることが必須だ。

澤さんは、「人は自分事で初めて動く」と書籍の中で語っている。それは自分にとってポジティブな未来が待っているときだ、と述べている。
※ ネガティブな未来を避ける場合も人は動くが、長続きしないらしい。※

よって、ソリューションにはこんな機能がある、というメッセージで終わることは許されない。ターゲットに「こんなに良い未来が待っている」というメッセージを伝えることで人は動くのだ。

5.資料の作成:
 ここからプレゼンテーションの資料を作成していく。既に作成したロジックからストーリーを作成できるので、資料作成ではそこまで悩むことはないはずだ。ただし、人を動かす資料にするためには、いくつか知っておくべきポイントがある。

5-1.人は賢いが無知である
 プレゼンをする相手、つまり観衆はこちらが説明することの知識がないと思うべきだ。それが経営層などITに疎い方々ならなおさらだ。その方々に専門用語などを細かく話してしまうと、理解ができずプレゼンから気持ちが離れてしまう。

ただし、的確にこちらの意図を伝えることができれば、必ず理解してくれる。このように観衆を理解するのがプレゼンのスタートラインだ。

5-2.メッセージドリブンで資料を作る
 人は文字量が多すぎる資料を見ると理解ができず、気持ちが離れてしまう。ある統計では採用率が高い提案書は、1シートあたりの文字数が非常に少ないらしい。よって、基本的には「1シート1メッセージ、そして1画像」を守るとよい。

契約書等の書類は全て記載すべきだが、これはプレゼンテーションだ。理解のしやすさを優先し、不足した部分は口頭で説明すればよい。

5-3.メッセージは人の心に残る核を
 澤さんのプレゼンで「世界を変えたのは伝言ゲーム」、という言葉があった。人は、ハッピーな未来を目指した力強いメッセージを受け取ると、他人にも言いふらしたくなるという。

メッセージが伝播していくことで人に伝わり、人が動く=意思決定につながるのだ。よって、メッセージは共有したくなるコアメッセージ、つまり核の連続であることが理想だ。

プレゼンテーション、デモについて

6.リハーサル:
6-1.リハーサルは必須:
 ここまでで資料の作成は一旦完了している。そして必ずリハーサルしよう。一人で声に出して読むでもよいが、人に説明するのがよい。これにより、プレゼンのロジックエラーに気づけるのだ。

ストーリーの展開に詰まる箇所があったり、人の質問に答えられない場合は、ロジックの磨きこみが甘い可能性が高い。そして、ロジックエラーを見つけてロジックツリーと資料を徐々に修正することを推奨する。 

6-2.デモのプレゼンリハーサルも必須:
 このロジックエラーが無くなったら、デモ環境を構築する。デモ環境の説明は製品によって異なるので詳細は割愛するが、課題を解決するフローを製品を用いて見せればよい。

私は西脇さんのデモ動画を参考にした。詳しくは動画を見てほしいが以下の点に気を付けていた。
 ・何もしていない時間を減らす。つまり、ただ画面が移っているだけの時間を減らし、操作解説や、映っている画面の説明を行う。こうすると、スムーズにデモが進んでいると観衆は思うので、より製品が高機能に見える。

 ・必ずデモ専用アカウントを使う。自分が普段使っているデスクトップやブラウザのアドオンは観衆に見せない。プレゼンやデモに関係ないものは全てノイズだ。理解を阻害してしまう。そのため、新規のアカウントを使用してノイズを無くすこと、理解のしやすさを徹底することが重要だ。

7.本番:
 ここまでくれば、後は練習通りに話すことだけを考える。ストーリーがしっかりしていて、何度も練習すれば問題はないだろう。ただ、以下の準備と認識をしておこう。

7-1.不測の事態に備える:
 本番では必ずと言ってよいほど問題が起こる。セリフが飛んでしまったりPCの電源が入らない、などだ。こうなると発表どころではない。私も最悪を想定し、カンペも用意したしPCも2台用意した。wifiの普通にも備えて、携帯のテザリングも用意した。

これらは、本番発表の不確実性を下げ、保険を用意することで心理的な安心を手に入れることができた。

7-2.質問にはすべて答えられなくてよい:
 これは、澤さんの書籍で書かれていた言葉だ。これだけで安心する人もいるのではなかろうか。まず、プレゼンターが全ての質問に答えるのは無理、という認識でよい。わからないことを無理に答えると、観衆を余計混乱しかねない。大事なのは回答のパターンを持つことだ。判らないことは正直に知らないと答え、逆に「このようにすれば判る」「後で確認して折り返す」など、あくまで観客のためにできることを最大限実施しよう。

転職活動でのNG

 ここまで私のストーリーを書いてきた。ただ、何の失敗もなく転職が成功したわけでない。面接で落ちた会社も複数ある。それはなぜか。

私が思うに「軸がぶれてしまった」ことだと思う。志望動機や業務、今後のキャリアプランなど、面談中にこれらの軸がぶれた企業は必ず落ちた。自分の考えが足りておらず、本当にこの人は入社したいのか、というのを面接官に見破られたのだろうな、と思った。

「絶対この会社に入社して成果を上げる」、これを徹底的に言語化することが最も重要なことなのだろう。

オリジナルよりも、徹底した模倣を

 ここまで見た通り、私が行ったのはほぼ誰かの模倣だ。「ただの人真似だよね。」と言われるかもしれないが、模倣は正直しんどい。
 
先人の思考を忠実に再現するには何度も実践する必要があるし、自分のノウハウにするにはさらに時間がかかる。ただし、確実に成果は出る。質の低いオリジナルよりも、まずは限界まで模倣して成果を高めるのも良いのではないだろうか。