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アナタがいたから: YELLOW FRIED CHICKENz in 2024

開演は押した。特段のサプライズ演出があったわけでもない。でも、「アナタがいたから」、それで良かった。

会場を出て、初めて訪れたZepp Hanedaのロゴを見上げる。22時過ぎの寒空

YELLOW FRIED CHICKENz (YFCz) は、体裁としては「バンド」なのだけど、実質はGACKTが2010年に始めたライブハウス用の演出形態を指すと言ったほうが伝わりやすいかもしれない。2010年に突如始まったYFCzはそれまでのGACKTバンドメンバーと同じ顔ぶれでZeppを中心にライブを実施。2011年には震災直後にメンバーを刷新して再始動を発表。JONとのツインボーカル、LUNA SEAの真矢をドラムに迎えつつトリプルギターを組んだ7人組として仕切り直し、ヨーロッパツアーと国内ツアーを実施。2012年初春に『YELLOW FRIED CHICKENz I』というアルバムを発表するも、その年の7月に解散。
時は流れて2024年、YFCz活動を「5年間限定」で復活すると突如発表。ソロボーカル・トリプルギターでGACKT以外のメンバーは全員入れ替えて一気に世代交代が進んだ。

僕自身のYFCzへの思い入れの話。特に2011年の3月という時期は、大学3年生が終わろうとしていて、就職活動の真っ只中で、3月11日の午後も就活関連でCBT試験を受けていた。ただでさえ就活の期待と不安が入り混じる状況に起きた震災という出来事に、さらに自分がこれから飛び出していく日本社会がどうなるのかって不安が塗り重ねられた真っ只中に立ち上がったのが第2期YFCzだった。

震災は、当時の自分なりに死生について考えさせられるきっかけだった。そんな中、本人たちがバリバリに震災のことを歌ったと宣言するYFCz楽曲は、自分にとってそれまでの音楽とは少し違った響き方をした。生き別れた最愛の人を想い空を見上げる『ALL MY LOVE』、失った仲間との思い出を胸に前を向く『また、ここで逢いましょッ』(MVがavexの出した12年前の低画質のものしか残っていないのが残念すぎる…『また、ここ〜』のMVは津波の被害にあった旧小学校校舎を舞台にしていて良い映像なんだけどね..)などなど…。それまでのGackt作品も生死を扱ってきたけど、その耽美な作風とは違ったこととその時代が相まって、感じるものがあった。

大学4年当時はかなり時間があったので、YFCzのライブも2回行った。横浜BRITZのライブでは自分の目の前にGACKTさんがダイブしてきて右腕を掴んだこともあった。懐かしい。

王道じゃないかもしれないが、唯一発表されたYFCzアルバムの最後に収録されている『NOT ALONE  「キミは一人じゃない」』が好きだ。社会人になって都心のオフィス街を少し離れた場所に一人暮らしを始めて、日曜の夜9時くらいに不気味なほど静まり返った街中を歩いている中でイヤフォンから流れてきたのがこの曲だった。始まったばかりの社会人生活と初めての一人暮らしに、ホームシックになったわけではなかったが不安は覚えたものだった。歌やロックスターが別に直接何かをしてくれるわけではないのに、なぜだか知らないけど前向きになれた信号待ちの景色は今も記憶に残る。

2012年7月4日(Gacktさんの誕生日だ)の解散ライブには足を運べなかった。新卒1年目の、現場配属後の初日だったか、2日目だったか。今思えば最初の週に仕事なんて無くて残業する意味もないんだから、行けば良かったのに。そんなことを当時の自分が思えるわけもない。

2016年の『最期ノ月』以来Gacktさんのライブには足を運んでいなかった。もうGacktさんのライブを観に行くこともないだろうなと、なんとなく思っていた。でも、YFCzの復活がアナウンスされてからは、クリスマスに行われるこのコンサートが楽しみだった。「5年限定復活」というのも理解できる。YFCzは50歳を過ぎた身体でいつまでも出来るパフォーマンスではない。推しは推せる時に推せ。もう会えないとすら思ってたんだから、こんなボーナスステージは無い。

推そうと思ったら、開場と開演が2時間押した。内容はほとんど予想通りだった。大好きだったChachamaruの呻るギターも無くて、Gacktの隣にYouが居なくて、新しいメンバーのことを僕はまだほとんど何も知らない。こっちも歳をとって、1時間半ずっと叫んで跳んでとできる身体でもなくなった。
でも、12年の時を経て、「また、ココで逢いましょッ」が叶ったんだから。12年前にちゃんとお別れできなかったものが戻ってきたんだから。それに越したことはない。舞台に「アナタがいたから」、それで良い。

会場を出たところで配られたWOWOWのフライヤーと、ラッキードローで出た缶バッジ

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