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街そのものがミュージアム

街そのものがミュージアム

『こどもと大人のためのミュージアム思考』を読んでいて、
そういえば、と思った。

釜石には「オープン・フィールド・ミュージアムKAMAISHI」という構想があって、
街全体が「屋根のない博物館」とする観光地域コンセプト。
釜石という街そのものがミュージアム。

釜石には「人材」がいる。
漁師だったり、小さな会社の経営者だったり、
旅館のおかみさんだったり、自分ちの庭を公園にした人たちがいる。

街全体の9割を、森林がしめている。

その森の街は、漁村として出発した。
やがて鉄をつくって近代日本を支えるようになった。

森から川を伝って流れ出る滋養は、
海の幸を育んできた。

その幸を食べて、街の人たちは育ってきた。

ここを訪れる人たちは、
ここで生きている人たちの話を聞き、
海と山の自然に触れ、
歴史を肌で感じて、
「ああ、きれい」とか「ああ、すばらしい」とか、
そういう直感で好意をもてることもあれば、
モヤモヤしてなんだかわからないけどなんかは感じる、
という言葉にならない感覚を得ることもある。

ミュージアムだから、はっきりと「わかる」ものがあれば、
なんだか「わからない」ものもある。

ミュージアム思考をとりいれる

ミュージアム思考には5つの思考方法がある。

①視覚的思考:モノを見ながら考える。全体性を捉え、比較や分類し思考を深める。
②身体的思考:身体感覚を総動員して考える。質量のあるモノを、見るだけでなく身体感覚を開いて思考する。
③共在的思考:他者の感情や経験を理解し想像する。モノを見ながら対話し、他者とともに世界を再発見する。
④超越的思考:日常的な空間を超えて深層の時間に接し、新たな発見や普遍的な価値へのつながりを見出す。
⑤持続的思考:答えがひとつではない問いに対して、すぐに結論を求めず、時間をかけて問いを持ち続ける。

『こどもと大人のためのミュージアム思考』 p181

観光で釜石に来ることもあれば、
仕事で釜石に来ることもあるし、
ワーケーションとして釜石に来る場合もあるだろう。

出会いと体験を5つのミュージアム思考で捉えてみる。

ここに住んでいる人たちも、5つのミュージアム思考で捉えてみる。
ここに暮らしていることを誇りに思えるように、
オープン・フィールド・ミュージアムはサポートしていく。

釜石はそんなことを考えて、少しずつ実践している。


『こどもと大人のためのミュージアム思考』 稲庭彩和子編著 左右社 2022年