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スタインウェイで童謡歌ってアンコールはドビュッシー。なんじゃこりゃ

なんてすばらしい人たちなんだろうか、と思った。

昨日のTETTO(釜石市民ホール)。
大ホールからグランドピアノを引っ張り出して、
ロビーに置いてロビーコンサート。
スタインウェイよ、釜石のグランドピアノ。

金澤えり子さんという東京のピアノの先生で、
全国各地のストリートピアノを弾くのが趣味で、
たまたま釜石に来てTETTOのロビーにあるアップライトのストリートピアノをガンガン弾いていたら、館長がすぐに寄っていって直談判して今回のイベントに至る、って、
なんか行き当たりばったりというかチャンスを逃さないというか、すてき。
15時の定刻になったらぬら〜っと始まって、
明るく気さくなタイプのピアノの先生で、
童謡とちょっとしたおしゃべりで聴いてる人を魅了していく。

最初は10人ぐらい。
大ホールでのクラシックコンサートが終わったら、
その流れで人が集まって、30人ぐらいになった。

どっちのイベントも無料。
ありがたいんだけど、震災復興期以来釜石の人たちタダに慣れちゃって、
有料イベントに人が集まらなくなっている。

芸とかアートにお金を出さないのは釜石だけじゃなく、
日本中そうだろうと思う。
だったら公共がお金を出してアーティストたちの面倒を見るしかないじゃないか。
不要不急とかバカなこといってアーティストを困らせたばかりだし。

無料でいいじゃない。
お年寄りか家から出て街を歩き回って、
音楽を聞いたり歌を歌ったり絵を観たりする。

人の健康寿命を伸ばす決めては、
運動をすることよりも、街を出歩きやすくするデザインだとか。
そうだとすれば、
この日のTETTOはコンサルタント2つ絵画展2つの猛烈アートデイ。
たくさんのお年寄りがアートを楽しんでいた。

ん? と考えた。
台風がまもなく上陸するのにTETTOに来るということは、
マチナカに住むご近所の人たちか。
だとすれば、復興住宅に住んでいる人たちか。
だとすれば、津波で家族を失い財産持っていかれ、
人生を強制的に変えられた人たちかもしれない。

そんな聴衆が、スタインウェイピアノで童謡を歌う。
雪やこんこ、屋根より高いこいのぼり、でんでんむしむしカタツムリ。
ピアノの先生が「あ〜、もみぢ、忘れちゃった!!」
といえば、誰かさんが
「あーきのゆーうーひーにー」
と歌って差し上げる。
ピアノの先生「ありがとうございます!」
といって、元気に弾き始めた。

ピアノの先生、見ているのは楽譜じゃなくて、
曲順が書いてあるレジュメ。
楽譜を見ずに次々と弾いているのを見ていて、
東京新宿ゴールデン街の流しのマレンコフを思い出した。
マレンコフ、本名加藤なんとかさんは、
アコーディオンで「流し」をしていた。
客のリクエストはすべて暗譜で弾けた。
いま目の前では「青い山脈」を歌っている。
まさにかつてのゴールデン街でよく歌っていた歌だ。

それまで頑なだったわたしの口も、
自然と歌を口ずさむようになった。
なんだか若いころを思いだしてジーンときた。

後ろから館長が超低音を響かせて歌っている。
前の方では、ソプラノの声も聞こえる。
なんなんだろう、釜石の人たちは。
美空ひばり「川の流れのように」では大合唱。
うさぎ追いし「ふるさと」でシメ。

アンコールでは、アイルランド民謡の「ロンドンデリーの歌」とかドビュッシーの「月の光」とか。
宮沢賢治の「星めぐりの歌」がさらっとでてくるあたり、
それを手話付きで歌う人がいたり、
文化高いな〜、釜石。