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初めて自分ひとりで照明を担当するので、観に来て欲しい。
高校の後輩からのメッセージだった。

後輩といっても、20才以上歳は離れている。
在京同窓会で知り合って、
大学を卒業するんだけど、
芝居を続けたい、と。
役者さんか? と聞けば、
裏方で、照明をやってる。

むかしから知ってるプロデューサーに紹介して、
キビシイ人なんだけど、その後輩を気に入ってくれて、
預かってくれたのが5年前。
プロデューサーのダンナさんが、照明さんでもある。

観に来て欲しいといった芝居は、岸田理生の原案ものだった。
アングラ芝居で、演劇=物語、ではなくて、
叫んだり歌ったり走ったり、
そういった動作とセリフで、
世の中の「悪」「ウソ」「ごまかし」に異議申し立てをし、
不条理を「そんなもんだ」とうそぶいていく。

だから、役者の表情や舞台の表情は、
照明が重要な役割を果たす。

なのに後輩は、蛍光灯から芝居をスタートさせた。

この5年、助手だった。当たり前だけど。
仕事をしながら、じゃないと生活できないから、
仕事をしながら、芝居がかかると、お手伝いにいった。

芝居がかかってない時期は毎日、どうやってトレーニングしてたんだろうか。
アパートの部屋で、懐中電灯や卓上ライトや、
アウトドア用のライトとかろうそくとかをつかって、
部屋にあるもの、食器やペットボトルや化粧品のビンや、
そんなものに表情をつけていたんだろう。

「あと2年で独り立ちしないといけないんです」
30才までにプロフェッショナルにならないと、
ずっとアマチュアのまま、
兼業で、
これで食ってます!
っていえなくなる。
「照明さん」ではなく、
ただの「演劇好きの人」になってしまう。

だから、初めて一人で任されたこの芝居を観て欲しい、と
メッセージくれたときに、即答した。
「もちろん!」

ギリギリのところでプロフェッショナルを目指してる若者。
就活に走り回っている大学生。

梅雨の晴れ間は気持ちがいい。