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子どもたち「を」よろしく

映画『子どもたちをよろしく』を観た。

ふたつの家庭のドラマが同時進行する。
ひとつは、父親がギャンブル依存症。
妻は出ていき、中学2年の息子はほったらかし。
仕事はデリヘル嬢のデリバリー。
帰りにパチンコ。給食代と修学旅行積立金を
パチンコ台に吸い込ませる。
夜遅く帰ってきて、息子には袋ラーメンを鍋のまま、
自分は缶チューハイを何本も。
暗く寒い部屋で、母親の置き手紙を宝物のように読み返す。

もうひとつは、再婚の夫はDV野郎。
自分にはパンチ、娘にはセックス。
連れ子の中学2年生はそれを見ているが、
性的暴行を受けている義理の姉に密かに思いを寄せ、
自分の父親にくってかかるが、いつも逆にDVを受けてしまう。
デリヘルで働いていることは知らない。

DVの息子は、ギャンブルの息子とかつては仲良かったが、
いまではいじめる側といじめられる側。
あるとき、いじめ仲間から
「おまえのねえちゃん、デリヘルで働いてる」
と知らされる。
つまり、今度は自分がいじめられる側になることを悟る。
なので、いじめをさらにエスカレートさせていく。

特別なストーリーではなく、
どれも「あるある」な状況、存在。
監督の隅田靖さんは、取材をしたのではなく、
こうした状況のノンフィクション本を何冊も読んで、
構想を練って台本を書いてカメラを回した。
社会に潜む凶暴さ、絶望は、
いたるとこにある。
東京にも横浜にも、
九州にも東北にも。

弱いところにしわ寄せがいく。
弱い立場の人たちが、ますます弱くなる。

現実なら、ここに一斉臨時休校になる。

映画のタイトルは「子どもたちをよろしく」。
子どもたちは誰で、誰によろしく頼んでいるのか。