高級中華じゃなくて町中華のホトケさまたち
運慶や快慶が彫ったド迫力の像でもなく、
金色に輝く端正な仏像でもなく、
木でできた、くすんでひび割れた仏さまなのか神さまなのか、
どっちとも取れるような仏神像。
お寺の本堂の脇や端っこに置かれていたり、
村の小さな祠の中に祀られていたりして、
形もばらばら、作り方も雑。
しかも笑った顔の像が多い。
「民間仏」というらしい。
高級中華じゃなくて、町中華ってところか。
『みちのく いとしい仏たち』
岩手県立美術館に見に行った。
先月上野の東京国立博物館でみた『東福寺』特別展の厳かさ、
とは真反対の、にぎやかで微笑ましい雰囲気。
たとえば、東福寺という立派なお寺に有名な仏師が彫った仏さま、
それを「町の仏」とするならば、
大工さんが仕事の傍らでつくった、
その地域の人だけに価値を感じられる「村のホトケ」。
監修者の須藤弘敏さん(弘前大学名誉教授)さんは、
そうした微笑みの像が大半だけど、
2体だけ、せつない様子の仏像があった。
赤ちゃんを抱いた子安観音で、
生まれてすぐに亡くした子への思い、
母子ともに失った悲しみ、
水子として送らなければならなかった悔恨、
そうした思いが込められていいる。
図録『みちのく いとしい仏たち』2023年