みる・考える・話す・きく、の美術鑑賞のメリット
美術館で絵画なり彫刻なりを観る。
ゴッホの絵が、わたしたちにとっていちばんポピュラーかもしれない。
ゴッホでもマネでもモネでもルノアールでもいいけど、
美術館とかデパートの絵画展とかで、
絵を見るんだけど、どうも「楽しむ」まで気分が上がったりしない。
美術館で絵画を観て楽しめるコツは?
東京都美術館の学芸員、稲庭彩和子さんに聞いてみた。
「解説を読まないこと」
解説を読むと、それに合わせた観方をする。
解説にそった理解をする、それがつまり「正解」だと思う。
仕事でもやっているように、解説を読んでパターン化し、記号化し、
つなぎ合わせ、当てはめて、目の前のゴッホの絵を理解する。
確認作業だ。
観光旅行と同じ。あらかじめ下調べしておいて、
web siteとかSNSでの投稿写真とかと、
実際に現地での光景、風景が同じであることを確認するのが観光。
でも、確認作業でも観光旅行は楽しい。
なぜだろうかと考えると、いっしょにしゃべる相手がいるから。
同じ風景を観て、同じ確認作業をして、
そのあと「でもさ〜」と、思いついたことを話し始める。
そうすると、風景がその人の物語として立ち上がってくる。
その人の物語に入っていく風景をシェアする。
自分も、その物語の登場人物になる。
同じようなことが、美術館でもできる。
誰かと対話をしながら絵を観ていく「対話型鑑賞」。
ビジュアルシンキングストラテジー、ともいう。
やり方は、
みる:その作品をすみずみまでみる
考える:そう見えた理由や根拠を考える。自分の経験に照らし合わせて、どこからそう思ったのか、なぜそう思ったのか。
話す:見つけたこと気がついたことを、言葉にして伝える。言葉にすることによって、自分にも新しい気づきを発見する。
きく:ほかの誰かの話を聞き、自分の捉え方を確認する。
みて、考えて、語って、聴いて、とすることによって、
「1000年前の文化財が、1000年前の人たちのものではなくて、
わたしたちのモノとかわたしたちのコトになって、
わたしたちは当事者になる。
知を紡ぐってそういうことでもあって、
それがビジュアルシンキングストラテジーのおもしろさです」
と、稲庭さんはおっしゃる。
解説を読む前に絵を観る。
すみずみまで観る。
考える、話す、聴く。
ビジュアルシンキングストラテジーは、
子どもの教育だけではなく、
ビジネスでも有効なトレーンングになっている。
いま、コロナになって、しゃべりながら観ることが難しくなっている。
それがちょっと、ザンネンではある。