カンカンに焼けた石でつくる真鯛のスープを
ゼミ生のオチンが亡くなって、10月3日で3年になる。
秋田の田んぼに稲刈りに行く途中の交通事故だった。
その秋田の田んぼに、2日間いってきて、
足踏み脱穀の話をすでに書いた。
昨日、3回忌を彼がつくったシェアハウス「カグラボ」で執り行い、
わたしは秋田からの帰りで21時ごろおじゃましたが、
カグラボのリビングでは20人ぐらいの若者たちがまだ、
オチンを偲んでワイワイしてた。
秋田を離れる前、いっしょに田んぼ作業に参加してて、
地元の有名な酒蔵で蔵人をしているオータカが、
どうしてもそこでお昼ごはんを食べたい、
というので、「美野幸」に行った。
日本海の絶景と美味しいもの
男鹿半島の先っちょ、入道崎の灯台のそば。
展望がすばらしく、三陸のリアス式海岸に慣れたわたしにとって、
「海が広い〜〜〜〜」
その海で捕った天然の真鯛を使った料理、
石焼定食が素晴らしかった。
木の桶に、調理した鯛と岩のりとだし汁が入っていて、
そこに熱く熱く熱く熱した石を投入して、一気に沸騰させる。
きちんと仕事がしてある鯛の切り身はもちろんのこと、
そのスープが最高に美味しい。
味付は塩味。鯛から出た旨味、岩のりの磯の風味、
少しだけの山椒がピリッと味を立たせる。
しかも、まったく色がない、透き通ったスープには驚く。
お湯のようなスープ
動物性たんぱく質を煮るのだから、
多少は白濁するはずなんだけど、
しかも最後は焼石を入れて沸騰させるのに、
ホントに白湯のような透明なスープ。
どうしたらこんな透き通った美味い汁ができるのか。
おやじさんに聞いてみたら、
「30年、これをやってますからね〜」
と。
灯台のそばの食堂兼お土産屋でも石焼定食を出しているが、
そっちも食べてるオータカいわく、
「まったく別物」
らしい。
おやじさんも、
「誰も真似できないと思いますよ」
と。
自信に満ち満ちている。
予想を遥かに超えた仕事をしたい
鯛と透き通ったスープ。
シンプルといえばシンプル、シンプル極まりない。
オータカは、
「こんな酒がつくりたい」
といった。
何回もいった。
シンプルにして奥深い。
前評判はさんざん見たり聞いたり読んだりして、
かなり美味しいことは知っていたが、
予想を遥かに超えた美味しさ。
顧客の予想を遥かに超えた成果、製品、サービス。
そしてそれは、シンプルなものにして奥行きがある。
わたしも、「こんな仕事をしなきゃ」と思った。
食べることが好き、つくることはもっと好き、
食べてくれた人が喜んでくれるのが一番好きだった、
オチンにこの、石でつくったスープを食べさせたかった。