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自動運転バスで地域活性

実施1年で経済効果7億円

茨城県境町では、自動運転の小さなバスが走り回っている。
運賃はタダ。
定員は15人だけれども、コロナ対策で8人に制限。
土日も祝日も休まず毎日7:40から16:00まで定常運行していて、
全部で18便、2台のチイバスが同時運行している。
(実際には3台あって、1台はメンテナンス)

2020年11月に実用化。
初年度は5,300人が利用。
境町の人口は24,000人。
コロナ真っ最中でこの利用数はすごくないか?
人口減少や高齢化によって交通インフラに頭を痛めているいろんな地域からの視察も含めて、自動運転バスの経済効果は7億円と計算されている。

経済効果7億円と計算したのはバスの運営会社BOLDLYで、
代表取締役社長兼CEOの佐治友基さんに話を聞いた。

町長の素早い意思決定

もともとソフトバンクの子会社として自動運転バスを使って実証実験していたところ、
境町の橋本正裕町長がその情報をキャッチ。
交渉はとんとん拍子に進んで、境町に導入することに。

街に新しい交通インフラが導入されるときに必ず起こるのは、
地元の交通インフラ会社とのコンフリクト。
たとえば、Uber。
タクシー業界が強固に反対して、日本ではまったく普及しなかった。
Uberといえば、Uberイーツのことである。
しかし、これを佐治さんたちは上手にまとめた。

その手の内はこう。

路線バスは幹線道路を走っている。
自動運転バスは、幹線道路に囲まれた住宅地、
交通量の少ない地域を網の目状にカバーする。
幹線道路に出たところで、バスとタクシーに接続。
バスとタクシーが、鉄道の駅まで繋げている。
役割とテリトリーをキレイに分担している。

町としての目玉政策に

境町は財政破綻寸前の自治体だった。
そこにいまの橋本町長が登場し、
ふるさと納税で起死回生を図る。
初年度には6万円しか集まらなかったが、
町長得意のマーケティングでその後はぐんぐん納税額を伸ばし、
今では50億円超にもなった。
関東圏では、7年連続ナンバーワン自治体だ。

その潤沢なふるさと納税を使って、子育て支援を充実させ、
町としての目玉政策にすると同時に、
ママたち子どもたちが安全に利用できるように自動運転バスを導入した。
自動運転バスの運行費用は5.2億円。
その半分を国からの地方創生推進交付金でまかない、
もう半分をふるさと納税で豊かになった町の予算でまかなっている。

さらに注目すべきは、運行の仕組み。
交通事業会社ではあるが、スタッフは元銀行員、元介護職など、
交通のプロではない人たち。
専門的な経験がなくても、ITによってオペレーションを簡単にし、
その結果、雇用のハードルが下がって、人手不足を解消することができた。

現在、日本全国で実証実験などが行われ、
77,400人ほどが自動運転バスを利用した。

地域を細かく回る自動運転バス、そこから既存の交通インフラに接続する。
移動インフラの役割分担、雇用も生み出す。
新しいシェアリングエコノミーともいえるのが、
自動運転バスを使った、境町の地域活性化の取り組みだ。