二次元の彼女にトキメイていた月曜日
『ストップ!!ひばりくん』『すすめ!パイレーツ』
「彼女 〜江口寿史 イラストレーション展」を観てきた。
30代前半、わりとマンガとかアニメに通じているスタッフに、
江口寿史とか『ストップ!!ひばりくん』知ってる?
と聞いたら、知らなかった。
そうだよな〜。
イラスト展でも年齢層高かった。
デビュー作『すすめ!パイレーツ』が1977-80年、
『ストップ!!ひばりくん』が1981-83年。
女装男子がむちゃくちゃかわいくて(マンガだし)、
連載している「少年ジャンプ」が発売される月曜日には、
小学生男子は2次元のその男の子との再会に心躍らせていた。
『ストップ!!ひばりくん』の連載中断から、
江口寿史はマンガからイラストレーションに軸足を移す。
(『ストップ!!ひばりくん』の最終回は27年後)
イラスト展は、6章立てになっていて、
CDのジャケットを集めた「ポップの女神たち」、
この瞳の先には何があるんだろう、
彼女は何を見ているんだろう、と、
どデカい展示を前に、しばらく楽しんだ。
「音楽とファッション」「美少女のいる風景」
清楚でタフで、キュートでたおやか。
フィクションだからリアルにいるはずもなく、
でも街で「あっ」を出会うこともありそうな美少女たち。
楽しそうに歩いているカップル、
幸せそうに佇んでいるカップル。
あ〜〜、トキメクっていいな〜〜、
若いっていいな〜〜、
とか思って笑っちゃった。
ちゃんと見てる?
シャッター音が気になる。
スマホのカメラアプリの「カシャッ」「カシャッ」というシャッター音。
一人だけじゃなく、何人かが、しきりに写真を撮っている。
写真撮影フリーとはいえ、
ほぼ全部の作品を撮っている。
しかも、ほとんど作品を見ていない。
じっと見る、端折らないで見る。
その作品を、作者はどんな意図で描いているのか、
どんなメッセージを伝えようとしているのか。
美術館で絵画や彫刻なんかを見るとき、
ひとつでもふたつでもいいから、
ゆっくりモードで見る。全身での知覚活動をしてみる。
作品と対話をしてみる。
作品と対話をするということは、作者との対話にも似ている。
「ぼくは自分の絵が上手いとは決して思いませんが、
自分の絵が大好きなんですよ」
展示のいちばん最後に据えてある動画の中で、
江口寿史はそう語っている。
江口寿史のその思い、受け止めているだろうか。
江口寿史と対話をしているだろうか。