ありがとうと感謝しながらピザを焼いてみんなで食べた
釜石に「こすもす公園」という私設の「公園」があって、
昨日、10周年を祝った。
2011年3月11日の震災後、
釜石市内に子どもたちが遊べる場所がなくなった。
あちこちの公園には、仮設住宅が建てられたから。
ならばと、自分たちがもっていたコスモス畑をつぶして、
みんなが使えるオープンスペースをつくった。
オーナーのフジイさんご夫婦はあの日、
甲子(かっし)という、釜石の山側地域の自宅から、
街なかの銀行に用事があってでかけていた。
その途中、金融機関ならどこでも用は足せるんじゃないかと思い、
街なかからちょっと手前の銀行にクルマを止め、
用事を済ませた。
その直後、大地震で揺さぶられ、大津波に襲われた。
フジイさんご夫婦は無事だったが、
もしあのとき、街なかの銀行までいっていたら、
津波に飲み込まれた恐れは大いにある。
いこうとしていた銀行は、多くの人が亡くなった地域にある。
ご本人たちは、
「間違いなく死んでた」
といっている。
なんかの運命で生かされた生命だから、
なんかの役に立ちたい。
子どもたちが遊べなくて困っているのであれば、
子どもたちが遊べる場所をつくってあげよう。
きれいなコスモスを咲かせることで有名だったコスモス畑を、
なんの惜しげもなくつぶし、
助成金を使いながら、人の手で公園をつくった。
走り回るのはもちろん、遊具で遊ぶだけでなく、
キャンドルナイトやライブコンサートなどのイベントをやり、
大きな壁画を描いてもらって公園をパワーアップし、
子どもから大人までというジェネレーションを超え、
その人たちは釜石市内だけじゃなくコミュニティを超えて集まり、
まるで小さなひとつのコスモス(宇宙)のような存在になった。
開園から10年経って、オリジナルなスタッフが集まった。
みんなも公園も、10年ぶんの年をとった。
オーナーのフジイさんご夫婦にありがとう、
公園にありがとう、
みんなもありがとう。
そうやって感謝しながら、ピザ窯に巻きをくべ、
ピザを焼いてみんなで食べた。