タネをまいて石を置くだけ
石、が重要で、石を置いておけばあとはなにもしなくてもいい。
タネさえまいていれば。
タネノチカラの金子大輔さんは、
社会見学に来ていた中学生たちに、そう力説していた。
タネノチカラは、耕作放棄地をパーマカルチャーの手法をつかって、
豊かなコミュニティに育て上げよう、とチャレンジしている。
場所は、淡路島。
金子さんはじめ4人の創業メンバーが東京から移住してきて、
4年になる。
タネをまいて、ほどよい大きさの石を置く。
石には保温性があって、温かさや冷たさを求めて、虫が寄ってくる。
トカゲやカエルや、土の中ではみみず。
タネは芽を出し葉を育て、葉を落とす。
落とした葉を虫が食べて、フンをする。
フンに含まれる養分を得て、タネからでた芽は育っていく。
ほかの草も芽を出しそだっていく。
雑草だ。
雑草は取らない。育つままにしておく。
なぜなら朝、雑草たちの上に朝露が降りる。
風が吹いて、朝露が地面に落ちる。
落ちた水分を吸って、タネからでた芽がまた育つ。
虫からの養分と朝露の水を吸い上げて、
育っていった芽はやがて実をつける。
石を置いただけ。肥料も水も加えなくても植物は育って、
わたしたち人間にも、動物にも実を与えてくれる。
石にパワーがあるわけではない。
石に集まってきたナニモノかたちが、
力を合わせて生態系をつくっている。
金子さんのこうした話に、ハッとした。
大隈塾と同じだ。
大隈塾のコミュニティも「石」をコアにしている。
大隈塾は「ストーンスープ」という団体を持っていて、
ストーンスープが大隈塾コミュニティを運営している。
ストーンスープという昔話がある。
むかしむかし、ある村に旅人がやってきて、
鍋を借りて、石を拾って水を張って火にかけて、
美味しいスープをつくった、という物語。
石で美味しいスープをつくったんだけど、
実は石だけじゃなく、
つくる過程で、村人たちがそれぞれ野菜や肉や塩を持ち寄り、
それでスープは美味しくなった。
食材を村人たちそれぞれの才能、スープをコミュニティや社会と見立てるならば、
人が才能を持ち寄って、豊かなコミュニティ、豊かな社会をつくっていける、
それがストーンスープだ、ということで、
社名を「ストーンスープ」にしている。
淡路島のタネノチカラ、パーマカルチャー、大隈塾コミュニティ。
タネをまいて、石を置くだけ。