匂い立つ、香り立つ
オンラインで伝えにくいにが、匂い。
匂い、なのか、香り、なのか。
「匂う」も「香る」も、もともと視覚的な意味を表す動詞だった。
「匂う」は赤い色がばーっと広がる感じ。
「香る」はけむりや霧など、輪郭が曖昧なもの、
存在の気配を表していた。
そののち、今のように、「匂い」が嗅覚で感じること全般で用い、
そのなかでも好ましいものを「香り」というようになる。
隠し事をしてたり、身を隠しているときに
「におうぞ〜」とかいうのは、ここから来てるんだろう。
嗅覚は、鼻から脳みそにダイレクトに伝わっていく。
五感と脳みその関係では、
視覚、聴覚、触覚、味覚が大脳新皮質、
嗅覚は大脳辺縁系。
大脳新皮質が、キャッチした情報を意味づけしていくのに対して、
大脳辺縁系は、快不快だったり、本能、記憶にかかわる領域になる。
どうやったら嗅覚をオンラインで伝えるか。
大隈塾では、みんなで同じ食材を使って、料理してみる。
ごはんを炊いて、コメが炊きあがる匂いをかぎ、
活きたホタテをむいて、磯の香りをかぎ、
ソーセージを茹でて、肉と香辛料の匂いをかぐ。
それをどう言葉で表現するか。
どんなコミュニケーションが生まれるか。
楽しみ。
(野村朋弘『伝統を読み直す3 風月、庭園、香りとはなにか』京都造形芸術大学 2014年)