積み重ねてきた「今」で、未来をつくろう
今年のJ1リーグも残り2節。
残留争いも佳境を迎えている。
現在17位の徳島ヴォルティスは、勝ち点3差で清水、湘南に食らいついている。
前節の試合結果により突如として直下3チームの降格が決定し、今シーズンの恐ろしさを実感した。
そんな中でも変わらず、私はヴォルティスを信じている。
過去から今へ、前進
前節のFC東京戦では、味の素スタジアムで価値ある勝利を掴んだ。毎年のように、シーズン終盤の味スタは重要な戦いになる。
藤田讓留チマ選手のJ1初ゴール、上福元選手のPKストップなど、この地で元ヴェルディ戦士が躍動したのもなにかの縁か。
かつてプレーオフへの道が途絶えた因縁の場所で、残留のための力強い一勝を挙げた。
2014年以来二度目のJ1での戦いとなる今シーズンは、前回叶わなかったホームでの勝利、そこからの三連勝など、クラブの歴史を塗り替え続けている。
さらに、7年前は最初から最後まで抜け出せなかった最下位の座。なんと、今シーズンは一度も最下位になることがなかった。そう思うと本当にすごいよなあ…
もちろんコロナの影響による試合数の関係もあるが、戦えるチームになって帰ってきたことを実感する。
こうして過去を一つずつ清算し、ヴォルティスは着実に前進している。
ただもう一つ、因縁の戦いが残っている。
次節は、湘南との直接対決。舞台は、平塚。
2年前の2019年12月14日、湘南とのJ1参入プレーオフ決定戦。場所は平塚。結果は引き分け。
ボール1つ分、届かなかった昇格。
あの悔しさを晴らす時が来た。
味スタでの勝利と同じように、平塚での記憶を塗り替える。そして、新たな未来への一歩を踏み出すのだと私は信じている。
信じられる理由が、ヴォルティスにはある。
積み重ねる、チームの信念
今シーズン、試合に向けた選手たちのコメントで、よく言葉にされている考え方がある。
これらは様々な選手から発せられ、今季の「チームの信念」であり共通認識とも言えよう。
一方で、どれも昨季のJ2優勝争いの時とほぼ似たような言葉なのだ。
昨季と今季では勝ち負けの数は明らかに違う。
つまり、置かれた状況にかかわらず、同じように信念を持って戦えていることが分かる。
もし、結果だけを評価軸にすれば、負けが込んだ時点で全体としてダメだと見なされる。
しかし、内容や在り方を重視することで、外部要因を伴う結果だけに左右されず、自分たちでコントロールできる部分に集中して積み重ねることができるのだと思う。
そして、その積み重ねが結果を生む。
もちろん、いいときも悪いときも変わらず信念を持って戦い続けることは簡単ではない。
チームを統率するキャプテン岩尾憲の偉大さを改めて感じる。そして、諦めずひたむきに取り組み続けるチームを誇りにおもう。
さらに、その「信念」がサポーターや外部にも伝わっていることも強みだと思う。
それは、これまで培われてきた文化だ。
例えば、前節FC東京戦に向けたコメントでの田向選手の言葉は、すべてに頷きながら読むほどの納得感だった。
きっとこの言葉は真理なのだと、そう思うほどにこの考えは私にも馴染んでいた。
https://www.targma.jp/vortis/2021/11/19/post41454/
言葉として発信しサポーターとも認識を共有してくれることで、チームを信頼できる。こうして重なる想いが、大きな力につながるはずだ。
揺るぎないクラブのスタイル
クラブが揺るぎないスタイルを示し続けることも、サポーターにとっての理解と信頼につながる。
さらに、この確立されたスタイルは、「チームの信念」をより強くしているだろう。
クラブはこれまで、アグレッシブで組織的なスタイルを貫いてきた。監督によってその手段は異なるものの、志向するものは同じだ。
このスタイルを拠り所として、チームの信念と呼応し合い、好循環が生まれているように思える。
ビルドアップを重視するフットボールだからこそ、過程を大切にすることやチーム全体で戦う意識につながる。
アグレッシブなフットボールだからこそ、主体的で自分に矢印を向けられる選手が育まれる。
確固たるスタイルがより強い信念を形づくり、その信念がよりチームの力を強めてきたのではないだろうか。
ここまで来れたのは、偶然なんかじゃない。
過去から今へ、すべてが繋がっている。
信念を曲げず、常に意味のある時間を積み重ねてきた結果が「今」なのだ。
それをさらなる未来につなげるために、自分たちの信じる道を貫き通すことでヴォルティスは残留を成し遂げようとしている。
徳島の未来のために、自分たちのスタイルを貫こうとしているのだ。
今から未来へ、残留という証
今シーズンもここまで紆余曲折あった。
まず、共に昇格を成し遂げたリカルドが去った。
ポヤトス新監督は入国制限により来日が遅れ、オンラインで指導する前代未聞の事態。
開幕戦から1か月半の間、2014年を知る甲本ヘッドコーチが指揮を執った。泣いたり飛び跳ねて喜んだりする彼のまっすぐな姿は微笑ましく頼もしかった。
序盤は特に、昨季のJ2でも出場機会の多くなかった若手選手が躍動し、チーム全体の力を見せつけた。
ポヤトス監督来日後は、新たな戦術に迷いが見えた時期もあった。連敗したこともあった。
だからこそ今、光明を見いだし、力強く戦い続ける選手たちが尊い。
そうやって、懸命に積み重ねてきた道の上に、今のヴォルティスは立つ。
ようやくここまで辿り着いたのだ。
この舞台から易々と降りるわけにはいかない。
「残留」という証を残したい。
来季もここで戦いたい。
「今」を、未来へつなげたい。
散々過去のことを振り返ったが、因縁なんて考えるのはサポーターに任せてくれたらいい。
チームはいつもどおり、目の前の試合に集中し、やるべきことに全員でひたむきに取り組み、勝つ確率を高めるために、積み重ねてきた力を発揮するだけでいい。
それが、ヴォルティスの強みだ。
それだけで超えていける。
そして、私はその力になりたい。
声が出せなくても、この想いを届けたい。
全力で手拍子するでも、旗を振るでも、懸命に祈るでもいい。どこでいようと関係ない。
本気で想えばなんでもいい。自己満足でいい。
その強い想いがチームの力になると信じて。
残り2節。
このチームで戦えるのは、今しかない。
全力の「今」が、未来をつくる。
ヴォルティスの未来を、今、共につくろう。