封印された「西郷山」と甦る子供たち/吉田悠軌・オカルト探偵
都心でも閑静なエリアとして知られる目黒の西郷山公園は、日本犯罪史に刻まれた凶悪事件の現場でもあった。そしてそこには、オカルト探偵が追いつづける現代怪談の最重要キャラクター「赤い女」の痕跡が見え隠れしていた!
文=吉田悠軌 #オカルト探偵
「赤い女」
映画『樹海村』にてモチーフとされた「コトリバコ」。2020年から続くネット怪談リバイバルブームに乗って、2021年は、この最恐怪談が再注目されるのではないか……私は密かに、そうにらんでいる。なにしろこの「コトリバコ」というストーリーは、現代の怪談・都市伝説における最重要テーマを孕んでいるからだ。
そのテーマとは「子殺し」である。
では、その子たちを殺す「犯人」はいったいだれなのか?
前回はこの流れにて「コトリバコ=コインロッカーベイビー」説を展開した。コインロッカーへの嬰児遺棄という「子殺しの箱」の責は、すべて母親たちが負うとする風潮。これはしかし戦後以降の、「子育ては母ひとりで行うもの」であり、そこから漏れる母親を「母性の喪失」と糾弾する社会的バイアスから生まれた、強迫的な恐怖イメージに過ぎない。ちょうどコトリバコの呪いが、それを作る「男」たちではなく、「母と子」たちに向けられるのと同じように。
現代怪談の最重要テーマ「子殺し」の犯人とされるのは、常にこうした女性たちだ。そしてそのイメージが投影される化け物(=現代怪談の最重要キャラクター)を、私は「赤い女」と呼んでいる。
オカルト探偵の私にとって、「赤い女」は最強の犯人であり運命の女(ファム・ファタール)だ。私はいつも彼女を追いかけては、捕えきれず逃げられてしまう。たとえば当連載でもとりあげたカシマさん、口裂け女、MOMOチャレンジも、すべて「赤い女」の変装した姿にすぎない。
私はこれまで「赤い女」の出生を「カシマさん」と「コインロッカーベイビー」が流行しはじめた1970年ごろと定めていた。しかし彼女のルーツは、まだまだ遡ることができそうだ。
現代怪談の第一人者・稲川淳二のレパートリーに『西郷山』という話がある。恵比寿で生まれた稲川の幼少時を語る、短い怪談だ。
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