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怪事件を解く鍵は科学かオカルトか?『真 流行り神3』/卯月鮎・ゲームー案内
書評家・ゲームコラムニストの卯月鮎がオカルト、超常現象、不思議が詰まった話題のゲームをムー的に紹介。このゲーム、ほかとはひと味違う!
文=卯月鮎 #ゲームー
『真 流行り神3』
オカルト色濃厚な怪事件
4人の刑事たちが「悪魔の人形」「両面宿儺」など都市伝説にまつわる事件を追う。
7月29日に都市伝説を題材にした人気ホラーアドベンチャーシリーズ最新作『真 流行り神3』が発売されました。今回もG県警「とくそう」に所属する女性刑事・北條紗希と同僚が、都市伝説を思わせる怪事件の数々に挑みます。
各話は選択肢によって「科学ルート」か「オカルトルート」に分岐するのがシリーズのお約束。どちらのスタンスでも事件解決となりますが、ムー民はもちろんオカルトルートでしょうか。
それでは『真 流行り神3』から連想されるムー的キーワード3つを挙げていきましょう。
流行り神
「流行り神」は民俗学の用語で、突如として熱狂的な信仰を集め、その後急速に信仰を失ってしまった神のことを指します。
代表例は、江戸時代、浅草近くにあった柳川藩立花家の下屋敷の鎮守「太郎稲荷」。麻疹(はしか)にかかった立花家の嫡子がこの稲荷に祈願して治ったという話が広まり、多くの参詣者を集めたものの、半年ほどで廃れてしまったそうです。
コロナ禍でにわかに脚光を浴びたアマビエのように、社会的不安が膨らんだとき、流行り神もまた出現しやすくなるという説があります。
ちなみに、流行り神ならぬ流行り病も擬人化してしまうのが日本人らしいところ。江戸時代には浮世絵師によって麻疹を擬人化した版画が多数制作されています。そのなかの1枚「流行はしか合戦」は、擬人化された麻疹の症状「かんの虫蔵」「せきの出太良」たちと、擬人化された薬「升麻葛根湯」「救命丸薬」たちが戦うというもの。神も病気も、目に見えない存在をキャラ化するのは十八番ですね。
金縛り
都市伝説の「隙間女」が密室殺人を引き起こしたのか?
『真 流行り神3』の第1話「隙間女」の冒頭で、主人公・北條紗希は「金縛り(かなしばり)」に遭います。この「金縛り」という言葉はもとをたどると仏教用語です。
密教で信仰される不動明王が左手に持っている羂索(けんさく:五色の縄)で、魔物や人の煩悩を縛り上げることを「不動の金縛法」と呼びます。これにならい、修験者も特定の印を結んで真言を唱えれば、人や動物の動きを止められるそうです。
医学的には、睡眠中に繰り返される浅い眠り「レム睡眠」と深い眠り「ノンレム睡眠」のサイクルが乱れて、脳は覚醒に近いのに体に力が入らない状況が金縛り。金縛りの際に幻覚を見るのも、脳がある程度活動しているため、夢を現実に感じてしまうからだとか。
何者かがあなたの動きを止めているのか、それとも自分の脳が錯覚を起こしているのか……。どちらでしょう?
科学捜査
要所で「セルフクエスチョン」が発生し、選択で物語が分岐することも。
『流行り神』シリーズは、オカルトと科学、両者の視点があることでシナリオに深みが増しています。
科学捜査で新たな光が当てられた事件といえば、1888年にイギリス・ロンドンで発生した「切り裂きジャック」による連続殺人事件。スラム街で娼婦たちが次々と惨殺され、犯人を名乗る人物からの手紙が数百通も警察や新聞社などに届きました。なかには人間の腎臓が添えられていたものもあったとか……。やがて犯行は途絶え、もっとも有名な迷宮入り事件のひとつとなっています。
この100年以上前の事件に日本円で7億円という私費を投じ、専門家たちに依頼して現代科学の力で挑んだのが、ミステリー小説『検屍官』シリーズで知られる作家パトリシア・コーンウェルです。(詳しくは彼女のノンフィクション『真相“切り裂きジャック”は誰なのか? 上・下』(講談社文庫)にまとめられています)。
犯人を名乗る人物から送られてきた手紙を精査して、切手に残された口腔内細胞のDNA配列を取り出すことに成功。それと当時の画家ウォルター・シッカートが出した手紙2通に残されたDNA配列が一致するのを突き止めたのです。また、切り裂きジャックが書いたとされる手紙の多くに、シッカートの筆跡の特徴が見られる、といった証拠も挙げられています。
シッカートの絵画「カムデン・タウンの殺人」(1908年)が、切り裂きジャックの事件を彷彿とさせる内容だったことも論拠のひとつ。ただ、シッカート説を主張するコーンウェル本人が、2014年の著書『切り裂きジャックを追いかけて』(Kindle版)で、DNA鑑定に関してはもとのDNAの古さなどから「(断定するのは)あきらめた」と撤回しています。
科学捜査が進化することで迷宮入りする事件は減るでしょう。しかし、科学捜査の目をすり抜けた難事件はよりミステリアスになるわけで……。科学捜査は真のオカルトを見つけ出すふるいとも言えそうです。
参考文献:宮田 登『江戸のはやり神』(ちくま学芸文庫)
内藤記念くすり博物館サイト
http://www.eisai.co.jp/museum/history/b1500/0500.html
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