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アナサジの地下UFO遺跡と”スパニッシュ・シップ”証言/保江邦夫・エリア51探検記(6)

湯川秀樹博士の最後の弟子にして武道家、そして伯家神道の祝之神事(はふりのしんじ)を授かったという異能の物理学者・保江邦夫氏は、もうひとつ「UFO研究家」の顔を持つ。20余年前に材質に関する研究報告の専門誌「バウンダリー」(コンパス社)に連載されていた「UFO調査」がここに復活!

文=保江邦夫

第1回 第2回 第3回 第4回 第5回

前回までのあらすじ

 1994年4月アリゾナ州セドナで開かれた国際会議での出会いをきっかけに、筆者一行はネバダ州ラスベガスの近くにあるブルー・ダイヤモンド・ヴォルテックスを訪れ、山腹に正体不明の巨大な2つのトンネルを発見する。調査は断念したものの、現地の保安官からの情報を頼りにアラモという村へ向かった。そこでも謎の発光編隊を目撃し、謎の軍用車に追われたことで、筆者一行は、この場所とUFOや異星人とのかかわりを確信する。
 次に向かったレイチェルの「エリア51リサーチセンター」から、筆者一行はついに”フリーダム・リッジ”の丘を登り、頂上から「基地」を目撃する。そして、ふと立ち寄ったガス・ステーションで、驚きの証言を耳にする……。

決死の脱出行

 山の向こうを見下ろすことのできる丘から下りていく道は落とし穴の連続で、登っていった時間の倍ほどもかけて慎重に足を進めていかなければなりません。
 しかも私達は、目印のついたサボテンとサボテンの間をできるだけ真っ直ぐに下っていかなければならないのです。登っているときは目印のついたサボテンを見つけるのもそこまで困難なことではなかったのですが、登るときと下りるときでは、視野の中で山肌が占める割合がまったく異なりますから、麓を目指すときには、かなり広い範囲を必死で探さなければ目印のテープを巻いたサボテンはなかなか見つけられません。かといってサボテンに夢中になって道を外れ立入禁止区域に入ろうものなら、それこそ麓で虎視眈々と我々を待ち受けている連中の思う壷。私達3人は、実に2時間もの間全身全霊をかたむけてサボテンの選別に集中したため、麓に待機していた白色のチェロキージープの動きには全く気がつきませんでした。

 やっと麓の干上がった川跡にたどり着いた私が身を屈めながら車を止めてあった道路横を窺うと、幸いにも警備兵やチェロキージープの姿は見あたりません。急いでスコットとマリーを呼び寄せた私は声をひそめました。

「運良く警備の連中は見あたらないようだ。だけど、いまここで一目散に車まで走っていくのは、ひょっとしたらどこかに潜んで待ち構えている連中を刺激してしまって、かえって危ないかもしれない。ここは、できるだけ平静を装って鼻歌でも歌いながら、ごく普通の足取りで車まで行こう。そして、各自が自分のドアの前にさり気なく到達したときに僕がキーでドアロックをはずすから、それに合わせて急いで車に入ってくれ。こんなことになるかもしれないと思って、さっき車を止めるとき、わざとそのまま道路に出やすい位置に向けておいたから、すぐに発車させられるはずだ。動いてしまえば、また連中に追跡されても、キャンベルさんが連絡してくれたあのUFOオタクの店に飛び込んでしまえば大丈夫だろう」

 辺りをキョロキョロと見回しながら聞いていたスコットは、「オーケー。さすが、クニオはクールだな」と言い、自分が助手席に乗るのでマリーに後ろの席に行くよう指示しました。

「それともうひとつ。僕は運転席側の前輪と後輪を見るから、スコットは助手席側の前輪を、マリーは助手席側の後輪をさりげなく気をつけて見てくれ。我々を足止めするために、車輪の前後に何か釘のようなものを刺したり立てかけたりしているはずだから……」
 それを聞いたスコットは表情をやわらげ、おどけてみせました。
「昨晩のカーチェイスのときから感心していたんだが、なあマリー、どうやら君のボスは東洋のジェームス・ボンドらしいぜ」
 これにはマリーも微笑みます。
「クニオ、本当のところはどうなんだい? なぜそんなにも“プロのやり方”に詳しいんだ? まさか、日本の秘密エージェントだなんて言わないでくれよ」
「僕が007? サンクス、スコット。でも僕はしがない根無し草の物理学者さ。ただひとつそこらの連中と違うのは、スパイ映画やアクション映画が大好きだってことだな。大好きなんてもんじゃない。物心つくかつかないかのうちからスリリングな映画ばかり観て育ったなら、誰でもこんなふうになるもんだよ。違うかい?」

 そう言いながらゆっくりと車に向かって歩き始めるよう促した私に続いて歩み出したスコットは、「クソ、俺もカンフー映画くらい見ておくんだった!」とマリーに向かって肩をすくめてみせました。そんなふうに軽口を叩きながらも、視線を素早くタイヤに投げかけます。
 よし、異常なし。
 3人でルーフ越しに小さく一度頷いたのを合図に、私は手のひらに隠し持つように準備していた車のキーを差し込むが早いか「乗れ!」と叫び、渾身の早業で運転席に身体を滑り込ませます。
 思いっきりイグニッション・キーを回してエンジンをかけ、始動したエンジンの音を確認しながら、ふとバックミラーを覗いた私の目に、またまた白のチェロキージープが飛び込んできたではありませんか!

「クソッ、奴等やっぱり隠れてたんだ!」

 そう叫びながら後ろを振り向いたときには、後方の枯れた薮をかき分けるようにして岩影から出てきたジープがもう20メートルほどに迫ってきていたのです。
「キャー、また来たわ!」「クニオ、頼むぞ。全速力だ!」
 マリーの悲鳴とスコットのかけ声に押されながら、私はフルスロットルでリンカーンのタウンカーを発進させ、巻き立つ真っ白な砂埃を煙幕代わりに、必死の形相でレイチェルの集落を目指しました。幸い、目を刺すような細かい砂の煙幕のおかげで、すぐ後ろにまで迫っていたチェロキージープは急にスピードを落とし、砂埃を避けるべく50メートル以上も距離を取ってついてきているようです。
「007もどきの煙幕も役に立つもんだ」
 後ろを確認していたスコットも、少しゆとりを取り戻したのか、また軽口を叩き始めました。

「あと少しで375号線に出るはずだから、ここら辺りでハデにジグザグ運転して大量の煙幕を張ってやろうじゃないか。奴等の視界が回復した頃には、俺達はあの田舎ハイウェイをぶっ飛ばし、レイチェルのバーで冷えたビールで乾杯って寸法さ」

 スコットの指示どおりにジグザグに走ってから舗装した365号線に車を突っ込んだ私は、一路レイチェルの集落を目指して猛スピードで突き進んでいったのです。

「やった! 連中のジープはまだあの砂の煙幕の中で立ち往生しているぜ。いくら赤外線スコープや望遠スコープを持っていたって、あんな砂煙の中じゃあ何の役にも立ちはしないだろう。レイチェルはもうすぐそこだし、もう安心だ。やったじゃないか、クニオ! あの山向こうの秘密基地の連中を文字どおり煙に巻いてやったわけだ」

 バックミラーを見やった私も、ハイウェイ上にはこのリンカーンを除いて1台の車もないことを知り、少しだけホッとしました。その直後、我々が必死で逃げてきた基地から続いているダートロードのずっと向こうを基地の方向に走っていく車が巻き起こす砂塵をマリーが見つけました。

「ねえ、2人とも、助かったわ! 警備兵達、諦めてくれたみたいよ」
 これで3人ともやっと安心した表情に戻ったのです。
「よし、あのUFOオタクの店で乾杯といくか!」
 私の運転するタウンカーは、でかでかと「UFO搭乗員、大歓迎!」と書かれた店の前に滑り込んでいったのです。

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レイチェルにある「リトル・エイリアンズ・イン」外部。

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入り口近くに置かれたスロットマシン。

 狭いドアを開けて入った私達3人の目に最初に飛び込んできたものは、UFOでも宇宙人の姿でもなく、ここが火星の荒涼とした開拓地などでは決してなくて、あくまでネバダ州なんだということを証明してくれるもの、そう、古いスロットマシンでした。
「こんなところにまであるのね」
 マリーは感心し、しきりに撫でていますが、この店はそういったいささかノスタルジックなウエスタン調かと思いきや、やはりUFOオタクの店なのでした。
「クニオ、あれを見ろ。すごいぜ、こいつは」
 スコットが指差したのは、店の片隅にある等身大の宇宙人の写真やマスクです。しかも、その周りにはUFOや宇宙人が映ったたくさんの写真が無造作に貼られているではありませんか。私達はまるで吸い寄せられるかのように、その片隅にあるテーブルに腰を落ちつけました。

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「リトル・エイリアンズ・イン」の中のエリア51の写真。

政府公認・宇宙人ハイウェイ

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