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勇者と姫と魔王のトライアングル『ゼルダの伝説』/卯月鮎・ゲームー案内
書評家・ゲームコラムニストの卯月鮎がオカルト、超常現象、不思議が詰まった話題のゲームをムー的に紹介。このゲーム、ほかとはひと味違う!
文=卯月鮎 #ゲームー
勇者リンクとゼルダ姫の遥かなる神話
11月12日に『ゲーム&ウオッチ ゼルダの伝説』が発売されました。『ゼルダの伝説』シリーズは、主人公のリンクがゼルダ姫を救うためフィールドや迷宮を探索するという内容。謎解きの楽しさと魅力的なキャラクターが繰り広げる物語が、長きにわたって支持されています。
今回の『ゲーム&ウオッチ ゼルダの伝説』は、ファミコンディスクシステム向けに発売された初代『ゼルダの伝説』と2作目『リンクの冒険』、ゲームボーイ向けの『ゼルダの伝説 夢をみる島』が「ゲーム&ウオッチ」で遊べるというもの。ゲームファンにとってはたまらない一品です。
カラー液晶で懐かしのゲームが遊べる『ゲーム&ウオッチ ゼルダの伝説』。
では、いつものように『ゼルダの伝説』シリーズから連想されるムー的キーワード3つを挙げていきましょう。
刺さっている剣
『ゼルダの伝説』シリーズのなかで、魔王ガノンを倒せる退魔の剣として定番の「マスターソード」。スーパーファミコン『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』では、森のなかの石の台座に刺さっていました。
初代『ゼルダの伝説』ではまだマスターソードは登場せず、最初に洞窟のおじいさんから剣がもらえる。
石に刺さった剣で真っ先に思い浮かぶのが、イギリスの騎士王アーサーの聖剣エクスカリバー。15世紀の叙事詩『アーサー王の死』の一節に登場します。ロンドンの一番大きな教会に突然四角い大石が現れ、そこに「この剣を引き抜きたる者は、全イングランドの正当なる王として、この世に生まれし者なり」と記された剣が刺さっていました。王の息子ながら家臣の子として育てられた少年アーサーは、そんなこととはつゆ知らず、馬術槍試合に剣を忘れた兄のためにたまたま教会で見つけたその剣を引き抜き、王として認められます。
アーサー王の伝説だけではなく、石に刺さった剣はほかにも存在します。たとえばイタリア・トスカーナのサンガルガーノ修道院には、聖人に叙せられた騎士ガルガーノ・グイドッティが石に突き立てて十字架代わりにしたという剣があり、今でも観光名所になっています。こちらがエクスカリバーの元ネタという説もあります。
剣ではないものの、日本では九州・高千穂峰の山頂にある天逆鉾(あめのさかほこ)が有名。日本神話でニニギノミコトが降臨した際に峰に突き立てたとされる矛(槍の一種)。ちなみに坂本龍馬が新婚旅行でこの地へ来て「エイヤと引ぬき候」と姉・乙女への手紙に綴っています。ゲームでもそうですが、刺さっていると無性に抜きたくなりますよね(笑)。
神秘の三角形
『ゲーム&ウオッチ』の内箱には「トライフォース」が輝く。
シリーズ2作目『リンクの冒険』のCMを真似して、手に三角形を3つ組み合わせた「ハイラルの紋章(トライフォース)」を書いていたファミっ子も当時いました(笑)。
もともと三角形は、キリスト教で三位一体の象徴として古来から用いられてきました。また、三角形の内部に目を加えた「プロヴィデンス(摂理)の目」は、宇宙の建築者である神がすべてを見通しているという意味の図像。中世以降の宗教美術でしばしば用いられ、米ドル紙幣にもあしらわれています。世界最大級の秘密結社・フリーメーソンのシンボルとして、見たことがある人も多いでしょう。
ちなみに日本の家紋のひとつで、北条家が用いていたことで有名な「三つ鱗」は形がトライフォースにそっくり。こちらは鎌倉幕府の初代執権・北条時政が子孫繁栄を願うため江ノ島の洞窟に参籠したところ、夜に弁財天が現れて願いを叶えると約束し、大蛇となり海に消え、あとに三枚の鱗が残された伝説に由来しています。鎌倉のおみやげには三つ鱗が描かれているものもあり、『ゼルダ』ファンだとテンションが上がりますね(笑)。
妖精
『ゼルダの伝説』シリーズで主人公を助けてくれる心強い存在が妖精。私も瓶詰めの妖精をたくさん作った記憶があります。
「fairy(妖精)」の語源はラテン語の「fata(運命・宿命)」。妖精は人間の運命を左右し、誕生に立ち会う存在(運命の女神)がルーツにあることがわかります。また、自然の擬人化や土地の精霊、力を失った古代の神々と見なされることもあります。
妖精に関連したスキャンダラスな出来事といえば、「コティングリー妖精事件」。1917年、イギリス・ヨークシャー州のコティングリー村で少女たちが撮影したとされる妖精写真の真偽を巡って、論争が巻き起こりました。『シャーロック・ホームズ』の作者コナン・ドイルは擁護派に回り、『妖精の出現』という著作も出版したものの、60年以上あとに少女のひとりが写真の偽造を告白しています。
まんまとだまされてしまったコナン・ドイル……と思いきや、5枚の写真のうち1枚は偽造ではないとも証言しており、現実に妖精がいるか、いないかはまだはっきりとはしていません。
参考文献
●トマス・マロリー『アーサー王の死』(ちくま文庫)
●マドンナ・ゴーディング『シンボルの謎バイブル』(ガイアブックス)
●井村君江『妖精学入門』(講談社現代新書)
●A・コナン・ドイル『妖精の出現 コティングリー妖精事件』(あんず堂)
© Nintendo
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