メンタリストの悪魔祓い事件簿/ロミオ・ロドリゲスjr.
アジア最強のメンタリスト、ロミオ・ロドリゲスjr.。彼はほんの数年前まで、神も悪魔も信じてはいなかった。
ところが、友人の妻が突如として悪魔に取り憑かれ、思いがけないなりゆきでそれを祓ってからというもの、運命が音を立てて変化していった。行った悪魔祓いは、これまで56件。そのなかで彼は、何を見て、何を感じたのか。
文=ロミオ・ロドリゲスjr.
悪魔と対峙するメンタリスト
「イエス・キリストの名前により命令する。この体の中に入っている悪しきものよ、今すぐに出ていけ!」
依頼を受けて名古屋の某所へ出向いた私は、いつものように悪魔祓いをはじめた。その場には、悪魔に憑依された女性、悪魔祓いの依頼者、そして私とアシスタントがいた。
いつもなら、こうして10分ほど祈りつづけると、憑依された者は苦しみだし、唸り声を発しはじめるのだが、この日は違っていた。
「悪しきものよ、姿を現せ!」
くり返し言葉を投げかけても、目の前の女性は苦しむどころか微動だにしない。まるで息をしていないかのように、じっとしている。
いや、そうではない。よく見ると、女性の喉が信じられないくらいの速さで震えているのがわかった。はじめて見るケースだ。体をこわばらせ、喉だけを高速で震わせるその様子からは、悪魔祓いをかたくなに拒み、私の言葉をいっさい無視するという意志が感じられた。
しばらく膠着状態がつづいた。どう対処したものかと悩んでいると、家の2階から人の気配がした。明らかに人が動いている。
「今、2階にだれかいますか?」
依頼者に尋ねた。
「いいえ、この家には私たちしかいません」
困惑ぎみの答えが帰ってきた。
しかし、依頼者もアシスタントも、2階にだれかがいることをはっきりと感じていた。
パチッ、パチッと、頭上からラップ音が聞こえてくる。その奇妙な音は、私たちをあざ笑うかのように、2階のあちこちを移動していた。
この日、悪魔は私たちの前に姿を現さず、悪魔祓いは失敗に終わった。女性には念のため洗礼を授けたが、その儀式の最中も無反応のままだった。
約3年半の間に56件の悪魔祓いを行う
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