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秩序か混沌か? 悪魔と契約する終末的RPG『真・女神転生V』/卯月鮎・ゲームー案内

書評家・ゲームコラムニストの卯月鮎がオカルト、超常現象、不思議が詰まった話題のゲームをムー的に紹介。このゲーム、ほかとはひと味違う!

文=卯月鮎 #ゲームー

『真・女神転生V』

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神と悪魔の対立を語り続けるRPG

 11月11日に、シリーズ久々となるナンバリング新作『真・女神転生V』が発売されます。ロウ(秩序)とカオス(混沌)、神と悪魔が対立するダークな世界観、敵の悪魔を仲間にし、合体して強化する背徳的なシステムが熱狂的に支持されているシリーズです。

 今回の『V』は、主人公の高校生が品川駅付近のトンネルで事故に遭い、気付くと砂漠と化した異世界の東京にいたところから始まります。謎の男と合一し、悪魔を倒す禁忌の存在〈ナホビノ〉となってしまった主人公の運命は……。『V』も重厚かつ濃厚な物語に浸れそうです。

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主人公は下校中の事故をきっかけに、神と悪魔の戦いに身を投じる。

 では、いつものように『真・女神転生』シリーズから連想されるムー的キーワード3つを挙げていきましょう。

転生

 シリーズタイトル『真・女神転生』とは、ルーツとなったファミコンソフト『女神転生』のヒロインが日本神話の女神イザナミの転生だったことに端を発します。

 この「転生」という用語は「輪廻転生」として仏教用語でお馴染みですが、古代ギリシアでも哲学者のプラトンが転生について説いています。主著のひとつである『パイドロス』のなかで、魂は不死であること、死後は生前の行いに従って地下世界か天上世界でふさわしい暮らしを送り、「千年目の年に、このどちらの魂も、第二回目の生をくじ引きで選ぶためにやってきて、それぞれが欲するような生を選ぶ。人間の魂が動物の生の中に入るのも、(略)動物からふたたび人間に帰るということも、この場合に起こるのである」と書かれています。

 くじ引きでは順番が与えられ、早い順番を引き当てた者から希望が通ります。生前受けた災難を忌み嫌って、英雄だった人物が人間を選ばず鷲になることも……。ただ、こうした転生の概念はキリスト教によって異端視されていきます。

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謎の男〈アオガミ〉の手を取ったことで禁忌の存在〈ナホビノ〉へと変貌した主人公。

東京タワー

『真・女神転生V』では、異世界と化した東京を探索することになります。砂漠のなかで一際目立つのが東京タワー。そこはかつて天使と悪魔が遭遇した場所とされます。

 現実の東京タワーは、徳川家の菩提寺であり、江戸城の裏鬼門(南西)を守る増上寺の墓地の敷地に建設されました。増上寺を二代将軍・徳川秀忠の墓所とし、徳川家の菩提寺にしたのが大僧正・天海。天海は江戸に目青不動尊、目黄不動尊、目赤不動尊、目白不動尊、目黒不動尊と、五色の不動尊を配置し、陰陽五行説に基づき五芒星の形で江戸城を守護した人物としても知られています。

 もうひとつの東京の象徴的タワー、東京スカイツリーは江戸城の鬼門(北東)に位置します。歴史的な建造物が何らかの意図により一直線に結ばれる「レイライン」というイギリスで生まれた概念があり、日本で言うと、鹿島神宮、皇居、明治神宮、富士山、伊勢神宮……など重要な拠点が直線上に並んでいます。このラインに東京スカイツリーも乗っています。タワーはエネルギーが集まる強力なスポット。東京は見えない力で守られているといえそうです。

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ゲーム内の異世界でも一際目立つ東京タワー。

砂漠

 砂漠と化し、悪魔が徘徊する異世界〈ダアト〉が、今回『真・女神転生V』の舞台です。

 砂漠にまつわるオカルトとして思い浮かぶのが、古代インダス文明を代表するパキスタンの遺跡「モヘンジョ・ダロ」。モヘンジョ・ダロは紀元前2500年から紀元前1800年頃にかけて繁栄したとされる都市。その名前は現地の言葉で「死の丘」を意味し、長い間近づいてはならない場所とされていたそうです。
 1922年、砂漠を掘ることで発見された都市は、碁盤のような整然とした形で、上下水施設も完備しており、高度な文明が栄えていたことが判明しました。しかし、これだけ栄えていた都市がなぜ突然滅びたのか? 住民の遺骨は墓地ではなく路上など不可解な場所に散乱し、高熱を浴びた痕跡や放射能が検出された遺骨もあったことから古代核戦争説がささやかれています。

 古代インドの叙事詩『マハーバーラタ』にも、「矢の密集した雨が空から発せられた。……厚い暗闇が周囲を包んだ。……焦げた天地が熱を帯びている。水が非常に熱くなり……戦士が猛烈な火事で燃え尽きた木々のように倒れていく」(英語版より筆者訳)という炎の矢「アグネーヤ」の記述があり、核兵器とまではいかなくても古代にミサイルのような超兵器があったのではないかと十分に空想できる内容となっています。

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砂漠の異世界〈ダアト〉には悪魔が跋扈し、主人公と仲魔(仲間の悪魔)の前に立ちはだかる。


参考文献
プラトン『国家(下)』(岩波文庫)
プラトン『パイドロス』(岩波文庫)


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