Building Physics - Bauphysik
Image: Baunetzwissen より
ドイツでは中規模以上のプロジェクトであれば、設備設計者(Haustechnik)の他にBauphysiker(バウフィジカー)と言う専門家が基本設計の段階から携わることがほとんどです。英語だとBuilding Physicsですが、アメリカでの経験から言うと、ヨーロッパほど設計のコアメンバーでとらえられている職種ではない気がします。建築の規模が大きくなるほど、気候が厳しい地域で計画するほど、重要な領域です。
彼らが何をするかと言うと、建物の温度変化、断熱材の効率計算、遮音性の計算、床と壁の厚みやガラスの性能の基準を設ける、など建物の物理的効率性を考察してくれるエンジニアです。建物の使い手がいかに心地よく住める(働ける)かを考慮するという役割があります。
日本で言うと環境エンジニアと設備エンジニアの間の役割になると思います。ヨーロッパでは、大規模なプロジェクトだと、コンセプト的な環境シミュレーションをするエンジニアと、断熱や遮音を計算をするバウフィジカーは並走で雇われる、ということも多いです。
ドイツは冬寒いわりに家の中は温かいというのは、その土地にあった断熱、暖房及び換気法を選ぶ専門職が確立しているから、という背景があるのでしょう。ドイツでは環境問題の観点から建物に冷房器具を取り付けることを極力避けるので、温度変化のシミュレーションなどは設計の早い段階で考慮されることが多いです。もちろん最終的な壁や床の厚みなどは構造エンジニアのデータとともに考察されますし、設備の設計とも密にかかわってくるトピックなので、それぞれのエンジニアが情報を共有しながらデザインを進めることは必須です。
エンジニアの性格によっては疑問点が出た時点で自分たちで連絡を取り合ってくれる人もいますが、最終的にそれぞれのデータを照らし合わせて問題点を洗い出すのは建築家の仕事です。日本に比べてドイツは自分の責任以外の余計な仕事は一切したくないという人が多いので、建築家がせっついてコーディネーションを促さないといけないという点はあるかと思います。
建築教育の中でも、この点に関するクラスなどが設けられます。私が知っている学校ではDämmwerkなどのソフトを使って、断熱と壁の性能が室内温熱環境にどう影響するのを理解する、という教育が行われていました。
日本の在来木造建築などは寒冷地に設定した場合、あらゆる面で悪いシミュレーション結果になるでしょうね。意匠的な問題とは別の観点ですので。。
https://www.bauphysik-software.de/de-de/
さっと見つけたBauphysikの定義です:
ドイツ語
英語 - Arup といえば構造エンジニアとして有名ですが、Building Physicsのコンサルタントにも力を入れているようです。