初めてのインターネット
初めてのネットに触れたのは、20年ほど前。ドコモのPDA「エクシーレ」という端末だ。
パソコン自体には学生時代から興味があり、記憶がある最初の端末は学生寮で使っていたPC9801VXとかだったと思う。ペラペラの5インチディスクと3.5インチフロッピーが混在していた頃で、画面はDOSの黒画面。
ネットと現実の境界線をなくすような世界を作るなんてうたうサイトが出てきたり、まだパソコン通信とか言われてた頃。
パソコン持ってなかった自分は、25歳まで通話用携帯も持ってなかった。持っていたのは、通信専用で契約していたphsのみ。パケット端末のエクシーレとブラウザボードを使い初めて見たインターネットの世界はモノクロだったけど、最高にワクワクした。その頃夢中になったのは、摂食障害の当事者たちが集うbbsと、ドコモのインターネットサービス『モペラ』の中にある“どこでも広場”という掲示板だった。モペラの中の“モバイルコンピューティング実践ノウハウの部屋”の部屋では、自分が当時誰にも言えないでいた摂食障害のこと、家族に暴力を受けていることを話すことができた場所だった。
今みたいに1億総発信者みたいな世界じゃなくて、ROM専の人がはるかに多かった時代だと思う。友人よりも顔の見えない仲間たちの方が近くに感じて、当時はよく書き込みをしてた。モペラのサービスが終了して、有志で立ち上げたひろば21もなくなり、エクシーレユーザーのサイトもなくなり、10年ほどたった頃、mixiで当時のエクシーレの記事を書いたら、懐かしいハンドルネームの人に再会したりした。当時高校生だったその子は、小学生のこどもを持つお母さんになってて、時代の流れをかんじたものだった。
わたしの使用端末は、エクシーレ、ブラウザボード、シグマリオン、エッギイとドコモの思う壺のユーザーであったけど、その間に初のノートパソコンThinkPadを購入したり、携帯でサイトを見るようになったり、見よう見まねでサイト作ったり、パケ死しないような携帯用のサイトの作り方を覚えたり、わたしの居住エリアでは初めての光通信を引いたり、侍魂で先行者を見たり、フラッシュアニメのキーノという作品を見たり、絶望の世界に何とも言えない気持ちになったり、ネカマ大作戦にはまったり、リアルタイムで電車男を見て感動したりしていた。
昔はネットというと、どこか薄暗くて、アングラ感あふれる世界で、その中で何かを発信している人たちはみんな一味違ってて面白い人だった。今が面白くないってわけじゃないけど、あの頃みたいな、薄明かりの中で集うみたいな感じはしない。ある場所にはあるんだろうけど。今のネットの世界は、わたしにはどうにも明るすぎてちょっとまぶしい。
ただ、便利だな、と思うのは、自分でも忘れていた過去の記録がネットに残ってたりすること。この間、ふと思い出して、昔の日記が見たくなったから昔のIDで検索してみた。さすがに15年もアクセスしてなかったら消されてるよね、と思いながら。そしたら、18年ほど前に作ったやつが掲示板ごと残ってて、ちょっと感動した。
初めてのインターネットは、もうひとつの世界へのとびらを開くきっかけであり、自分の扉の中を初めて誰かに見せることができた場所だった。今では当たり前なのかもしれないけど、誰にも話せないことをたくさん抱えて破裂しそうになっていたわたしにとっては、今に繋がる道を作ってくれた特別な場所だったと思う。